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黎明の01フロンティア №00-09 前編

№00-08 後編 より続く

――――――――――

昼下がりのオフィスは混乱に包まれ、怒号が飛び交う!
「不正接続、多数確認! 大規模な電子攻撃です!」
「第1サーバー、第2サーバー、ダウンしました!」
「一体何がどうなってるんだッ!」
管理者と思しき、スーツ姿の中年男性が怒鳴った!
「くそったれ! さっさとどうにかしろ!」
エンジニアたちは泡を食ってキーボードをタイプ!
「言われなくても、やってますよ!」
「クソックソッ何だこのパワーはッ!」
「一体どこからハッキングしてやがるんだ!」
エンジニアの一人がタイプする手を止め、ハッと顔を上げた!
「やりましたよ! 賊のIP、掴みました!」
管理者が血相を変えて駆け寄る!
「どこだッ! 一体どこから!」
「このIPは……何てこった、これは学校じゃないか!」
「何だって! 何かの間違いじゃないのか!?」
「いえ、IPが指す所在地は確かに……一ノ宮第三高校!」
「アッ」
絶句する管理者とエンジニアたちを尻目に、画面表示がフリーズ!
完全にハッキングされたPC群は、もはや操作を受け付けない!
アハ――ッハッハッハッハッ!
アハ――ッハッハッハッハッ!
天井のスピーカーからは、不快な嘲笑が絶え間なく降り注ぐ!
ディスプレイの表示にノイズが走り、その文字が浮かび上がった!

『World Downfall』


\黎明の01フロンティア
\ORDER №00 CHAPTER 09
\対決

非公式 オープニング: Novallo「Angle of Perception

――――――――――

目出し帽姿の黎明はHIDを取り出し、表示に舌打ちした。
『接続:圏外』
ECM(電子妨害装置)か。無線通信が役に立たないワケだぜ」
[INTEL: レイ! 大企業や 政府機関の サーバーに 無差別 電子攻撃です!]
「誰の差し金か、大体は見当が付くよな?」
[DOUBT: まさか …… この 学校から!?]
「ますます、家に逃げ帰るワケにはいかなくなってきたぜ!」
そこら中のドアというドアを確かめるが、一つ残らず施錠!
黎明は、廊下の窓の前で足を止めた。
クレセント錠のかかった窓ガラスを手でなぞり、不敵に笑う!
バッグから取り出すは、ダクトテープとガラスカッター!
窓ガラスに、三角形にテープを貼り付け、カッターを押しつける!
ギャリッ、ギャリッ、ギャリッ!
――パキンッ!
窓の穴から手を突っ込むと、クレセント錠を跳ね上げる!
「やれやれ、こういう所は妙にアナクロで助かるぜ」
黎明は窓を引き開けると、廊下に滑り込んだ!
バッグの中から軍用拳銃を取り出すと、スライドを引いて装填!
右手にテーザー銃、左手に軍用拳銃!
黎明はバッグを肩にかけ、決断的に前進する!


閉鎖された校長室。
室内には、種々雑多なケーブル類が入り乱れていた。
電源ケーブル、LANケーブル……導爆線(デトネーション・コード)!
枝分かれした導爆線が、執務机を目指して延びる。
椅子に拘束された校長・武蔵野景一(むさしの・けいいち)!
「ムガーッ、ムガーッ!」
口には猿轡、身体には……無数のプラスチック爆弾!
教育実習生・木暮は、ノートPCを鼻歌混じりに操作している。
学内各所の監視カメラを切り替え、映像を監視していた。
――DOOM! DOOM! DODODODOOM!
スピーカーからは大音量でヴェイパーウェイブが流れている!
音の根源は、ジャックした放送室だ。
ヴェイパーウェイブは『World Downfall』のトレードマーク。
しかし、ノートPCからは放送に負けない大音量が飛び出す!
木暮のお気に入り、ナパーム・デスの最新アルバムだ。
(あんなダッセェ音楽、よくもまあ有り難がってるよな)
木暮は軽蔑を隠さず、嘲るように鼻を鳴らした。
オーストリー製の軍用小型拳銃を手に取り、椅子を立つ!
「ア゛―――――ッ! 何かムラムラしてきたゼェッ!」
股間を押さえて腰を振り、絶叫!

BLAM!

天井を跳ね返ったFMJ弾が、校長の眼前で執務机に突き刺さる!
「ムガ―――――ッ!?」
武蔵野校長は半狂乱で、全身を痙攣させて失禁!
「もう我慢できねえ! こうなりゃとことん楽しむぜ!」
ノートPCに飛びつくと、監視カメラを素早くザッピング!
「獲物は選り取りみどりだ……ヒヒヒ、恥辱の後悔S・E・X!」

BEEP!

