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追悼モンキー・パンチさん。ルパン三世と北海道の深い関係

「ルパン三世」で知られる漫画家のモンキー・パンチさんが今月11日に
81歳で亡くなりました。謹んでご冥福をお祈りします。

今回、モンキー・パンチさんのことを書こうと思ったのは、子どもの頃から「ルパン三世」のアニメにお世話になってきたからですが、それだけではありません。かつて住んでいた北海道東部の釧路からさらに東にある町、浜中町がパンチさんの出身地だからです。

5年前まで釧路に住んでいた私は、何回かこの酪農の町を訪ねました。非常に長い海岸線と広大な湿原がある町で、「日本離れ」したスケールがありました。ちょっとロシア的というか・・・・

地元の定時制高校を卒業するまで浜中町にいたパンチさん。町では「ルパン三世」による町おこしに取り組んでいて、毎年、イベントが開かれているほどです。

ふるさとへの思いが強く、「ルパン三世」で描かれた風景には、地元の様子を参考にしたものがあるとご本人も語っています。外国のコミックに影響を受けた作風と素朴な北海道の町とはイメージがうまく結びつきませんが、
浜中町が生んだ異才であることは間違いないでしょう。

「ルパン三世」の漫画連載は昭和42年、その4年後にはテレビアニメが放送されています。それから半世紀近く、人気を保ち続けている「ルパン三世」はジャズにも大きな成果をもたらしました。

アニメで音楽を担当した大野雄二さん(p)による一連の作品です。アニメファンでなくても「ルパン三世のテーマ」を耳にしている日本人はかなりの割合にのぼるでしょう。

ジャズ・ピアニストである大野さんが作り上げたおしゃれな曲の数々。CMソングの作曲で培った経験も生かし、「ルパン」に登場する「無国籍キャラクター」にピタリとはまった作品世界となっています。

今回は大野さんが発表し続けている「ルパン・ザ・サード・ジャズ」シリーズからの1枚。「クール・フォー・ジョイ」を取り上げましょう。この作品ではピアノ・トリオに加えホーンがゲストで参加、後の「ルパンティック・ファイブ」につながる演奏となっています。

2004年12月~2005年1月、サウンド・インで録音。

大野雄二(p) 俵山昌之(b) 村田憲一郎(ds) 梶原順(g)
大井貴司(vib) 山口真文(ts) 岡崎好朗(tp) 中川昌三(fl)仙道さおり(per) 鈴木浩之(syn)

③Cool For Joy アルバムの表題曲で、大野雄二さんのオリジナル。ピアノ・トリオとパーカッションをバックにテナーとトランペットが加わるハード・バップ・スタイルの編成です。冒頭からリズムがラテン調なので熱くなってもおかしくないのですが、演奏はタイトル通り非常にクール。ルパンのアニメで挿入されそうな都会的な一曲です。
2つのホーンが共にメロディを奏で、穏やかに哀感を漂わせます。これを受けた大野さんのピアノ・ソロは淡々とスイング。そこに2ホーンが絡んでアクセントをつけていきます。こうしたアレンジの妙が大野さんの真骨頂でしょう。続いて岡崎さんのクリアなトランペット・ソロ。次はやや柔らかいトーンの山口さんのテナー・ソロです。ちょっとハンク・モブレーにも似ていますね。ホーン陣とドラムの小節交換の後、再びメロディへ。穏やかで渋いトーンは一切崩さない、グループのコンセプトが明確に出た一曲です。

⑨Theme From Lupin Ⅲ おなじみの「ルパン三世のテーマ」ですが、何と、これは3拍子のワルツ・バージョン。やはりアレンジが非常に優れていて、エレクトリック・ピアノ、ミュートを使ったトランペット、バイブラフォンで奏でられるメロディが落ち着いていて非常に渋いです。アニメでの突き刺さるようなホーン・アレンジとは全くの別物で、さすがだなあと唸ってしまいます。メロディからバックのドラムスはブラシで通し、エレクトリック・ピアノ~バイブラフォン~トランペットのソロは暗闇を進むような静けさがあります。再びメロディに戻り、フェードアウトでひっそりと終わっていくのもなかなかお洒落。ふだんはフェード・アウトが好きになれない私ですが、このアレンジなら終わりをじっくり楽しめて許せます。

この他にピアノとホーンの役割分担が見事で小粋な仕上がりになっている⑦Feary Night もよい出来です。

「ルパン三世」にちなんだ浜中町の催しはことしも開催される方向だそうです。これは生前、モンキー・パンチさんが「自分が亡くなったあとは喪に服して活動を自粛することは控えてほしい」という意向を伝えていたからだということです。

「ルパン三世」の生みの親であるパンチさんらしい、カラッとした思いやり。その遺志が尊重されて、今後も浜中町がルパンで盛り上がることを願っています。

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