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SARS-CoV-2 ワクチン開発競争(2020/4/28) - Nature誌Webより

 英国の著名科学論文誌 Natureに 2020年4月28日付で新型コロナ感染症ウイルスのワクチン開発競争に関する記事("The race for coronavirus vaccines: a graphical guide")が掲載されています。8種類のワクチン開発に関するアプローチ(デザイン)がたくさんのグラフィックを用いてわかりやすく解説されていました。

 「ワクチン基礎:我々が免疫を獲得するプロセス」、「8種類のアプローチ」「アプローチの詳細」「Industry trials」の順番で丁寧に説明してくれています。8種類のアプローチとは、Virus vaccines(Inactivated / Weakened)、Viral-vector vaccines(Replicating / Non-replicating)、Nucleic-acid vaccines(DNA / RNA)、Protein-based Vaccines(Protein subunit / Virus-like particles)です。

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出典:"The race for coronavirus vaccines: a graphical guide"

 さて、このNatureの記事によると世界中の企業や大学の研究チームにより90以上のワクチン開発が行われており、少なくとも6つのグループが既に安全性試験を開始しているそうです。(クリニカルトライアルまで進んでいるものについては、2020年4月19日に書いた記事「新型コロナウイルス感染症のワクチンはいつ完成するのか?」とおそらく大きな変動はないかと思います。)

 ちなみに、スタンフォード大学中内研究室の新妻耕太さんがYouTubeへウイルス感染の基礎知識をやさしく解説する動画教材を公開されています。「ワクチン基礎:我々が免疫を獲得するプロセス」と異なり、専門用語を使うことなく日本語で説明されているので、素人の私にもとてもわかりやすかったです。

 京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥先生が公開されている「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」でも新妻さんの動画が紹介されておりますので、山中先生からみても良いコンテンツなのでしょう。

新妻免疫塾ウイルスとは?

 「8種類のワクチンのターゲットと目的」「それぞれの詳細」についてはNatureのページを直接覗いてみて頂けたらと思います。それぞれの専門用語が簡単ではありませんので、メカニズムについては素人が正確に理解しきれるものではないですが、新妻先生の動画を視聴してから読んだところ、それなりに理解が進みました。

 最後に末尾に掲載されている図だけ転載します。研究の70%以上がPrivate and industrialによって行われ、ワクチン開発の半分近くは北アメリカ(米国・カナダ)で実施、それぞれ18ヶ月以内の完成を目指しているとの事です。

 この18ヶ月以内というのはそれぞれの研究スタートから18ヶ月なのか、治験開始から18ヶ月以内なのかはわかりませんでしたが、おそらく前回記事でご紹介させていただいた、Developing Covid-19 Vaccines at Pandemic Speedに掲載されているDifference between Traditional Vaccine Development and Development Using a Pandemic Paradigm.に一定程度従った場合のタイムラインの事なのだと思います。

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出典:"The race for coronavirus vaccines: a graphical guide"

 ワクチンが完成しない限り、人間の移動は引き続き大なり小なり制約される可能性が高い可能性が様々な研究により示唆されており、特に国境をまたぐ移動についてはまだまだ方向性が見えない状態です。いま我々にできることは前線を守ってくださっている医療関係者へ感謝し、医療研究者へ声援を送りつつ、社会的距離(ソーシャルディスタンス)を守り、なるべく経済活動を止めないよう自宅から貢献していくことしかありませんね。

参考


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