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ブランディングを人に例えてみると。

今日は「ブランド」を人に例え、ブランディングデザインでコミュニケーションがどう変わっていくのかお伝えしたいと思います。


ブランドと言えば?

「ブランド」と聞いて思いつくものは何ですか?エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネル…どうもアパレルのブランドを思いつきがちです。「ブランド物」なんて言いますね。それにはファッション業界のデザイン戦略(前回記事「『モノのデザイン』と『課題解決のためのデザイン』の関係。」)が関わっているのかもしれません。

ブランディングは、紀元前、古代エジプト人が自分の家畜に焼印を押したことに起源を持つと言われています。自分の家畜が他人の家畜と混ざってしまっても見分けがつくように印をつけていました。この識別のための行為が時代とともに変化し、現在のブランディングになったと考えられています。

いろいろな「ブランド」「ブランディング」の定義

では「ブランド」「ブランディング」とは何なのか。4人のブランディングデザイナーの定義を例に見ていきましょう。

「くまモン」や「中川政七商店」のブランディングを手がけた水野学氏は次のように語っています。

「ブランドとは“らしさ”である」
『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』 水野学

「今治タオル」や「ユニクロ」をブランディングデザインした佐藤可士和氏の定義がこちらです。

「ブランディング=本質的価値×戦略的イメージコントロール」
『今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略』 佐藤可士和、四国タオル工業組合

「キリン一番搾り」や「世界のKitchenから」、「D-BROS」を手がけてきた宮田識氏はこう語っています。

「僕が考えるブランドとは、あらゆる面で差異化され、揺るぎないイメージを持つ存在」 
『DRAFT宮田識 仕事の流儀』 宮田識

最後に1940年代に「ブランディング」を発明したというウォルター・ランドー氏の言葉を見てみましょう。氏が設立したランドーアソシエイツはマイクロソフトやFedEx、Volvic、日本郵政グループなどのブランドをデザインしています。

「製品は工場で作られるが、ブランドは心の中で作られる」
『事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開』 ランドーアソシエイツ

人によって様々な定義がありますね。本の詳細はここでは省きますが、もし興味を持たれた方はぜひお読みください。文末に本の情報をまとめております。


さて、私たちSKGはブランドを次のように捉えています。

「ブランド=人」

人の「名前」がブランド名で、「顔」がロゴ「信念(心)」はブランドコンセプトにあたります。

その人が「作るもの」は製品やサービスを指し、「行動」はどのような製品・サービスを作り展開していくかという、ブランドコンセプトを実現する方法や姿勢と言えるかと思います。
またその人がお客さまや世の中と交わす「約束」も重要です。「ブランドプロミス」と呼ばれ、ブランドが保証している品質や価値を指します。

そして誤解を恐れずに言うと、服装や髪型などの見た目を考えることがアートディレクションであると考えています。


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すべてが「信念」に通じていることでブランドは強くなる

私たちは、ブランディングデザインとはブランドを作り、維持することであると考えています。そしてブランディングデザインにおいて、ブランドコンセプトである「信念」を「人そのもの」、すなわち内面外面すべてで体現することが肝要であると考えています。

例えばAppleを「人」に例えてみましょう。この人は世界を変えたいという「信念」を掲げています。一度見たら忘れない「顔」をしています。そしてユーザーフレンドリーな製品を作るという「行動」に出ます。この人が「作っているもの」はMacやiPhoneです。

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お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、サイモン・シネック氏の「ゴールデンサークル理論」と共通している点があります。その人がどのような製品をつくり、どのようなサービスを運営しているのか、すなわち「HOW」は「信念」=「WHY」を実現するためのものなのです。そしてその人が「作るもの」=「WHAT」もまた、その人の「信念」を具現化するものであるべきです。

ブランドに関わるすべての要素が「信念」と一貫性を持ち、「信念」を体現していれば、そのブランドは自ずと広く正確に認知されていく強いブランドとなります。たくさんの人やメディアを介する伝言ゲームのように不確実性をともなって伝わっていく場合でも、強いブランドはブレることなくどこまでも正しく認知され、定着へとつながります。



ブランドでコミュニケーションを加速する

ブランドと他ブランドの違いはどこにあるのでしょうか?それは「行動」、すなわち「信念」を実現するための方法や姿勢にあります。ブランドは「行動」が「差異化」されているのです。

例えば、Appleは「ユーザーフレンドリーな製品や体験の提供」で他ブランドとは差異化された価値を生み出しています。またエルメスも「馬具製品を作っていた歴史、技術力の継承、最高の素材を追求」という「行動」により、他ブランドと「差異化」されていると考えられます。

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そしてブランドの認知を加速させるのが「共感」です。差異化されたブランドがターゲットにとって魅力的で、ターゲットの共感を得られるものであればブランドはより強いものとなります。

私たちは魅力的な人と友達になりたい、共感できる信念を持つ人を応援したい、そして誰かに教えたい、もっと広めたいと感じます。共感されるブランドは、周囲とのコミュニケーションの速度と深度をより増すことができると考えられます。


次回、私たちSKGのブランディングデザイン事例を交えながら、ブランディングデザインで社内外におけるコミュニケーションを高めていくことについてお伝えしたいと思っています。

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撮影風景 写真:bird and insect


文中で登場した本はこちら


一部、代表助川による京都造形芸術大学での特別講義「ブランディングデザインの実践」の内容を抜粋・編集してお送りしました。

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