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黎明の01フロンティア №00-09 中編

№00-09 前編 より続く

――――――――――

\中編開始
\黎明の01フロンティア


「――クソッ! こいつもしかして……鍛冶屋黎明ッ!?」
木暮は監視カメラの映像越しに、その光景を見た。
「クソックソックソッマズイぞ……誰か、誰かヤツを止めろッ!」
脊椎ユニットにケーブル接続。
ノートPCの画面上で、黎明の身体が前のめりに倒れた。
[UNKNOWN: エッ 何だ コイツ!? 自分の 身体に ケーブルをッ!?]
「うっせぇル・シッフル! 言われなくても解ってるぜ!」
木暮は小型拳銃を握り締め、もう片方の手でテーブルを叩く!
BUZZ!
[ALERT: 掌握中の ローカルエリアに 電子介入を 確認!]
「どうする……どうする、今直ぐ止めなきゃマズイ!」
[COPING: 1年A組の ローカルエリア! 物凄い 勢いで 電子攻撃!]
「クソックソックソッ! プログラムのタイプは何だ!」
BUZZ!
[ANALYSE: 極めて 危険! 米軍 電子戦 部隊の プログラムに 類似ッス!]
「何だって!? 軍用だと、一体どこからそんな物を!?」
木暮は仰け反って天を仰ぎ、素っ頓狂な声で叫んだ。
[DANGER: 対応速度 追随不能! ローカルエリア 掌握 されるッス!」
「あのガキ、一体何なんだッ!?」
BUZZ!
[RECOMMEND: 攻撃を 一時停止して エリア 奪還に 全リソースを――]
「攻略部隊を反転させるだと! 馬鹿言うんじゃねえ、攻撃継続!」
[CONDEMN: アニキ! うだうだ 言ってる 場合ッスか!]
――ドンッ!
木暮は拳でテーブルを叩きつける!
「つべこべ言うな! お前の支援で何とか持ちこたえさせろ!」

BUZZ! BUZZ! BUZZ!

[CAUTION: アッ アッ アッ …… アニキ ヤバいッス! 激ヤバッス!]
「うるせぇ馬鹿! 今度は何だ!」
画面上に描かれた仮想ネットワークに、劇的な変化。
掌握済みの緑アイコンが、次々と赤アイコンに塗り替えられていく。
[STATUS: 掌握された PC群が …… 未掌握の PCに 電子攻撃!]
黎明は乗っ取ったPCを、すぐさま自陣の駒として遠隔操作!
ゾンビ映画のパンデミックめいて、瞬く間に電子攻撃が拡散する!
一ノ宮第三高校のネットワーク上で、西南戦争めいた陣取り合戦だ!
「クッソー! いきなり教卓のデスクに直結した理由はそれか!」
木暮は事ここに至り、黎明の『戦略』を理解した!
木暮のハッキングは、教師権限の強制リモートを利用した砂上の楼閣!
教卓の端末を制圧されると、成す術無く崩壊する!
BUZZ!
[STATEMENT: アニキ! 今直ぐ 本部に 電子介入の 協力要請を――]
「協力だぁ? 舐めてんのか! 寝言言ってんじゃねえ!」
――ガンッ!
木暮は応接テーブルを蹴り、決断的に立ち上がる!
[CONDEMN: アニキィ! 意地 張ってる 場合じゃ――]
「あンのクソガキがぁッ! 俺が直接片付けてやる!」
血走った眼を殺人的に見開き、右手の拳銃を握り締めた!

BUZZ! BUZZ! BUZZ!

[CONDEMN: ちょッ アニキ! 話 聞いてンすか!]
木暮はノートPCに屈み込み、数回のタイプとクリック操作!
BEEEEEEEEP!
[EXPLODE: デトネイター 展開! 信管作動 …… 爆破実行!]

KABOOM! KABOOM! KABOOOOOOOOM!!!!!

校舎内の各所で、プラスチック爆弾が爆轟!
「ムガ―――――ッ!?」
校長室の片隅で拘束された武蔵野校長が、痙攣して再失禁!
ガラガラガラッターン!
木暮は発破の轟音と振動を背に、校長室のドアを跳ね開ける!
「待ってろル・シッフル! クソ野郎の脳天ブッ飛ばしてくるぜ!」
BUZZZZZZZZZZ!
[CONDEMN: どこ 行くんスか! アニキィィィィィィ!!!!!]
AIナビゲータの猛抗議を無視して、木暮は決断的に走り出す!


