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しばらくユンのことしか考えられない

シネマート心斎橋にて開催中のカン・ドンウォン特集上映に行ってきた。

私は別にカン氏の激烈なファンというわけでもないしそもそも韓国映画についてはまだまだズブの素人である。


しかしカン氏。2018年公開の『1987、ある闘いの真実』で初めて見て、エッなんか一人すごいかっこいい人おるやんと思ったその人がカン氏だった。

(この予告編にはカン氏出てないですが、これは韓国公開当時もカン氏が出演していることは公開まで伏せられていたからだと思います)


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それからカン・ドンウォンとは何者なのだろう…と調べてみると、あの映画では20歳の学生運動家の役で出演していたのにご本人の御年37歳という事実に韓国の時空!!!!!!!!!!と頭を抱えてしまった。美で時空を超越してくる男カン・ドンウォン。人気なのも頷ける。みんながかっこいいと言うのも頷ける。


と、いう旨のツイートをしたところ韓国映画と俳優に詳しい学生時代の後輩の女の子から「カン・ドンウォンだったら『群盗』見てください!」とテンション高めのリプライをもらい、なるほど『群盗』なる映画、それもカン氏がおそらく激ヤバの映画があるらしいといそいそ近所のTSUTAYAに出向いたが韓国映画はなにぶんレパートリーが少なく発見することはできず、しゅんとして帰った。近所のTSUTAYAはその後閉店した。


それから2年と半年。
私はついに『群盗』を観るチャンスを手に入れた。シネマート心斎橋のカン・ドンウォン特集上映である。
上映は土曜12時の回の一度きり。これを逃すともう後がない。

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いざ行かん、群盗。奇しくもこれが2021年初映画館だった。



===========以下ネタバレしかない=========

劇場を後にして一夜明け、私は未だにユンのことしか考えられない。


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父親は官吏、生まれは色街。(ここで「7歳まで白粉の香りの中で育った彼は」的なナレーションが入るんですがもうここからしてこの後のヤバさの気配というかこの煽り方すごい)跡取りとして引き取られても彼は所詮は庶子であり、やがて正妻が気合と執念で男の子を産んでしまったばかりに世継ぎ争いから蹴り落とされ誰からも顧みられなくなり少年時代にして寂しさと劣等感が沸点を超えて狂気発動。腹違いの弟を殺しかけるも正妻に見つかり、ここで正妻の正妻たる懐の深さアピールのために自分ではなく実母が殺され自分は納屋(?)に長く隔離されるといういや大人に利用されまくってんな〜〜〜ユン〜〜〜〜!!!!かくして成長した彼は武芸の達人となり、弟が殺され(この弟の死も後に自分がやり合うことになる盗賊たちの所業によるものだと思うと因果〜〜〜)家族の中での男は父と彼しかいなくなったことで、今度こそガチで世継ぎの座を取りに行くユンの物語が始まる。

いやユンの物語じゃないんですけど。



登場がやばい。弟の葬式のために全身白の衣装で(よく知らないんですがこの時代の朝鮮の喪服って白なんですね)いきなりバンとアップで顔を捉えるショットいやまじ肌白すぎんか????服と同じ色してないか????透明感凄まじいというかもはや透明では??もうこの瞬間に「ああ…ユンとは人間ではなく美のイデアとしての役なんだな…」と霊感が降りる。美という概念がこの映画の間だけ人の形をして歩いている。霊感が降りてしまってはもうそうとしか考えられなくなる。

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家を焼き討ちにされて復讐のために単身乗り込んできたトルムチ(ハ・ジョンウ氏)を扇子一本でぶちのめし踏みつけながら見下げた目で扇子バッサ広げて優雅に仰ぐシーン吹き出しそうになった漫画かよこいつ。
『群盗』わかりやすい韓国版西部劇みたいな話でノリとしてはヒース・レジャー主演の『ロック・ユー!』にもちょっと似てるなと思ったんですが改めて考えてみると西部劇とか『ロック・ユー!』とか以前に「漫画の実写化」て表すのが一番ピンと来ますねこの映画は。いやだってユン、そのキャラ漫画にしかおらんて。


それから他の人がかけたら大事故起こしそうなメガネをかけても美しいユン笑っちゃう。まじ美は何をしても美。でもやっぱりメガネしてない方がかっこいい(その御尊顔には何の装飾もいらなくってよ)

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夜霧の中での戦いで髪が解けてばさっと長い髪が下りる瞬間に私の息は止まった。えっ…ちょっと…これは…見てはいけないものを…触れてはいけない美の真髄を…見たような気がした…ああ…そのうち私は美に祟られるかもしれない見てはいけないものを見てしまった!!!人間の分際で!!!!あああ!!!

