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未来の行政書士試験受験生へ送る受験記録(R5.記述抜194点.最終242/300点)


はじめに

 R4の1度目の行政書士試験への挑戦は148点と無残にも大敗した。反省と改善の結果、2度目の行政書士試験で記述抜194点、最終242点と合格点180点を上回る成果が出せたため、ここで1年半に渡る行政書士試験受験生活に終止符を打つこととなった。後学の参考になるかもしれないと思い、ここにその受験記録を書き残すことにする。全体で35,000字程度と非常に長くなるので、目次から各項目にとんで読むことをおすすめする。
 一応、行政書士試験での経験を書き残した記録にはなるものの、本番直前期の過ごし方や本番当日の過ごし方などについては、他試験にも通ずる部分はあるかと思うので、ちょっとした読み物としてお読みいただければ幸いである。

R5(2023年)本試験結果


R5.試験最終結果


R5.本試験自己採点と思考過程の記録

 試験当日は午前中から綿密な行動プランを組み、試験問題の難易度以前の試験を受けるにあたって懸念される負け筋を可能な限り排除し、徹底的に『予定通りに』動いた結果、予定以上の結果が得られることとなった。
 では、なぜこのような結果を得ることができることができたのか?そもそも行政書士試験とは?というところから、私が今までに意識していたことや実際にやってきたこと、1度目の受験の話や2度目の受験後の結果を待つまでの間の出来事なども含めて、約1年半の期間をいろいろと振り返ってみることにする。

行政書士試験の難しさ

そもそも行政書士とは

 行政書士とは国家資格の一つであるが、一体どのような職業なのか?

行政書士は、行政書士法(昭和26年2月22日法律第4号)に基づく国家資格者で、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成、行政不服申立て手続代理等を行います。

日本行政書士会連合会HPより


 語弊を恐れずにひらたくいうと、お役所に許認可を申請するために必要となるような公的な書類作成を軸として仕事をしている職業である。日本には法律が約2000以上もあり、条例の数は不明。許認可の数は1万種類以上はあるといわれている。行政書士といってもできる仕事の幅があまりにも広すぎるため、基本的にそれぞれが専門分野や得意分野をもつこととなる。また、書類を作成するにあたっても、法律的な知識は勿論、地域の事情や状況に応じた個別の事情を勘案する必要があり、単に書類作成能力が求められるだけでなく、人の話を聞いてわかりやすく説明する力も必要であり、一人でできないことも多いため人と人をつなぐ人脈もまた必要そうである。仕事の幅の自由度は非常に高く、求められる能力や知識も高い職業と言える。
 自由な反面、楽な仕事ではなさそうである。徐々に行政書士法人や使用人行政書士と呼ばれる他の登録者又は行政書士法人にて働く行政書士こそ数は増えてはきているものの、現在でも9割ほどは個人開業のワンマンアーミーである。基本的に一人で仕事をするということは、経理や営業など基本的にいろいろなことを自分でする必要がある。仕事も何らかの方法で探してくる必要があり、黙っていても給料が出るわけではない。
世の中が変化するとどんなビジネスが強いかは変わってくるし、それに伴って法改正も行われていく。どのように時代が変わっていくのか、変化に伴ってこれからどのようなことが起きると予測されるのか、今までの歴史の流れを踏まえて時代の変化をみて動く能力も求められる。そういった点を踏まえた上で、日々研鑽し、自ら機会を捉え、ビジネスを行っていく。そこによろこびを見出していける人が向いているといえるし、そうでないとやっていけないであろう仕事である。
 行政書士会登録者数は2023年12月末時点で約52000人、毎月約100~400人が新規登録し、そして約100~200人が廃業又は死亡等により撤退している。近年は全体として増加傾向にあるようだ。約5万人を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれであるが、士業の中では税理士に次いで2番目に多い。ちなみに日本のコンビニの数が約56000ー57000件、伊万里焼で有名な佐賀県伊万里市の人口が約52000人のようだ。
 そして行政書士となるためにはまず資格が必要となる。資格を得るためのルートはいくつかあるが、行政書士試験に合格するルートが一般的である。他にも弁護士・公認会計士・弁理士・税理士といった一定の他士業の資格を所持するルートや、一定の公務員実務経験で資格が得られるルートも存在する。資格を所持した上で破産していない等の一定要件を満たした者が行政書士会に登録申請をして登録されることで、ようやく行政書士として名乗ることができるようになる。

