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意識「他界」系

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犯人は伝説上の怪物? 謎の通り魔殺人事件の真相は、とある禁書が関わり出したことによって予期せぬ大惨事に…伝奇ホラー。
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2016年3月の記事一覧

意識「他界」系 その86

意識「他界」系 その86

「渋谷」「テロ」「怪物」。検索キーワードのトップ3が、これらの単語で埋まった。

歌手で無い方の「世界の終わり」というワードも急上昇していた。

事実、世界中で同時多発的に同様な現象が起きていた。

黒い巨大な蛇は、自由の女神に巻き付いた。ピサの斜塔を引き倒した。天安門広場に、クレムリンに、ビッグ・ベンに、主要各国の首都近辺に出現した。

終わらないはずの世界が終わり始めていた。

世界平和は幻の

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意識「他界」系 その85

意識「他界」系 その85

首から上を失ったタキシード姿の司会者が、フラフラっと壇上から落ちた。飛んできた彼の頭をキャッチしたゲル・ビーツは「What’s this?(何これ?)」と食べ掛けのオマールエビを吐き出した。

粘土でこさえられた様な、歪な造形の人型が、舞台の上に立っていた。

自分の腹を切り裂こうとナイフを当てていたジャンも、その妻や娘も、もちろん客席の大富豪たちも状況を飲み込めないままでいた。中には余興だと勘違

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意識「他界」系 その84

意識「他界」系 その84

「蛇」は洋の東西問わず、古代から神の象徴とされてきた。中国における「女媧と伏義」、インドにおける「サラスバティ」や「ナーガ」、ギリシャ神話における「アスクレピオスの杖」など。一方、ユダヤ・キリスト教では、蛇は悪魔の象徴であり狡猾さの象徴とされている。

どちらが正しいのかは一旦置いておくとして、人々に畏怖の念を抱かせた「蛇状のモノ」が世界各地に存在していた名残なのかもしれない。

今、まさにそれが

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意識「他界」系 その83

意識「他界」系 その83

突如、世界がスローモーションになった。「痛い」「冗談だろ」「助けて」「苦しい」「ふざけるな」「あ、死んだな」「どけどけ」「もうダメ」「離せコラ」「マジマジマジ」近くにいた人たちの負の感情が、何百と一斉に樽町王人の中に入ってきた。それは雑踏に頭の中を蹂躙されている感覚。悲鳴を上げながら頭を抱え、王人は身体を反転させた。カツンとアスファルトに当たる何か。それは背中から突き抜けた包丁の刃先。咳き込むと大

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意識「他界」系 その82

意識「他界」系 その82

蹴飛ばされた薬莢が、足元で微かな金属音をさせていた。リックは痛めた左足を引き釣りながら倒れた男に近付いた。不死身のはずの獲物は、大量の血を流して虫の息だった。長いこと傭兵をやってきたリックには、死ぬ間際の人間が醸し出す雰囲気が分かる。今コイツにあるのも間違いなくそれだった。

「芝居か、おい。クソジャップが」リックは容赦なく、松尾羽翔の太腿に弾丸を撃ち込んだ。左右それぞれ2発ずつ。キンキンとアスフ

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意識「他界」系 その81

意識「他界」系 その81

ケツの穴にバイブレーターを突っ込まれた藪坂が、全裸四つん這いで泣きながら床のドッグフードを食べていた。不意にそれを思い出し、彼は笑った。樽町王人は自分が今まで受けてきた陰惨な苛めを順番に藪坂に行うことで、本来の強い自分を取り戻せていく気がした。もっとも昔、自分がケツに刺されたのは太いマジックペンだったが。

強い自分どころか、王人は真のキングとしての、新たな力も手に入れた。

呪文で怪物を呼び出し

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意識「他界」系 その80

意識「他界」系 その80

「地底人は、確かに存在する! 月末までには」と乱暴な字で書かれたメモの上に、柿沼忠司はコーヒーカップを置いた。ここは月刊「ラー」編集部。彼のデスクに貼ってある附箋や散らばっているメモには、恐らく一般社会では眉を顰められそうな文句ばかりが書き綴られている。「ヒットラーは双子だった」だとか「全身緑色の子供たちが、世界中で生まれている」だとか。

