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日々のエッセイ

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2019年から湖畔暮らし。自然、家族、ヤギ、トリ、仕事、そして考え事の日々。
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2019年11月の記事一覧

寂しさの絶頂

寂しさの絶頂

住み慣れない町での運転は苦手だ。

派手にかすれた地面の塗装で矢印が見えないなんてことがあると、なおさら不安になる。

先日、引越ししたての町を運転する機会があってハラハラした。雨が降っていた。

少しでも煽られたりすると不安は頂点に達し、気が付けば半泣きだ。

***

小さい頃、何か習い事をしていた人なら経験があるかもしれない。

例えばわたしが通っていた塾にはいくつかのクラスがあって、成績順

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たき火香る髪

たき火香る髪

うちの庭は広い。庭というより、もはや山に近い。

小高い丘の凹み部分に家が建っているイメージだ。

そんな訳でとにかく庭の管理に時間をかける必要がある。竹やぶ、ささ、落ち葉、いろんな植物の相手をしないと追いつかない。そのうち葉っぱに飲み込まれてしまうかもしれない、!

「とにかく火を燃すところを作んないとだめだ。」

そう教えてくれるのはお隣のおじさん。

うちにはちょうど、大谷石(おおやいし)と

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愛する瞬間は突然やってくる

愛する瞬間は突然やってくる

田舎暮らしにマイカーは必須だ。

車を持っていなかったわたしは、遂にマイカーデビューすることになった。

「まだ一件しかみてないけど大丈夫?!」

下見のつもりで訪問した中古車屋さんに、夫とわたしが同時に目をとめた車があった。まだ車を探し始めて一件目だった。

心配するわたしに夫はポジティブな返事をした。

「もうこんなに可愛い車ないって!」

うっすらとイメージしていた自分が乗りそうな色や形とだ

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想像する時間

想像する時間

お隣のおじさんに言われたことを考えている。

「こんな大きな屋敷に一人でいて寂しくないの?」

夫が朝から夜まで仕事でいないことを知っていて、そんな風に思ったそうだ。

おじさんは夫婦二人暮らしで、60歳を超えているけれど、未だに家に一人でいると「寂しい」と思うことがあるそう。特に、雨降りの夕方に寂しさのピークを迎えるらしい。

そういえば日中一人のときって、自分はどんな感情で過ごしているのだろう

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3年かかる贈り物

3年かかる贈り物

柿の木をプレゼントでもらった。

記念になるからと、ご近所さんが持ってきてくれた。

「何年くらいで実がなりますか?」

3年と言われて、長いのか、短いのか分からなくなったけど、数年後の楽しみができて、夫と喜んだ。

***

引越し祝いで「木」をもらったのは初めてだ。

一戸建ての家を新築すれば庭もあるし、木をもらう機会もあるのだろうけれど、これまででそんな経験はない。

そう考えると引越し先が

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見つめるものの先にある後味

見つめるものの先にある後味

朝夜が寒くなってきた。

まだ11月なのに電気毛布とか、ガスストーブの心配ばっかりしている。

「ねえ、見て!」

夫と夜遅く帰ってきて、車から降りたところだった。

わたしたちの目の前に広がっていたのは、満点の星空。

言葉で書いてしまうとたったの5文字なんだな。あんなに大きな空と宇宙と光なのに、「満点の星空」って。

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都会に住んでいた頃は星なんて見えても、グレーの空にちょぼちょぼくら

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自分をかくす場所さらす場所

自分をかくす場所さらす場所

先日お引越しをした。

すでに田舎で暮らしていたけれど、マンションだったからお庭がなくて寂しいなと思っていた。

「もうここがドンピシャだよ!」

しばらくの間、新居になりそうな古民家を夫とめぐっていた。そしてついに出会った。

畑ができて、動物も飼える。このおうちに住むと着物を身につけたくなりそう。ちょっと懐かしい気持ちが芽生えてくる。

***

引っ越してまずやったことは、ご近所さんへの挨拶

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