行政書士試験の概要と私見

 いつ頃受験したかによって行政書士試験と行政書士への認識は相当変わるようだ。40年以上前に法律系の資格試験に挑まれていた親戚の話を聞いてみたことがあったわけだが、当時は行政書士試験の合格率が都道府県で50%前後だったようだ。ちょっと勉強すれば誰でも受かる試験だから、取る価値ないしやめときとも言われた。そういう時代もあったので、年配の人で相当昔々に法律系の資格を取得されている方からすると、割とあまりたいしたことがないという認識をされている方がたまにおられたりする。ただし、これはあくまで昔々の話である。

 近年の話をすると、合格率は約10%前後と、決して容易い試験とはいえない。2023年試験だと受験率79.03%で合格率が13.98%だったようだ。直近10年では2番目に高い水準とはいえ、それでも80%以上の人間が突破できなかったということになる。
 毎年7月中旬過ぎから約一か月程願書受付、11月第二日曜日に本試験が年一回が行われている。年一回の試験を突破できればそれで合格ではある。試験範囲は基礎法学、憲法(判例や条文解釈含む)、俗に行政法という括りにされている行政手続法や行政事件訴訟法等、民法、会社法、一般知識、他にも別の法律からも出題されることがある。2024年から試験範囲の表記が変わり、戸籍法や行政書士法等も出題されやすくなるようだ。とにかく範囲が広く、深い。

 以下は、2023年実施分までの問題内訳である。2024年度から試験範囲の法令科目に若干の変更があるため、詳しくは行政書士試験センター等のページを確認していただきたい。

基礎法学    2問(問1~2)
憲法      5問(問3~7)
行政法    19問(問8~26)
行政総論    3問(問8~10)
行政手続法   3問(問11~13)
行政不服審査法 3問(問14~16)
行政事件訴訟法 3問(問17~19)
国家賠償請求法 2問(問20~21)
地方自治法   3問(問22~24)
総合問題    2問(問25~26)
民法      9問(問27~35)
商法      1問(問36)
会社法     4問(問37~40)
多肢選択式 憲法1問行政法2問
  1問当たり20択の4カ所穴埋めが3問
    (問41アイウエ~問43アイウエ)
約40字記述式問題 行政法1問、民法2問
        3問(問44~46)
一般知識   14問(問47~60)
政治経済社会  8問(問47~53)
情報関連・個人情報保護法 4問(問54~57)
文章理解    3問(問58~60)

※ 試験時間 13:00~16:00(3時間)
※ 途中飲食禁止
※ トイレの際は挙手の上試験監督付き添いにて可

 300点中180点以上をとれば合格ではある。これだけみれば6割とれれば合格と思うかもしれない。しかしながら、そう簡単にはいかない。
最大の原因が、40字程度の記述問題3問(20点3)である。行政法から1問、民法から2問、膨大な範囲のどこから出るかわからない上に、部分点含めて採点基準が公開されていない。択一問題の平均点によって採点基準が変動するともいわれている。それゆえに合格率が10%前後と世間的には狭き門となっている。基本的な知識が問われることが多いとはいえ、年によっては細かい条文知識や判例知識が問われることがあり、対策が極めて困難である。
 そのため、多肢選択式1問2点の12問と1問4点の五肢択一(5択クイズ)54問計240点からいかに180点に近づけるかがカギとなる。ここで180点をとれなくても、記述問題で20~30点取って合格、という方が合格者としては一般的なようだ。理論上記述で60点満点近くを取って一発逆転することも可能ではあるが、SNSをみる限り珍しい事例のようだ。ただし、2023年試験では記述問題が三問ともに少し書きにくかった部分もあったものの、割と王道の部分だったこともあり、記述ホームランで一発逆転された方をタイムライン上でよくみかけた。記述抜き120点代からの合格事例も目にした。ただ、これは問題に左右される部分なのであくまでそういう事例もあったという点には留意しておく必要がある。
 試験時間は3時間と非常に長いが、多肢選択記述式問題含む60問あり、解く順番や時間配分をあらかじめ戦略を立てて解いていかないと、処理速度に自信のない人はあっという間に時間切れになる。年一回しか受験機会がない中での極度の緊張、注意事項説明時間含む約3時間半一切の水分補給不可という、地味ではあるが実際置かれてみると非常に過酷な試験である。実際の本試験では、上記等の事由や周囲の環境により本来の力を発揮できない事態も十分想定され、その対策も必須である。なお、律儀に問1から順番に解く必要はない。解く順番も戦略の一つであり、自分の解きやすい順番で解いてもよい。