柿沼は左手に持っていた、もう一つのコーヒーカップを木村紀

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意識「他界」系 その79

意識「他界」系 その79

AK47カラシニコフ。設計段階で部品同士に隙間を作ったために命中率は悪い。それでも世界中でカラシニコフが愛用されているのはなぜか? 一つには単純で合理的な設計がもたらす保守性と耐久性の高さ。泥水に浸かってもAKなら弾が撃てるとされているが、それは前線の兵士にとって何より心強い。もう一つは、非合法に活動する人間たちにとって、模造品も含めれば恐ろしい数出回っているAKは、それだけ足が付きにくい。

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意識「他界」系 その78

意識「他界」系 その78

最近の大災害時に、不自然に必ず出てくる数字「11と17」。

例えばNY同時多発テロ、2001年9月11日。東日本大震災、2011年3月11日。阪神淡路大震災、1995年1月17日。ロサンゼルス地震、1994年、1月17日。湾岸戦争、1991年1月17日。

偶然の一致だと片付けてしまうには余りにも多い。オカルト方面では以前より「闇勢力による聖書解釈を歪めた犯行説」があった。

「11」は、ボアズ

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意識「他界」系 その77

意識「他界」系 その77

呻き声と共に目を開いた橋爪が最初に目にしたのは、タイトスカートの中のピンクのショーツだった。普段なら見ることの無い真下からのアングル。男子として普通なら嬉しいはずだが、ピンクのショーツの主が自分に銃口を向けていれば話は別だ。

どうしてくれるんだ馬鹿野郎と怒鳴りつけているトラックの運転手に、全く目線をやることも無く、乱堂美姫は冷たい表情で橋爪を見下ろしていた。

「どこに雇われてるのか正直に喋って

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意識「他界」系 その76

意識「他界」系 その76

黒塗りのバンの後部座席で踏ん反り返っていた嵯峨根は、スキンヘッドの頭を撫でながらスマートフォンをポケットから取り出した。

「おう、モアイ像の辺りか。すぐ行くから見失うなよ」通話を切り、運転席の丸山の頭を叩く。「早く出せ、バカヤロー」

「や、でも兄貴、変な連中が道ふさいでまして」前歯が無く、滑舌の悪い丸山の発声にイライラした嵯峨根は、もう一度強めに頭を叩いた。「バカヤローコノヤロー、クラクション

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意識「他界」系 その75

意識「他界」系 その75

フルスイングした金属バットが容赦なく顔面を叩いた。鈍い音がして相手が倒れた。手に伝わってきたトラウマになりそうな感触に、思わず桑田泰章は吐きそうになった。

「このボケ! トドメを刺せよ!」坂上と名乗った女の罵声に、桑田は嫌々ながらも倒れた男に追い打ちを掛けた。スイカ割りの要領でバットを振り下ろすと、脳漿がアスファルトに飛び散った。

それを見て桑田の胃は逆流を始めた。さっき仲間たちと食べた丸亀製

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意識「他界」系 その74

意識「他界」系 その74

ハロウィンとは、古代ケルト人が収穫を祝い、悪霊を追い出すために行った宗教的儀式が起源とされている。それを全く関係の無い、ここ渋谷で数年前から大々的に行われていた理由---もしかしたらそれは、この日を、この日の惨劇を、集団的無意識が予知していたからなのかもしれない。

SATの生き残りは、既に隊長の毒島以外では桜木と多部だけになっていた。鍛え上げた精鋭部隊が、ほぼ5分と持たずに壊滅したのだ。

「テ

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意識「他界」系 その73

意識「他界」系 その73

両親と2人の兄が医者なのに、なぜ自分だけが刑事の道を選んだのか。それは大好きだった祖父の影響だ。そこそこ有名なミステリー作家だった祖父の膝で読んだ推理小説の数々。それが移川民子の将来を決めたといってもいい。

その祖父が、闇の中で何かをと叫んでいた。民子が近づこうとすると、優しかった祖父がその身体を突き飛ばした。それがきっかけで、彼女の意識が現世に戻った。急激に覚える寒気。頭が割れるように痛む。な

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