同時刻、1年A組・教室。
日當瀬將太は、教室の隅で取り巻きたちに囲まれ、縮み上がっていた。
「アヒ、アヒ、アヒィィィ……父さんに、父さんに言いつけるぞォ……」
理解不能な光景を目の当たりにして、親指の爪を噛んで呟く。
「お、俺の……俺の父さんは、日當瀬グループの社長なんだぞッ!」
將太は唐突にキレると、癇癪を起した五歳児めかして暴れる!
「ちょ、ちょ、將太さん!」
「落ち着いて、いいから落ち着いて!」
「大丈夫だって、俺たちきっと助かるって!」
取り巻きの男子生徒数人が、暴れる將太に掴みかかって押さえ込む!
(チッ。ギャアギャアうっせーヤツらだな……男らしくねえ!)
自分の席に踏ん反り返った横山多計夫が、不快そうに舌打ちした!
憎き黎明は、教卓に無防備に突っ伏したままだ。
(なのに……何でどいつもこいつも手を出しやがらねえ!?)
「あっパソコン……パソコンが!」
「何だ、生き返ったのか!?」
「どうなってんだ!」
生徒が一人また一人と、自分の学習机に飛びついて画面を注視!
スマートデスクが再起動し、表示が正常化される!
「……何が、起こってるんだ……」
誰ともなしに漏らした呟き。答える者など誰も居ない。
「チクショウ! 何かまたおかしいぞ!」
ディスプレイ上に表示されるCUI
教卓を制圧した黎明の遠隔操作で、電子攻撃の共同戦線に合流!
「もう何なんだよ! 全然反応しねえよ!」
「クソッ! こうなりゃHIDなんか抜いちまえ!」
「オイ止めとけって、ぶっ壊れたらどうすんだ!」
「それよりも爆弾が! 爆発したら――」

KABOOM! KABOOM! KABOOOOOOM!

同時多発的な小規模爆発の連鎖!
窓ガラスが、襲い来る衝撃波でビリビリと軋んだ!
「「「「「ギャーッ!!!!!」」」」」
生徒たちは狂乱し、一斉に耳を塞いで縮こまった!
学習机の上で足を組んだ、多計夫ただ一人が顔を顰めた。
(もう……我慢の限界だぜ!)
ガツンッ!
苛立たしげに席を蹴り飛ばし、多計夫が立ち上がる!
「お、おい多計夫ッ! お前何考えてやがんだ!」
「気安く呼び捨てにすんじゃねえボケ!」
多計夫はキッと背後を振り返り、声の主を睨んだ。
「爆弾……ば、爆発したらよ、お前……責任取れんのかよッ!?」
クラスの自称『人気者』、江熊匡平が喚いた!
「そ、そうだぞ!」
「し……死んだら、て……手前の責任だからな!」
「一生恨んでやる!」
取り巻きたちが、ここぞとばかりに加勢して口撃(こうげき)!
「バッカ野郎どもが! 何も出来ねえ腰抜けは黙ってろ!」
ガッシャーン!
ブチキレた多計夫は、苛立ち紛れに隣の空席を蹴り飛ばす!
「クッソがああああ―――――ッ!」
多計夫、突撃!
「うらああああ――――――ッ!」
教卓にドロップキック!

CRASSSSSSH!

教壇上のスマートデスクに、多計夫の両脚が直撃!
黎明は教卓もろとも宙を舞い、背後のスマートボードでサンドイッチだ!
「ぐぼぁあああッ!」
黎明、痛みに悶絶!
叩きつけられた衝撃で、脊椎ユニットの接続ケーブルが外れた!
BUZZZZZZ!
[ERROR: 脊椎ユニット 接続中断 …… ハンターキラー 強制解除 します]
「グハーッ! ハァッー、ハァッー!」
いきなり現実世界に引き戻された黎明は、訳も解らずもがき苦しむ!
「オラァ、立てよ鍛冶屋ぁ! この前の殴り合いの続きだぜ!」
多計夫は両の拳を握り、仁王立ちでいきり立つ!
しかし、その時遠くから聞こえる足音!

鍛! 冶! 屋アアアアア! 黎! 明イイイイイイッ!!!!!

雄叫びと共に、拳銃を携えた木暮が1年A組に突進!
「ンだコラァ、うっせえぞ! 誰じゃボケ! すっこんでろ!」
教室前で立ち止まった木暮が、ドアの向こう側で拳銃を構えた!