 試験対策といえば過去問であるが、行政書士試験対策においても勿論有効であるし、当然その活用は必須といってもよい。しかし、過去に法律関係の勉強の経験もない状態で、とりあえずただ漫然と過去問や一問一答問題集を解き続けるだけではまず受からない。対策方法を間違えたり対策自体が甘かったりすると、普通に受からない。士業試験の中では比較的やさしい部類であると言われているが、なめてかかって楽に突破できるような試験ではなく、難しい試験であることには変わりないということは肝に銘じておく必要がある。法律初学者であれば特に可能な限り1年程度は専用の勉強期間をみておくのが望ましい。年1回しか試験がない都合上、合格まで数年単位でかかることも珍しくはない。
 本試験の問題は、過去に未出題の法律や判例の奥底から引っ張ってきたかのような問題もたまに出るが、基本的には過去問われた知識をその問いかけ方の角度をかえてきいてくるものである。そんな変化球あるんか?!ということもざらに起こる。よって問題の文面を覚えてこの場合はこう!という解き方をしている限り、イレギュラーな問われ方をされた途端に太刀打ちできなくなってしまう。私は1回目の本試験時を終えた段階でようやくそれに気づくことができた。一問一答は知識の確認としてはもちろん役には立つが、それができるからといって必ずしも本番で勝てるわけではない。当然ながら多くの問題が初見である。基本的な知識をどのような角度から問われてもブレずに解けるだけの基礎力、未知の問題でも手持ちの知識で対応する現場力、時には潔く見切りをつけて捨てる判断力までもが問われる。

1回目の挑戦の振り返り

私の場合の受験環境

 詳細は省くが、人生の転機が訪れたため2022年の6月末でサラリーマンを辞め、この行政書士試験に挑むことにした。自分の人生を見つめ直してみると、人から『相談』を受けて自分の知識や経験をもって課題を解決していく、そういう仕事が好きなんだと実感した。『相談からさまざまなビジネスへ』、これが私にとっての行政書士を目指す原点である。

 事前で調べていた限りでは、独学でもいける人はいけるらしい、と。もともと現代社会・地理は得意なほうだったし、独学でもいけるかもしれないだろうと、ひとまずはしばらく独学でやってみることにした。本格的な勉強を開始したのは2022年7月ぐらいのことであった。

私の場合のスタート環境
・ 長年勤めた会社を退職して無職専業で勉強。
・ 日頃からニュース等をみる習慣はあった。
・ 大学では経済等を多少かじった程度。
・ 体育会系出身、他分野でもストイックな人々を身近に見てきた。
・ 本格的な法律関係の勉強はこれまで未経験。
・ 子供はいるが、幼児期でも受験期でもなくそこまで手がかからない。
・ 事実上、行政書士に転職する前提での挑戦。
※ 貯金が尽きるまでに合格して登録したうえで、ある程度軌道に乗せる所に至るのが目標。家族の稼ぎは頼れない上、親兄弟にも当然頼れない。

 こんな具合で、働きながら勉強をされている方に比べれば非常に勉強時間の捻出は可能な恵まれた環境ではあった。ただし結果が出せなければ人生プランを大きく変更せざるを得ず、引っ張ったとしても二度目の挑戦までと決めていた。以上の条件を前提に話を進めていくことにする。

一回目の受験の頃から続けていてよかったこと

  • 勉強時間は計測しない。
     時間をかけることは当然必要ではあるが、何時間やったかは正直あまり意味がないと思っている。どこまでわかるようになったかのほうが重要である。ざっくりいえば、通常時で4~6時間、ほとんど何もしない日もあった。なお、起きている間はひたすらしている日もあったが、後述のように夕方はニュースもみていたし、時々Xのタイムラインは確認していたりなど、悪く言えば集中していないし、よくいえばマルチタスクであった。勉強を『勉強』と捉えず、『経験』や『学び』として捉えていた部分はあると思う。

  • 模試は可能な限り会場で受け、科目ごとの終了時刻を毎回必ずメモする。
    3時間は長いようで短い。試験時間内に解き終われなかったら元も子もない。かといって早く解いても正解していなければ意味がない。とにかく一定の解答スピードは必要である。どの順番でどのように解いて、どれだけの時間で終了できたかは毎回試験問題の表紙か裏表紙に記載していた。1回目本試験受験時でも15:35には一巡目終了させてはいて、見直しの時間を可能な限りゆとりをもって捻出しようとしてはいた。
     模試はたしかにお金と時間がかかるものではあるが、真剣勝負をした結果どうなったのかを分析するのを楽しく感じていた。2年目時には安定して記述抜き170点以上記述込み200点をだいたいとれる程度にはなっており、ある程度の基礎があったようにみえた。以降は正答率の高い問題の落としを可能な限り減らしたり、思考低下からくるミスや不意なトラブルのケア等を徹底的に行うにはどうすればいいのかを考えていた。

