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一瞬で論文の内容を推測できる!コツとは?

どんな研究をするのかという研究テーマが決まったら、すでに存在している参考となる論文(先行研究)を収集し、それらを読んで状況を理解する「論文レビュー」の作業が大切とお伝えしました。

論文レビューのおかげで、自分がこれから研究をどんなふうに進めたらよいのかが見えてくるんですよね。

そのためにはまず論文を集める必要があります。論文の検索方法は上で紹介したnote記事で述べました。その結果、たくさんの論文がヒットします。次に、その中で「読むべきもの」と「読まなくてよさそうなもの」に分けていくんです。このあたりを研究者はどう進めているのか、今回のnoteでは、私がとっていた方法をお伝えして、研究の裏側の世界を紹介していきますね。論文レビューは研究をするとき(論文を書くとき)だけでなく、たとえばガイドラインを作成するときにも行われていることですし、エビデンスに基づいた食情報を発信するときにも使えるテクニックになるはずです。



●読むべきか読まざるべきか

以前のnoteで紹介したように、論文検索するにはPubMedという論文検索サイトを使います。検索窓に検索語を入れて検索ボタンを押して、自分の収集したい論文を検索していくわけですよね。検索語には、以前のnoteで紹介したキーワードをぜひ使ってください。試しに ”hypertension AND salt”(高血圧AND食塩) と入力して検索すると、こんな結果画面(図1)が出てきます。

図1. PubMed検索結果画面

図1の①には、何報の論文がヒットしたかという数が出てきます。ここでは21366報ヒットしているわけですね。そして、その下に1~順に、ヒットした論文の情報が示されています。②は1番目の論文の情報です。論文のタイトル(表題)、著者名、掲載されている雑誌の名前やその巻とページ番号(書誌情報といいます)などと、その論文の概要である抄録の始めが少し見えます。

ここで得られた情報から、この論文は自分の研究に必要で読むべきか、ヒットしたけれど関係なさそうかを判断するときにまず参考にするのはタイトルです!

●よい論文はタイトルだけで研究全体が見える

論文のタイトルって、わりと長いんです。そして、そのタイトルだけで研究の内容がほぼ想像できるようなものを、研究者たちは「よいタイトルだ!」と考えます。

たとえば、私の執筆した研究論文ということで紹介したこちらのフレイルとたんぱく質の関連を検討した論文ですが

正式な論文タイトルって

“High protein intake is associated with low prevalence of frailty among old Japanese women: a multicenter cross-sectional study”

なんです。これを日本語に直訳すると

「日本人の高齢女性ではたんぱく質摂取量が多い人でフレイルの人が少ない:多施設共同横断研究」

になるんですよね。このタイトルから、たんぱく質とフレイルの関係を調べたんだな、ということが分かります。それ以外にも「日本人の女性が対象者なんだな、だから疫学研究だ(実験研究ではない)」とか「多施設共同とあるから、日本の色々な地域の人が含まれている比較的大人数の研究かもしれないな」とか「横断研究という研究デザイン(研究のやり方)で実施したんだな」といったことまでわかっちゃうわけです。もし自分が食事とフレイルの関連を検討した疫学研究を探していたら、このタイトルだと「読むべき論文」と判断できますよね。こうやって、タイトルから「読むべき論文」を抽出していきます。

ヒットした論文数が数千報なら、こうやってすべての論文のタイトルを眺めて「読むべき論文の可能性あり」の論文を選びます。タイトルだけでは判断できないものはこの段階ではまだ判断をしないで、次の「抄録で確認」の作業に進みます。

●抄録で確認

タイトルだけではこの論文を読むべきかどうか判断つかないなあ、と思ったら、次にその論文のタイトルをクリックしてみましょう。すると、その論文の抄録(Abstract)と呼ばれるページが出てきます。こんなページです(図2)。

図2. PubMed上に公開されている論文抄録

抄録には、論文の内容の概要が書かれています。その内容とは、研究の目的、方法、結果、結論などです。英単語でだいたい250ワードくらい。ここを読むと、この研究がどういう研究なのか、タイトルだけではわからなかったことが見えてきます。ここまで情報が得られると、本文を丁寧に読んで内容を確認すべきかどうか、だいたい判断がついてきます。そして、PubMed上にはここまで無料で公開されているわけです。ありがたい!

●読むべき論文を入手

こうした結果「読むべき」と判断できたら、本文の入手に進みましょう。図2の右上のあたりに示しているように、PubMedの論文抄録のページには、その論文の本文が入手できるページへのリンクが記載されているものが多いです。雑誌のページであったり、その他の仕組みで公開されているものであったり、様々です。論文を手に入れるにはお金が必要な場合もありますが、無料で公開されている場合もあります。大学の図書館の場合には、大学が多くの雑誌の購読料を支払ってくれていて、内部の利用者は個別には購読料を支払わなくてよいことも多いです。もし図書館が定期購読していない雑誌の場合には、図書館に相談すると、提携している図書館のネットワークを通じて論文を入手してくれることもあります。その他、著者に連絡して直接もらう、という方法もあります。この辺りのテクニックは参考書籍(文献1)に紹介されています。

●あとは読む!

こうして入手した論文を読んでいき、どんなことが書いてあるかを確かめていきます。その段階で「思っていた内容ではなかった」「読むべき論文ではなかった」という判断になることもありますが、そこは読まないとわからなかったことなので仕方ありません。こうして、活用しないことになる論文も論文レビューの中では集めて読んで判断しているので、最終的な活用できる論文以外にも膨大な数の論文を読むことになるわけですよね。

●まとめ

論文レビューのために論文検索をしたら、その論文を読むべきかを判断して、本文の入手に進みます。その判断の助けになるのは論文のタイトルと抄録。どちらもPubMedで調べることができます。タイトルや抄録で論文の内容の判断がつくような論文は、丁寧に実施されていて内容も優れている可能性が高いです。こうして必要な論文を手に入れて、論文レビューが進んでいくのです。

収集した論文をどう整理するかのテクニックはこちらも参考にしてください。

【参考文献】
1.村上健太郎. 基礎から学ぶ 栄養疫学研究. 建帛社. 2022

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