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100色の世界を知った私が結婚相談所に行くまでの話①

その人は私に100色の世界を見せてくれた。

それまで私は平凡に生きていた。例えるなら12色のクレヨンで事足りる毎日。毎朝会社に行って、定時で帰宅もしくは友達とガールズトーク。
そして明日に備えて寝る。そんな毎日。

ある日親友から急に電話がかかってきて、
「今晩友達と飲むから来ない?」
基本的にさみしがりの私はフットワークが軽い。

この友達というのは、男女問わず人を紹介することを生きがいとしていることで有名で、彼は平日休日関係なく飲み会を開催し、人のネットワークを着々と広げていた。ひとたび彼に紹介を頼めば即座にマッチングし、数日でご対面となる。

そんな彼がいるということはまぁ俗にいうコンパの類のものだろうと思いながらいざ集合場所へ。
思いのほか大規模で、薄暗いバーを貸し切っていたようでワイワイにぎやかな声が聞こえてきた。
私は親友を探し出し、おどおど中に入っていった。


さみしがりのくせに大人数が苦手で、でもひとりでいるのはさみしい。
矛盾だらけの私は空気を吸うために外に出た。

こっちに向かって歩いてくる人がいた。
ポケットに両手を突っ込んで、跳ねるように歩いている。
猫背で顔は見えない。
そのまま店に入っていった。

これが彼との出会いだった。
私の世界が一変する記念すべき出会いは、お互い認識することもなく、ただすれ違うという形であっけなく終わった。

店を移動し、照明のおしゃれな座敷で向かいに座ったのが彼だった。
猫背を正すと韓国の男性グループにいそうな均整のとれた顔をのぞかせた。

見た目によらず、すごく子どもっぽい話し方で、子どものまんま大人になっ人のお手本みたいな人だった。シイタケが嫌いで、初対面の私に自分のお皿のシイタケを食べてくれと言ったり。この店にあったランプを異常に気に入ったらしく、見つかるまでネットで検索していたり。

普通ならここで運命の出会いだとか一目で恋に落ちたとか、そういう展開が待っているはずだがそうもならず、一応みたいな形で連絡先を交換した。

数日後、メールが届いた。
しかも長文。かなりの長文。

とても一般の大人が書いたとは思えないような、一言で表すとそれはそれは「かわいい」文章で。今思えばそこそこ女慣れした男のおちゃめ?な文章で。今度グアムに行くからお土産は何がいいですか?との内容だったのだけれど、もう会うこともないだろうと思った私は「チョコレート」と超絶無難な返信をした。

つづく。








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