  • 条文素読(2回目受験時はポケット六法で実施)
     素読自体は1回目時2回目時どちらもやっていた。一回目受験のときはテキスト付属のものを使っていたが、これは省略されている条文がそれなりにあったのを感じて使用したのは1回目受験時までであった。2回目に向けて伊藤塾に入った際にオススメされたポケット六法を私もお勧めすることにする。ポケットとは名ばかりで十分分厚い…。重要な条文は勿論だが、たまにみかける細かい条文に感動を覚える、これが結構気分転換になったりする。
    e-Govの法令検索も同時に活用した。こちらは目が疲れやすくなるのがデメリットであるが、文字検索がしやすい点は非常に大きなメリットである。縦書き横書きを選ぶことができつつ、ダウンロードも可能であり、クラウドのドライブに突っ込んでおいて外出時に読む等もしていた。

  • 秒トレアプリの活用
     おやすみ前等スキマの時間にこれは本当におすすめ。忙しい時間のない人は特にこれはいれておいてほしい。もちろん私のように時間を十分に取れる人にも本当に使える。一度買ってしまっても2年目もそのまま継続してアップグレードされていた。非常に安いので、導入しない手はない。

    資格対策アプリ 秒トレ「行政書士」 | 秒トレ (byoutore.com)

    なお、行政書士以外の資格試験のバージョンも存在するようだ。

  • googleスプレッドシートの活用
     模試の結果、模試の反省点、本試験の自己解答の記録、自分で調べてまとめたものなどを書き留めたり記録するなどした。パソコンとスマホで同時に開いて同時に編集ができる点が大変すばらしい。2年目は模試の分析精度をさらに向上させた。スマホだとアプリを落とす必要がある程度で、あとはいずれもgoogleアカウントで入ってしまえばすぐに使える。スマホだと小さくて入力がしにくいので、極力入力はパソコンを使うようにしていた。合格後の実務を見越して、タブレットを購入しておくのもよかったかもしれない。

  • 趣味の時間は減らすことはあっても無理に封印しすぎない。
     好きなことから得られる養分もあるということである。
    一年というのは短いようでわりと長く感じるときもあり、気分転換でやってみたことから思わぬ収穫があったりもする。すべての物事はつながっている。これは絶対に忘れてはいけないと思う。

     
    2022年7月~8月は日中は勉強、夜中は趣味のポケモンのランクバトルをやっていた。ポケモンのランクバトルの話は別記事にいくつか記載しているのでお暇があれば是非。最早ただの遊びではない。ある程度コンスタントに勝率を上げていくためには、試合の振り返りは勿論のこと、環境考察も必要であり、試合中でも時に強気の択を選ぶ必要もあり、PDCAとメンタルの修行として考えても大変すばらしい。実際好成績を残されているエリートトレーナーは学生さんとおぼしき方や若い方が多かったりもするが、社会人で本業もしっかりされており仕事もとてもできそうとみえる方も多々おられる。
     
    専業だからこそそれが可能であったのもあるが、そもそも残りの人生を好きなことをやると決めてこの受験に挑むことにしたわけで、それを完全に断ち切るのは本末転倒と考えていた。8月は東京まで単身ポケモンの対戦オフ会の遠征も敢行したりもしていた。とにかく直前期になればそれどころではない気分になってしまうものの、個人的には8月ぐらいまではたまに趣味や寄り道をいれる程度であればむしろプラスになると思っている。漫画は1年目2年目直前期を問わず寝る前に少し読み、週に3,4本程度は深夜アニメを録画してみていた。本試験の朝ですら1本録画したアニメをみて試験に向かったぐらいである。

  • Twitter改めXで受験垢をつくる
     賛否両論あるところかもしれないが、これは本当に良い刺激となった。半ば引きこもりに近い状態で勉強していたわけで、貴重な外界との交流手段であった。ときどき予備校の先生が一問一答をしてくれていたり、書籍の紹介をしてくださったり、わりと考慮しておく情報が多い。フォーサイトや資格スクエア森T先生、そして伊藤塾の藤田先生の一問一答にはよくお世話になった。働きながら、家事育児をしながら、さまざまな環境でスタート地点も途中経過も多種多様な人が本試験に向かって勉強していることが改めて理解できる。他の人がわからなくて煮詰まっている問題を見て、なるほどと勉強になることになることもしばしばあった。他の人から学べることはとことん学び、吸収すべきである。2年目受験時は本試験前まではあまり開かれることはなかったが、本試験終了後は頻繁にスペースが開かれることが多く、さまざまな事例の話を生で聞くことができて非常によかった。見当たらなければ、自ら音頭を取って少し時間を取ってみるのもありかもしれない。