BLAM!

教室の引き戸を貫通し、襲い来る9mmx19弾!
弾頭は唸りを上げて、多計夫の数十センチ前を通過した!
「何だッ!?」
多計夫は意表を突かれ、慌てふためき硬直!
ドアの向こう側で、木暮が鬼の形相で絶叫!
くったばれええええ! 鍛冶屋アアアアア!

BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!

「「「「「ギャーッ!?」」」」」
教室に満ちる怒号と悲鳴!
放たれた弾頭は、多計夫の眼前で全て空を切り、壁にめり込んだ。
「アッ……アッアッ……アヒッ……」
多計夫は呆然と立ち尽くし、ガクガクと膝を震わせた。
失禁しそうになり、それを堪えようとしたが、やはり失禁した。
「うっ、ううーん……ハッ!?」
痛みに呻いていた黎明は、ドア越しの銃声で我に返る!
咄嗟にテーザー銃を握る! しかし弾切れだ!
ガラガラガラッターン!
「くたばったか! 鍛冶屋!」
弾切れの小型拳銃を片手に、木暮が傲然と教室にエントリー!
そして、吹き飛ばされた教卓を見て唖然!
「な――何だこりゃあッ!?」
傍らには、拘束された国語教師・亜門の姿がッ!
「鍛冶屋、鍛冶屋はどこだッ!?」
その時、黎明は教卓の下でもがいていた!
テーザー銃の別部品化された銃口、電気ユニットを外す!
上着のポケットから、新しい電気ユニットを取り出して接続!
「ンンッ!? もしかして、そこかッ!」
同時に木暮の視線が、教卓の下に挟まれた黎明の姿を捉えた!
木暮の指が、小型拳銃のマガジンキャッチを押し込んだ!

軍用拳銃から滑り落ちる、空弾倉。
木暮は上着のポケットに手を突っ込み、予備弾倉を握り締めた。
黎明は両脚に渾身の力を込め、圧し掛かった教卓を蹴り飛ばす!
木暮の指が、予備弾倉を拳銃に運ぶ――
黎明は壁にもたれかかったまま、再装填したテーザー銃を構える!
木暮は呆気に取られて口を開けた。
「なっ――手前、それは!」

BLAM! BLAM!

咄嗟の状況判断で、木暮が上体を逸らした!
しかし、射出された電気針の方が――早い!
「イテッ」
木暮の首筋と脇腹に、電気針が刺さった!

TATATATATATATATATA!

「アバ―――――ッ!? アババババーッ!?」
木暮、感電して痙攣!
手から銃がこぼれ落ち、予備弾倉は装填されずに飛び出した!
しかし、木暮は倒れない!
アドレナリンが過剰分泌され、電撃の利き目が鈍いのだ!
木暮は意思の力で自分を強いて、電気針を強引に引き抜いた!
「アバ―――――ッ! ハァーッ、ハァーッ!」
電撃の余韻に身体を震わせ、床に這いつくばった!
(な、何て奴だ……どんだけ興奮してやがるッ!)
黎明は驚き、目を見開く!
[QUERY: レイ 何が 起こったの! 無事なの レイ!?]
「問題無い。プランセス、そっちはどうだ!」
[COPING: 学内の ネットワーク …… もう少しで 制圧 完了します!]
「フハッ、ハッ……フハハハハハハッ!」
木暮は涎を垂らし、血走った眼で哄笑した!
よろめきながら腰を上げ、勝ち誇った笑みで黎明を見据えた!
「ショウダウンだぜ、鍛冶屋黎明!」
その手に握るのは、拾い上げた拳銃と……弾倉!
黎明は、制服のズボンに挿した拳銃を掴み、引き抜く!
「なっ、それはまさか、俺の……」
木暮の手が弾倉を装填すると、スライドリリースを押し込んだ!
ガシャッ! 小型拳銃のスライドが前進し、初弾を装填!
二人は銃口を向け合った!
「鍛冶屋アアアアア!」

BLAM!BLAM!

至近距離で二人の銃撃が交錯!
(手前を……)(今、ここで……)
黎明と木暮は、殺意の眼差しで睨み合う!
((ブッ殺してやるッ!))

BLABLABLABLABLABLABLABLABLABLAM!

\中編終了
\黎明の01フロンティア

[APPRECIATION: THANK YOU FOR WATCHING !!]

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