[CAUTION: どうやら 侵入者ですぜ アニキ!]
音楽が途切れ、AIナビゲータの電子音声が割り込む!
「ハァ、侵入者!? 冗談よせよル・シッフル!」
木暮は激しい貧乏ゆすりと共に舌打ち!
[CONDEMN: 確かですぜ! 廊下を 怪しい ヤツが 歩いて やがった!]
「誰も入って来れるワケねえだろ! 見間違いじゃねえのか!?」
ノートPCのAIが、監視映像を強制遷移させた。
「こいつは、1年A組の監視カメラだな……」
木暮は映像を注視しながら、一人の少女に目を留めた。
「あーこいつ。確か旅川とか言ったな……アッハァ」
舐め回すような眼差しで、下劣に息を吐いて舌なめずり。
[CONDEMN: どこ見てんスか すっとこどっこい!]
「んだとコラァ! AIの癖に生意気な! 誰がすっとこどっこい――」
木暮はル・シッフルに怒鳴り返して、言葉を詰まらせた。
「――誰だコイツ?」
目出し帽の生徒が、教員に銃を突きつけて歩み寄っていた。
「だ、誰だコイツ!? どっから入って来やがった!?」
木暮はPC画面を手掴みし、興奮して喚き立てる!
[UNKNOWN: 俺っちが 知りますかい! とにかく 侵入者です!]
「い、一体何なんだッ!」


――DOOM! DOOM! DODODODOOOM!
(チクショウ、うっせえBGMだな!)
ギャリッ、ギャリッ、ギャリッ――パキンッ!
ガラス切除、クレセント錠解放!
「えっ……って、うわあああああ゛ッ!?」
黎明は教室の窓ガラスを、勢い良く開いた!
テーザー銃の銃口に制され、クラスメートが逃げ惑う!
「ひゃ、ひゃあああテロリストォ―――――ッ!」
「いやだ、こっちに来ないで!」
「ギャア―――――ッ!?」
黎明は大儀そうに上体を起こすと、窓ガラスから教室に侵入した。
(チッ……案の定、生徒のPCは全部ハックされてやがるな!)
生徒たちのスマートデスク上で、CUI表示が何らかの行動中!
(それにしても、こいつはッ……!)
黎明は、教卓奥のスマートボードを忌々しげに睨みつける!
延々とリピート再生されるのは、学生が教師を殴打する映像。
それは、黎明が中学生時代に起こした暴力事件の録画映像だ!
(木暮の野郎……こいつをどっから拾って来やがった!)
黎明は教室を大股で歩き、左右田夏目の隣で一瞬立ち止まった。
夏目は黎明を見上げ、胸元で手を握り締め、身を縮ませる!
黎明は無言で歩みを進め、教卓にテーザー銃を向けた。
「お、おい……お前、まさか……鍛冶屋か、そうなのかッ!?」
国語教師の亜門は、両手を鉤爪状に開き、身構える!
「何でお前なんかが爆弾テロを……答えろッ!」
黎明は無言で、その場を退くように銃口で示した。
「くっそぉ……大人を舐めるなよッ! 生徒を守るためならッ!」
亜門は恐怖に顔を引き攣らせ、果敢に突進――

BLAM!

する前に、黎明のテーザー銃が電気針を弾いた。
TATATATATATATATA!
「おほっ……あひんっ、アババババババ―――――」
亜門は感電して痙攣失神!
「「「「「ギャーッ!」」」」」
クラスメートたちはたまらず、悲鳴と共に席を立った!
波が引くように、教室の奥まで固まって退避!
黎明は構わず、失神した亜門に歩み寄る!
(すまねえ、亜門先生……堪忍してくれよ)
亜門の背中で両手を合わせ、両親指をテープで巻きつける!
両脚の脛にも、ダクトテープを巻きつけて完全に拘束した!
「やるぜ、プランセス」
[DOUBT: レイ …… できるでしょうか 私たちに]
「チッ……やるしかねえだろッ!」
黎明は教員用スマートデスクを見遣り、HIDを取り出した!
「出し惜しみはナシだ。全力で、一気にシステムを制圧するぜ!」
取り出したる接続ケーブルは……2本!
1本はデスクとHID、そしてもう1本はHIDと――

BEEP!

[<MASTER>: 接続確認 同期開始 …… ハンターキラー β0.9.201 起動]
――黎明の、脊椎ユニット!
BOOOOOOOOOOOOOOM……。
視界に七色が煌めき、現実世界が退行していく!
BEEP!
[AMAZED: ああ …… ああ レイ …… レイ!]
[<MASTER>: 何だ プランセス]
[DECLARE: 私 あなたを 愛してる …… 愛してる!]
[<MASTER>: …… …… …… ああ 俺もだよ Pomme Princesse!]
黎明は激しい嘔吐感に耐えながら、教卓に突っ伏した!
[ANALYSE: 接続点 多数確認 …… 管理者権限 接続拒否 ……]
(待ってろ木暮……手前の野望に、風穴開けてやるぜ!)
[ASSAULT: M44 Mod.3 エージェント オレンジ 準備完了 …… 展開]

\前編終了
\黎明の01フロンティア

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