     他の人と比較して落ち込むことはあるかもしれないが、気を取り直して『どうすればそのようにできるのか?』を愚直に考え、調べ、必要に応じて話を聞いてみて、できることを実行すべきである。
     周りを見れば自分の上位互換の方が露骨に目に入ってしまい、自信喪失の元になりがちという話は他の分野でもよくある話である。Twitter改めXのタイムラインとは、世間のごくごく一部である。みえてなかったものが可視化されるということはいい面も悪い面もあるということだが、みえなかったものがみえるからこそ、『自分ならその時何ができるのか?何ができたのか?どんな気づきが得られたのか』これを常々考えてほしいと思う。
     私自身は癖が強すぎるためか好き嫌いが極端に分かれるタイプの人間らしく、昔は生きづらいと感じたことは何度もあったりした。それでもなんやかんや今まで生きてこられたのは、『自分の今いる場所が自分の居場所』、これを絶対に失わないようにしていたからだと思っている。士業の先生方をみてみると、やはり確固たる自分の芯の部分をしっかりとお持ちの方が多いと感じる。行政書士受験をする理由は人それぞれで、皆が皆合格したからといって独立開業をするわけではない。いずれするかもしれないでも受験の動機としては十分だと思うが、今後士業のような個人事業主をするのであれば、自分の芯は持たざるを得ないと感じるところである。
     ただ残念ながらタイムラインをみてみると、自分の芯がなかったり自分の芯を信じられない他責思考の人や妬む人もいる。これは受験に限らずどの世界でも共通して言えるようだ。直近でみえている部分だけの事象の結果だけをみて、短絡的に批判する思慮の足りない人はどこにでもいるようだ。世の中は厳しいものだし、自分のやり方や経験が通用しないこと等ざらにあるわけで、気持ちが荒んでしまうのはわからないでもない。趣味の世界のほうでもそういうものはさんざんみてきたし、この試験を突破されて既に開業されている先生ですらそういうことはあるようだ。人間なので好き嫌いはあるので、そういうものであることは忘れないようにしておきたい。
     ただし、メンタルへの不必要なダメージが無視できないと感じた場合は一旦離れるのも時と場合によっては必要である。

  • 夕方と晩のニュース、ゴールデンタイムのクイズ番組は可能な限り視聴。
     一般知識の足切りが怖いという声をたまにきくが、夕方・晩のニュースをみる習慣をつけておけばむしろ点を取りに行く科目となる。模試だとあまりにも細かすぎる知識をド直球でよくきいてくるので、あまりにも問題との相性に左右される難所のイメージがあるのは無理もない。
     特に夕方は裁判事例や行政の関連するニュースは多めだった印象がある。ある程度勉強していくと、この事例の場合は次に打つべきはこの手続きか、と脳内で訴訟選択問題が繰り広げられることとなる。実際にニュースでの解説が本当に正しいのか?ネットをみればそれが正しいのか賛否両論あるのか、ちょっと調べればある程度わかる。ただ鵜呑みにするのではなく、中立的な目線、あるいは批判的な目線でみて自分で確認をすることが大切である。
     ゴールデンタイムのクイズ番組もなかなか良い。子供に見せているときには『この知識があったから、クイズに正解して100万円もらえる日がくるかもしれない』などといつも言っている。無理に覚える必要がないとはいえ、頭の片隅にあるわりと細かい知識が唐突に役に立ったりすることがある。

    『すべての物事はどこかでつながっている』

    これもそこまで長くない人生の中で得た大切にしている教訓である。

  • Youtubeでの無料講義視聴は最大限活用する。
     
    Twitter改めXの部分でも少し触れたが、大手予備校の先生がyoutubeで無料の講義を公開されていたりする。特に9月~11月のいわゆる直前期は動画が多くなる。実際直前期は出題予想や一般知識関連の情報は非常に参考にさせていただいた。出題予想も出題サイクル等の一定の仮定の元に予想されている。プロの講師が根拠立てて仮説を立てて説明している部分については、そのままでるかどうかはさておき、もし出されても大丈夫なように基本事項は是非おさらいしておきたいものである。
     特に2回目受験時にメインでお世話になっていたのは伊藤塾ではあるが、他にも辰巳法律研究所の山田先生のフレームワーク汎用的な記憶方法や過去のデータに基づいた分析手腕は非常に参考にさせていただいた。アガルートの田島先生の直前期の一般知識、LECの野畑先生の一般知識は大いに参考になった。
     これから勉強される方であれば、過年度で9~11月にアップされたものをみて話を聞いてみて自分の肌に合うかどうか確認してみるとよい。中には本当にこれを無料でいいんですか?というものもいくつかある。十中八九宣伝も兼ねているわけだが、実際私もそれをみて決めた。
     ただし、たとえ大手の予備校の世間的には人気のあったりする講師であっても、自分にはどうも肌が合わないなと感じることはあったりするので、いずれにせよ一度聞いてみるのがいいだろう。

