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意識「他界」系 その79

AK47カラシニコフ。設計段階で部品同士に隙間を作ったために命中率は悪い。それでも世界中でカラシニコフが愛用されているのはなぜか? 一つには単純で合理的な設計がもたらす保守性と耐久性の高さ。泥水に浸かってもAKなら弾が撃てるとされているが、それは前線の兵士にとって何より心強い。もう一つは、非合法に活動する人間たちにとって、模造品も含めれば恐ろしい数出回っているAKは、それだけ足が付きにくい。

黒塗りのバンが2台、コンビニの前に駐車していたBMWの前と後ろを塞ぐように停まった。中からは黒い目出し帽を被った男たちが、それぞれ4人ずつ出てきた。その手にはAK47カラシニコフ。一斉に連射で撃ち出すも、BMWは防弾ガラスを貼っているので割れなかった。ひと際背の高い、リーダーらしき男が手で合図を出した。近くにいた者が台座でガラス叩く。フロントガラスも後部座席の窓ガラスも外れた。

「Do not shoot the head(頭は撃つな)」リーダらしき男が指示を出す。

「クソ」助手席に座っていた左文字が、身体を曲げて右手でアクセルを踏んだ。苦しい体勢だったがサイドブレーキを外す。

急発進したBMWの鼻先が、前方にいた2人の男を黒塗りのバンと挟み撃ちにした。残り6人。

松尾羽は後部ドアのロックを外すと、その長い足で思い切り蹴り飛ばした。近寄ってきた男が弾き飛ばされる。対向車線まで道路を転がり、走ってきたプリウスにはねられた。残り5人。

再び連射音。直後に運転席のガラスが台座で破られた。「Do not lick(舐めるな)」容赦なく男は左文字の背中を撃ち抜いた。

「これで5対1か」優雅な身のこなしで、松尾羽はクルマの外に出た。

「Do not worry、Kill are not(心配するな、殺しはしない)」

リーダらしき男が言い終わらないうちに松尾羽は急にしゃがみ込むと、右足を旋回させた。爪先が相手の左膝を砕く。呻き声を上げながら男が撃った弾丸は、向かいにいた男の腹部に命中した。残り4人。

振り回した右足の遠心力を利用して、松尾羽は回転しながら身体を起こすと、左足で地面を蹴り空中でさらに1回転した。ストンと右足で着地すると、今度は身体を反転させ、左足を後ろ回し蹴りとして繰り出した。呆気に取られていた一人が顔面を蹴られた。脳震盪を起こし地に伏した。残り3人。その左足の勢いを殺さぬまま、その横にいた男のAK47を蹴り飛ばす。もう一回転。今度は二本貫き手を、目出し帽の目の部分に突き刺す。残り2人。

休むことなく松尾羽は前転して、BMWの後方にいた男との間を詰めた。立ち上がると右手で銃身をつかみ引っ張りながら、左手のエルボーを相手の顔面に叩き込んだ。カウンターでもらったら堪らない。両膝を付いた相手の顔面に、松尾羽はトドメの膝蹴りを入れた。残り1人。

膝にダメージを負ったリーダーらしき男は、蹲っていた。「I give up(降参だ)」銃を手放し、頭を振っている。

「相手を間違えましたね」スーツの襟を直しながら、松尾羽がゆっくりと男に近付いた時---

銃声が2発鳴り、松尾羽の胸と背中から血飛沫が飛び散った。



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