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でもここで「独身者のくせに髷を結うのか」とユンが盗賊のお頭に笑われているんですが確かに弟には妻がいたけどユンはずっと独身で、あんまり結婚とかに興味なかったのかな〜というよりも、娶らせてもらえなかったんだろうなあ感が強い…それでも一人前だと見られたくて自分こそ世継ぎだと思いたくて宮中では髷を結っていたんだろうなと思うとユン!!!!!!!!!(頭を抱える)でもユンはきっと妻を迎えたところで満たされることはなかっただろうなあユンは誰より父親に認められたかったのだもの……武芸を極めたのも(他にやることがなかっただけかもしれんけど)悪徳の限りを尽くしてでも家を繁栄させようとするのも全部お父さんに認めて欲しかったからじゃん……ハーーー完璧な美を備えていてもアダルトチルドレン化からは逃げられない辛さ。違った、ユンは美そのものだからアダルトチルドレンとかそういう人間の定義はいらんのやったわ。

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「お前は鬼だ、ケダモノだ」
「この生涯、私はそのケダモノ以下の扱いを受けてここまで来ました。鬼にもなります」

「なぜ殺さなかったのです」
「なぜ生ませたのです」
「父上にとって、私は一体何だったんですか?」

盗賊の村から連れ帰った弟の子も結局父に取られ、また父の愛情はそっちへ行ってしまいまた彼は邪魔者扱い、今度はついに鬼認定までされてしまいいや…確かに鬼の所業連発させてるけど…とは思うもののここで初めてユンが父親に感情むき出しの涙に濡れた目を見せるのだから(それがまた美しいのだから)そうだよユンはただ愛されたかっただけなんじゃんか!!!!!!とユンの暴虐の数々は一瞬で頭から吹き飛んでしまう。ユンは!!!!!ずっと一人で!!!!寂しくて!!!!悲しかったんですよお父さん!!!!!!!ユンのこの顔みてくださいよ!!!!!!!!お父さん!!!!!!!!(結局顔のことしか考えられない)


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んでそこからのトチ(トルムチ)との最後の勝負に向かっていくユンはひたすらに超絶に悲しい。父を殺め、部屋の隅で呆然としているところに這い寄ってくる弟の子を抱き上げて、その子を手にかけることもせず、片腕に抱いたままトチの前に現れるユン、超絶に切なくて悲しい。あの子を連れて行ったのは、あのまま宮中に置いておいたら誰かに殺されてしまうかも、いなくなってしまうかもしれないことを恐れたからで、ということはユンにとってはあの子は排除すべき邪魔者でもありでも居なくなってしまうとすごく悲しい存在という両面を持ってて、きっと自分と一緒にいるのがこの子にとっても一番安全なんだという判断で片腕を封じてでも戦いに向かうユン、自分にとって邪魔者のこの子を「生かす」ことに決めたユン、ユン〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!(号泣)
だから実際ユンが両腕自由に使えて戦ってたら多分トチは負けてたと思うんですよね。あいつなんぞ片腕で十分だわという慢心で戦いに出たとはあんまり考えられなくて、愛して欲しかった父をこの手で殺めてしまった彼にはもう何も残ってなくて、多少なりとも「もう終わりにさせてほしい」気持ちが…あったんじゃないかと思うと…ユン〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!(号泣)
そして竹林での殺陣、まーーーーーじでかっこいいし美しい。竹というのがいい。花吹雪まで舞ってるしな。ここは涅槃か?


ユンの最期については観終えた直後はすごい不満だったんですが(おまっ、邪魔すんじゃねえよ平民の分際で!!!!!叫ぶかと思った)落ち着いて考えてみるとユンはああいう強制終了がかからない限りどんなに深手を負っても戦い続けただろうし片手でもトチに勝ってた可能性もあるし、それに子供を抱いて戦ってることに気づいたトチがユンとの戦いを放棄することも考えられるわけで、「もう終わりにさせてほしい」ユンの人生が続いてしまってユンがまだこれからも、ボロボロになりながらも地獄の道を歩いて行かなきゃならないことになってたかもしれんのだ…と思うと、まあ良しとしてやろう(上から目線)
トチが最後にユンの髷を切らなかったのも、自分だってこいつに家を焼き討ちにされて家族殺されてるのに、その上で「俺はお前を(一人前だと)認めているよ」というメッセージなんだとしたら、トチ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!(※全て妄想です)


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もう最初から最後までユンしか見えなかったのでユンのことしか書けないしもうしばらくユンのことしか考えられない。これは絶対ユンの漫画が必要。もう誰かユンの漫画描いて。ユンの心が鬼へと至るまでの愛憎と哀しみの100p超えくらいのの長編マンガ誰か描いて。ユンが日々の何気ない出来事にちょっと幸せを感じて笑ってるような漫画描いて。もうユンが食べて寝てるだけの漫画でいいから誰かユンの漫画描いて。

『群盗』、私が今まで見てきた韓国映画が割に重ための作品ばかりだったのでこれもヘビーで暗めな映画かと思ってたんですが全然そんなことはなくまさにエンターテイメントな活劇映画でした(漫画の実写化でした)
私はユンしか見てませんでしたが西部劇テイストが好きな人や派手なドンパチ見るのが好きな人、スカッとしたい人、難しい話は嫌いな人にも良い映画だと思います。

その上で私の願いはただ一つ、誰かユンの漫画を!!描いてくださ〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!!!!






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