    ※ なお、通年を通して非常に有用だったyoutubeチャンネルがこちら

    【行政書士受験対策ちゃんねる】たかピッピの一問一答部屋

    ひたすら問題と解答を垂れ流す動画で、ちょっとした一問一答を垂れ流ししたい時に本当にお世話になった。


一回目本試験までの模試とR4本試験結果

R4分フルスペック模試と本試験結果一覧


記述4点をみて、金輪際記述の点数に祈らないと心に決めた。


20220911_伊藤塾公開模試1回目
20220916_LEC公開模試2回目
20220925_TAC公開模試1回目
20220930_LECファイナル模試
20221009_伊藤塾公開模試2回目
20221015_LECヤマ当て模試
20221016_TAC公開模試2回目

R4本試験自己採点結果


一回目の本試験受験までの振り返りと反省

 本屋で買った書籍一式で挑み、模試の復習をもって少しずつ成長を重ねて入った。憲法の点数が今とさほどかわらないのは、判例集を読み込んでいたからであると思われる。TACの判例集、非常に分厚いが本試験未掲載の判例も掲載されており、会社法以外は少なくとも2周はしていた。ただ、テキスト自体が非常に薄かったせいか、基礎知識がそもそも足りていない論点があったり、そもそもや有名な判例の判旨も抑えきれぬまま、何より基本事項への理解も安定しているとは言えない突貫での状態で一回目の本試験を迎えた。
 ちなみに付録で六法がついているテキストが本屋で売れられているが、民法や地方自治法の全文が掲載されているわけではなく、しれっと省略されていたりして正直オススメしない。模試で知らなかった箇所を復習しようとして初めて条文が省略されていることに気が付いた。法令は毎年どこかしら更新されていたりするわけで、特に初学者のうちは最新版のちゃんとした六法を買うことをお勧めする。個人的には有斐閣のポケット六法は試験範囲内の法律は網羅されているのでお勧めである。

 そして一回目の本試験で現実を目の当たりにした。試験が終了した瞬間、過去問をただ数多く解くだけでは絶対にこれは無理だと悟った。そして憲法の問題の初見での対応の困難さを骨の髄まで体感し、これは二度と序盤に解かないと心に決めた。憲法で我を失い、一応時間内には解き終わり二巡目の見直しをしたものの、極限状態で正確な知識を叩き込めていなかった上に半ば錯乱した状態で択になった箇所の解答書き換えを行い、最後の20分で4問(16点)自殺点を築くこととなってしまった。
 さらに記述問題は行政法の訴訟選択の問題で、被告と要件は正解していたが訴訟選択を誤った。民法も上記の通りの解答であるが、その結果入った得点はたったの4点。記述3問でたったの4点であった…。論点がずれると大幅減点どころか雀の涙の加点しかない。

  • 『頭ぶん殴られても絶対に正解に辿り着ける圧倒的基礎力をみにつける』

  • 『記述の部分点狙いに絶対に祈らない。論点間違いは致命的。
     記述点は最早20or0までありうる』

  • 『基礎法学・憲法は最初に解くのはあまりにもリスクが甚大。
     最早序盤に目にいれないほうがよいまである。』

これらの教訓が2回目受験に向けて深く心に刻み込まれた。

『憲法を序盤に解いてはいけない』という点について補足する。解き始めの5分ぐらいは頭のエンジンがかかりきっていなかったりするので、ただでさえミスが生じやすいものである。問58~60の文章理解のように、時間をかけて解けるならまだいい。憲法は問題によっては文章理解+憲法の知識が必要であり、難しく作ろうと思えばどこかしらから埋もれた判例を引っ張ってくればいくらでも難しい問題を作ることができる。今回のR5本試験は判例知識や深い論点を問うてきた。聞いたことある話なのに、本番での緊張も相まってなぜかわからないという恐怖に陥る。どういう問題が出るか事前に想定しにくい上、想定できたとしても読んで理解するのに時間がかかる。
 仮に時間をかけて解けたとして、予定より時間が押してしまった場合はそのプレッシャーが地味にかかってくる。プレッシャーは一見地味だが、かかったときにようやくその本当の恐ろしさを理解し、そして手遅れにつながる。絶対に侮ってはいけない。通常なら解ける問題でもミスが発生するリスクが飛躍的に高くなる。問題を見てからばっさり飛ばすぐらいなら、初めから科目ごと後回しにするほうが精神衛生上リスクが軽減される。当然、途中からマークをするわけでマークミスのリスクがないわけではない。しかしながら最初の一問目を解いてマークを塗って『確認をする』は安心と信頼のルーティンであり、普段から慢心せずに注意していればどうということはない。


2回目の受験に向けて

2回目の受験に向けて変えたこと。独学or予備校?

