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人類の賢さを発揮できるか

今度は「オミクロン株」か・・・。

WHO(世界保健機関)が26日、南アフリカで確認された変異ウイルス(オミクロン株)を「懸念される変異株」に指定したことを受けて、アフリカ南部からの渡航を制限する動きが世界的に広がっています。

日本の厚生労働省も27日に成田や羽田といった国際線の発着する主要空港で南アフリカなどに滞在歴がある人の到着が事前に分かった場合、空港での移動ルートを分けて他の乗客らとの接触を避ける対応を始めました。

「けっこう危ないな」と私が思ったのは香港で2人の感染が確認されたケースです。今月11日に南アフリカから到着したあとホテルで隔離中の男性と、その向かい側の部屋で隔離中のカナダから到着した男性の感染が分かりました。2人はいずれも2回のワクチン接種を終えていたということで、カナダからの男性は食事の受け渡しのため部屋のドアを開けた際に感染した可能性が高いとみられています。既に2回ワクチンを接種しているにも関わらず、わずかな接触で感染してしまうとは厄介です。

オミクロン株による世界経済への影響に警戒感が強まり、26日のニューヨーク株式市場でダウ平均株価が1000ドルを超える急落となったほか、最近は上がる一方だった国際的な原油の先物価格が大幅に下落したりしています。

こうした事態に至った原因として、アフリカでのワクチン供給不足が挙げられています。WHOによるとアフリカでのワクチンの接種率は先月下旬の段階でおよそ6%。途上国でワクチンの接種が遅れるとリスクが世界に広がってしまうことを今回の事態は改めて教えてくれました。

日本ではこのところ落ち着きが見られるものの、先進国ではワクチン普及の後に「緩み」があるのか、感染の再拡大が起こり「3回目接種」が急がれている。結局、カネのある国に集中するという「ワクチン格差」を解決できるのか。「世界的な不公平」という非常に難しい課題が改めて突きつけられています。

「オミクロン株」が確認された南アフリカのことを考えているうちに、同国出身のピアニストの作品を取り出していました。ダラー・ブランドの「アフリカン・ピアノ」です。

ダラー・ブランド(1934ー)はケープタウンの生まれ。祖母が地元のメソジスト教会でピアニストを務め、母が合唱団を率いていたそうです。そのためアフリカの楽曲だけでなく讃美歌やゴスペルなどに幼少のころから触れていました。

7歳の頃からピアノのレッスンを始め、クラシックやジャズに触れながら15歳でプロデビュー。1960年には南アフリカの黒人ミュージシャンによる初のLPレコードを制作しています。その後、アパルトヘイトがあった祖国と距離を置き、ヨーロッパで活動します。

やがてNYに拠点を置いた後、祖国とアメリカを行き来するようになるのですが、「アフリカン・ピアノ」が録音された当時はいったん祖国に軸足を置いていた時期だと思われます。ちょうどこの頃、ブランドはイスラム教に改宗し「アブドゥーラ・イブラヒム」と改名しており精神面でも調和を求めていました。

「アフリカン・ピアノ」は大地を思わせるスケールと原始的なパワーを感じさせる作品で、彼が過ごしてきた国の歴史や風土、それに宗教観が影響を与えているようです。

1969年10月22日、コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルでのライブ録音。ライブとは思えないほどの完成度です。一応、8曲に分かれていますが続いて演奏されているので一通りまとめて聴くのがライブ感を味わう上でも正しいと思います。

Dollar Brand(p)

①bra joe from kilimanjaro
このアルバム全体を象徴する雄大さを持った曲。左手から繰り出されるゆったりとしたビートに乗って右手から少しづつテーマが放たれます。この右手の音に何とも言えない力強さと「土の香り」があります。ゴスペル的でもあるし、ブルースに近いところもあるが、スケール感が大きい独特の響き。やがてソロに入りますが、ここから右手が奔放さを増していきます。時にフリー的な要素も交えながら音の奔流が襲ってくるのですが無秩序の混乱はなく、「生命力の強さから音があふれ出てくるのが止まらない」といった印象です。11分に及ぶ長い演奏ですが、「生きている音」に身を浸していると時間があっという間に過ぎてしまいます。これは「ダラー・ブランドの音楽」としか言いようがない演奏だと思います。

⑤kippy
ダラー・ブランド独特の抒情性を感じる演奏です。力強いバラッドで、ここでも聴きものは「音」。スローなナンバーなのに少しもタッチが弱まることなく「黒い」音が迫ってきます。美しいテーマの後にソロに入ると右手によるダイナミズムが凄まじく、いったん収まったかと思うと、ものすごい落差で「圧のある」音が迫ってくる展開が圧巻。油断がならないが、全体的には美しい不思議な演奏です。

南アフリカが生んだ生命力溢れる音楽を聴くと、新型株でも何か我々ができることはないのかと思ってしまいます。

先ほどニュースをネットで見ていたら、アメリカのバイデン大統領が「世界規模でワクチン接種を進めない限り、感染拡大を収束させることはできないことが明確になった」として各国に対し途上国へのワクチン提供を加速するように呼び掛けたそうです。これがどれだけの成果をもたらすのかは分かりませんが、「アメリカ第一主義」が叫ばれていた、ついこの間までと比べると「真っ当さ」に安心します。でも、バイデンは人気がないんですよね・・・。

人類は共同で危機を乗り越えられるほどの賢さを持っているのか。パンデミックは警鐘を鳴らし続けています。

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