人の話を聴くときに気をつけていることは「お話泥棒をしない」ということ
今年一年を締め括る話として「プロコーチ」という人の話を聴く仕事をしている視点から、「聴くときに意識していること」を書いてみたいと思います。「コーチングの仕方」ではなく、人の話を聴くとき、どんなところに気をつけて聴いているかというお話なので、年末年始の帰省で、ご家族の話を聴くときに参考にしていただけると嬉しいです。
そしてこれはあくまでも私自身の感想です。最後に「聴き方」に関するおすすめ本を置いておきますので、詳しくはそちらをご覧ください。
私たちはみんなしゃべりたがり屋だと思っている
私はおしゃべりが大好きです。お友達と1時間でも2時間でも、近況や最近気になっていることを喋り続けられます。会社に勤めている時も、後輩に質問されたらいっぱい伝えていましたし、上司にもたくさんご自身の成功体験を聞かされました。
家に帰っても、夫に今日あったことでちょっと聞いて!と話していますし、3歳と6歳の娘たちも、ずっと喋っています。私が喋っていたら、遮って泣き叫んで「私の話を聞いて!!!」と言っています。
どうでしょう?
みなさんも聴くことより喋ることのほうが多くないですか?
学生時代から社会人を振り返っても、論理的に組み立て伝える方法やディベートの手法は習いますし、営業でもロープレというお客様でどう喋るかの練習はしますが、お客様の話をどうやって聴くかの学びはありませんでした。
「人間とは喋りたい生き物だ」と私は常々思っています。
喋る人がいて聴く人がいないと、会話のキャッチボールにならない
みんなしゃべりたい族なので、みんな喋っていたら誰も聞きません。保育園から帰ってきた娘たちが勝手気ままに喋る我が家の状態がまさにそうです。私も喋る!6歳も喋る!3歳も喋る!
みんな聞いて!私の話を聞いて!!
誰も目を見て、話をじっくり聴いてくれないから、3歳が怒り出す!6歳がふてくされる。40歳の私は、”だったらもう話さない!”とへそを曲げる。
誰かが立ち止まって、放たれるエネルギーを受け止めないと「私の話を聞いてほしい!」というエネルギーが、家の中を彷徨い暴れ回っています。
この様子を見るたびに、私は「人の話を聴く役割をとる人」が必要だなと思っています。キャッチボールで言うと、ピッチャーします/キャッチャーしますという役割分担がいると思います。
「役割をとる」と言うほど、よし!聴くぞ!と決めて聴く必要があると思っています。そう決めないと、ついつい私は喋ってしまうからです。自分の話をしたいし、お役にたちたいと思うし、いい情報知っているから教えてあげたいと思うので、気を抜くとすぐ口がパカっと開いて自分の話をし始めてしまいます。
気がつくと「お話泥棒」になっていることが多い
「人間とは喋りたい生き物だ」理論でいうと、あわよくば自分の話をしたくなるものです。初めは聴いていたつもりが、相手の話に刺激されて、思いついちゃった最近あった面白いことや、そのお困りごとに対していいアイデアがあるから教えてあげたいとか。
キャッチャーやるよ!と思っていたのに、ついボールを手にしたら「ねえねえ聴いて!」と思い切りピッチャー並みに投げ返したくなる衝動にすぐ駆られます。
私はそれを「お話泥棒」 と呼んでいます。
よくあるなと思っています。
「聴くぞ!」とはじめは聴いていたつもりなのに、いつのまにか気がつくとお話泥棒に変貌してしまっている。みなさんもよくあるのではないでしょうか?
「聴く」と「コーチング」の違いについて
私は「あきらめラジオ」という名前で、みなさんの諦めた話を聴くラジオをやっています。
ここでは「聴く」ことをしていて、私の本業である「コーチング」はしていません。ただただ聴くことを意識して聴いています。コーチングで培った筋肉を使って聴いてはいますが、”コーチング”はしていません。
改めて私の中での線引きとして、「聴く」と「コーチング」の違いを書いてみたいと思います。
聴くスキルの使い方は共通するかもしれませんが、前提として「変化に向けた双方の合意の有無」が明確に違うと思っています。
合意なきコーチングは、悲劇を生むことをよく知っているので、「コーチングがご希望ですね」と2人で握手を交わさない限りしないようにしています。
ひたすら聴くときに気をつけていることは「お話泥棒」に変貌しないこと
「あきらめラジオ」において聴くときに、気をつけていることは、相手の話を奪わないことです。
聴いていると「わかるー!!!」という時が出てきます。いわゆる「共感する」ときです。
「わかるわかる!私もね〜」と話したくなる時がもちろんあります。その状況わたしにもあったよ!という時や、それは辛かったね、苦しかったですね… とつい思ってしまうこともあります。
そう言う時、「あ〜それは辛かったですね」とか「めっちゃ大変じゃないですか!」とか言わないように、グッと飲み込むよう口に出さないことを意識して聴いています。
少し具体例を出すと、
今日は聴くぞ!とピッチャーの役割をになっているとき、「最近、結婚したんですよ」という話が出てきても、「え〜そうなの!おめでとうございます!」とすぐ言わないようにしています。
私の主観では「めでたいこと」ですが、もしかしたら政略結婚で本当は結婚したい人が別にいて悲しい結婚かもしれませんし、最近結婚したけれど、実はもう別れたいって話かもしれない。そうときに「おめでとうございます!」と言われたら、相手は「実は…」という言いたいことがあっても何も言えなくなります。
だから一旦「ほう。そうなんですね」とただ「結婚した」というお話を受け取るだけにとどめます。
もしここで、「えー!そうなんですね!おめでとうございます!結婚式はいつ挙げるんですか?」とか言い始めると、それは「お話泥棒認定」だと思っています。
じっくり黙って聴き続けると面白いことが起こります。
今まで相手から聞いたことがないような新しい話を聞けたり、そんなこと思ってたんだね!という予想外の気持ちが出てきたりします。それを知ったあなたはきっと、相手から宝物を発掘したような幸せな気持ちになるでしょう。
黙って頷いて相手が思い切りしゃべれるように居るだけでいい
年末年始、久しぶりに会うご家族の話を聴く機会があれば、口にチャックをして目と口元と首で相槌を打ちながら、この言葉を繰り返しながら聴いてみてください。
おもいっきりしゃべてもらおう!
喋り尽くしたら、どんな顔するかな?
「お話泥棒」にならずキャッチャーに徹しよう
そう思うのはなんでだろう?どんな背景があるのかな?
そんなことに意識を向けながら聴いてみると、
よく知っているはずの大切な人の初めての話が聴こえてくると思います。
「人間とは喋りたい生き物」なので、「お話泥棒」にならないように黙って頷いて相手が思い切りしゃべれるように居るだけで十分なことも多々あります。ぜひこんなところに意識を向けて「よく知っている人の身近な人の話」を聴いてみてください。
聴くについてもっと知りたい方へおすすめ本
「聴く」とは何か?が書かれた本です。分厚いですが、海外の視点から「聴く」について書かれています
コーチングではなく、「聴くスキル」とは何か?が分析されているので、知識として「聴く」がわかります
こういう聴き方をするといいんだ、が漫画で見えるのでわかりやすくておすすめです
年末年始の出会いの中で、みなさんに楽しい会話のキャッチボールが生まれますように。最後まで読んでいただきありがとうございました。
国際コーチング連盟PCC
CTI認定CPCC®︎
坂口佳世
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