 まず、頭ぶん殴られても決してブレない圧倒的な基礎力を身につけるため、独学をやめて伊藤塾の門をたたくこととした。門をたたくとはいえ基本的に通信講座で、年5回ほどのスクーリングと9月と10月の会場模試オプションをとらない限りは、伊藤塾の方と直接会う機会はない。カウンセリングも利用しようかなと思ったものの、私の場合はスクーリングの際に少し話を伺うぐらいで大丈夫であった。ただ、そういうバックアップがあるのはやはり心強いものがある。

 2回目の本試験後に開業独立された先生から独学予備校どちらのほうがよかったのか話を聞いた際に、目的地に行くためにタクシーを使うか徒歩で向かうかの違いである、という話を聞いた。答えに辿り着く方法さえわかればどちらでも受かる、ということだ。自分に何が足りないのか明確で目的意識があるならば、予備校を使うほうが良い、と。お金で時間を短縮する、迷わず目的地に向かって進めるという点でこの例えは的を射ていると感じた。どちらを選ぶかどうかは人それぞれ事情があるのでなんとも言えないが、次の本試験でより可能性を引き上げるための材料が得られると踏んだのであれば予備校は積極的に利用したほうがいいと考える。

 私の場合は、次の本試験までに頭ぶん殴られてもブレない圧倒的な基礎力を構築するには何が足りなかったのか?その可能性を最も高くするにはどうすればいいのか?これを考えた結果、直前期~本試験終了後の無料youtube配信でいろいろみていたなかで妙に説明の言葉が染み込んできた伊藤塾を選んだわけである。本試験直後の相談会にて相談してみた際に直に話を聞き、実際のテキストの殺意のこもった分厚さと中身の濃さを確認して、これならば1年目には足りなかったものを補えると確信した。中級相当のアドバンスコースをおすすめされ、憲法行政法は坂本先生、民法商法は平林先生の講義を受けることとなったわけだが、これが結果的に私には非常にマッチしていた。

 申し込み後に殺意のこもった分厚さのテキストが複数冊送られてきて、一回目の受験で知識量の少なさを感じた私にとってはこれは期待できると感じた。ちなみに最初の授業でこれでもだいぶ削りに削って凝縮したほうである、との解説があった。憲法や法律の勉強を本格的にやるということは宇宙のようだ。実際、先生の講義はとてもわかりやすく、かつ妙に記憶に残る。ただ過去問を解くだけではだめだというのはわかっていたが、その点を解決するような過去問との上手な付き合い方がコースの根本にあった。また印象的だったのが講義動画で、分厚いテキストを全部やるのかと思いきや、一周目ではある程度ばっさばっさとここは飛ばしで!と潔くとばすところはとばしていた。本当に重要な基礎的な部分を講義でピックアップしていく形ということのようだ。実際いきなり一周目ですべてを理解するのは不可能だし、他のことを勉強してようやく理解できる部分もあり、たしかに理にかなっていると感じた。ざっくり進めるを繰り返していき、徐々に深堀していく。最終的に直前期前にはすみからすみまで全部を何週もする形となったわけだが、最初の講義での非常にわかりやすく印象深い説明もあって趣旨から理解することができ、みるみる基礎力の再構築を図ることができた。

 ある程度全試験範囲分の講義が一通り終わったであろうタイミングのスクーリングで、民法の目次だけがレジュメとして配られた。講師は実務家としても非常に活躍されている井内先生だったか。そして全体に問いかける。『胎児の権利能力の例外を3つわかりますか?』と。
 こんな感じであっという間に3時間過ぎて、結局全部終わらなかった。しかしながら、この『目次での学習』、法律初学者であった私にとってそれは非常に感銘を受けた。これはやり方がわかっていてもなかなか実際にできることではない。さまざま吸収した知識を、パソコンのフォルダにデータを格納するかのように保管していくことの大切さ。最初のうちは分厚いテキストを時間をかけて回転させていくが、段々と読み進めるスピードが速くなり、最終的にぺらぺらの目次だけになる、と。そもそも民法とはパンデクテン方式、一般的ないし抽象的規定を総則としてまとめてから個別的具体的な条文が書かれているわけである。『体系的に覚える』とはこういうことかと非常に勉強になった。なお、まだ民法の何番目にどの話が書いてある、まではすぐに検索できるところにまではたどり着けないままではいる。図で書けと言われたらかけないことはないだろうが、それらが何編何章何節か?とまで聞かれるとお手上げである。
 ちなみにスクーリングは東京と大阪の二カ所で開催され、それぞれ実施される講師が異なる。東京でのスクーリングはアーカイブ動画でも視聴可能であった。私は大阪会場にて生で参加していたのもあって、一回で二度楽しめた。

