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青空文庫で読書タイム〜室生犀星「小景異情」

娘たちの日本語補習校が今日から新学期がスタートした。二人は4年生と6年生に進学。イギリスはロックダウン中&イースターホリデー中ということもあり、オンライン授業でのスタートだった。それでも、ひさびさに友だちと会ったり、新しい担任の先生と自己紹介などして楽しい時間を過ごしたようだ。

6年生の娘が、今日の授業で詩の学習をした。国語の教科書に掲載されていたのは、室生犀星の「小景異情」の「その六」。授業では、詩を読んで情景や筆者の想いを想像して話しあっていた。娘にとって、詩は超難関。理解するのが難しいようだった。娘に便乗して、私も室生犀星の詩を読んでみた。

あんずよ花着け

「小景異情」その六

あんずよ
花着け
地ぞ早やに輝やけ
あんずよ花着け
あんずよ燃えよ
ああ あんずよ花着け

あんずの花が「咲いて欲しい」という強い気持ちが伝わってくる詩。暗く長く悲惨なイギリス冬の終わりを願って、私も春の到来を強く願っていた。娘の担任の先生が、室生犀星が故郷の金沢を離れて、ふるさとを思いながら東京で作った詩だと言っていたが、金沢には、あんずの花がたくさん咲くのだろうか。

ふるさとは遠きにありて思うもの

「小景異情」その二

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食かたゐとなるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや

諸説あるようだが、室生犀星が故郷の金沢で「故郷には居場所はない」と東京に戻りたい気持ちを綴った詩と言われている。実際に、私も夢や希望を抱えて日本を離れたのだけれど、一時帰省するぐらいで、日本には今や私の居場所などないのかもしれない。こうして、故郷を離れてイギリスから日本を想うと、「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」という詩がなんだか心に響いてくる。

「小景異情」は「抒情小曲集」に収録されていて、青空文庫で読むことができる。



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