勉強の記録を付ける意義

 スクーリングでのアドバイスもあり、6月頃から勉強の記録を付けるようにした。何のために記録を付けるのかというと、模試等をやった際に、落とした問題の分野を最後に勉強したのはいつだったか?が見える化していると、復習がしやすいからという理由である。
 『忘れることはしょうがない』
これも一年を通じてよく言われた言葉である。いつから触っていなかったのかをみえるようにしておくことで、これだけの期間放置していると正解に辿り着けなくなってしまう、ということが結果としてわかる。
 秒トレはもっとやっていたはずだが、アプリ自体に記録機能があったこともあり、完全に細かく記録を付けるのを忘れてしまっていたようだ。記録を付けるのが目的ではなく、あくまでいつ頃だいたい何をやっていたかがだいたいわかるぐらいでよい。試験終わった後に、そういえばあのとき何してたのか?をなかなか思い出せないものであるが、記録を付けているとそのあたり話が早くなる。

2023/7頃の記録
2023/10の記録
2023本試験超直前期

 直前一か月は、完全に何をしていたのかは正直全部記録できていないと思う。とりあえずやったこと、やらねばならないと決めたことは書いていたか。ガチガチに何をしたかを埋めることが重要なのではなく、何のために記録するのか?を忘れずに手段と目的をはき違えない程度で使うのがよいと思う。

条文素読の際のさらなる工夫

 条文素読も量と視点を変えることとした。会社法と民法、地方自治法は通しで全条文ひとまず読んでみることにした。とりあえずみたことがない条文をひとまず一度でも目にしたことがある条文にしておくことにした。会社法と地方自治法は結局1、2周ぐらいしかできなかったが、あとはテキストで重要事項を抑えるに徹した。国家行政組織法、内閣法、内閣府法、国家公務員法、地方公務員法、戸籍法、個人情報保護法、行政書士法、ADR法あたりも目を通すようにした。
 憲法、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償請求法、行政代執行法の出ることがほぼ確実なものは10月以降は1,2日で一周まわして読むようにしていた。元気がないときはそのまま読んでいたが、可能な限り、過去問を解いた経験と合わせて、自分が出題者になるならどこを誤りの箇所にしてみたら楽しくなるか?を考えることにした。そう考えると、自ずと『かつ』、『又は』、『~が』、『~に対して』、このあたりは特に念入りに意識して読むようになっていた。

 民法でいえば、単なる『過失』あるいは『重大な過失』どこがどっちだったかよくわからなくなることあると思うが、そこを網羅的にピックアップしたものがなかったので、e-Govの法令検索の検索機能を駆使して民法に存在する『重大な過失』を検索してみると、13カ所出現した。それをまとめたものがこちら。

2023/10時点で民法に存在する『重大な過失』が出現する条文

どことなく記述問題で見覚えのあるような・・・

同様に、どういう場合に、『相当の期間を定めて』その後どうなるんだっけか?というのが気になり、これも検索、そして15カ所ヒットした。


 このあたりのまとめは、グーグルのスプレッドシートに新しいシートを足してそこにまとめることにした。コピペしてはりつけるだけ、マーカー代もかからず、スマホでもPCからでも両方からでもみれるし同時に編集が可能である。繰り返しの話になるが、スプレッドシートはこういう使い方もできるのでとても便利である。

過去問との付き合い方

 講義で一区切りした段階で回し、一通りの講義が終わった段階の春~夏の間でとりあえず10年分程度を1周まわし、9月10月で確認のためにもう1周まわした程度である。あとはたまにカンが鈍っていないかどうか適当に選んだり付箋ではった間違えたり根拠が確信をもって選べなかったものを少しやる程度であった。基本はテキストである。過去問の肢別問題を解く理由は知識の確認と、間違い肢の癖の確認のためあった。問題の問いの癖は意識して解くべきである。何を問うていて、どこでひっかけようとしているのか?これは特に意識していた。この問題の内容自体が未知との遭遇のいわゆる捨て問であった場合、これによって幸運をつかめる可能性もなくはない。
 これは本試験の振り返りをしていて思い出したことだが、近年まれにみる鬼畜の難易度と言われたR5の憲法、その問5と問7で、この問題の癖をみる経験が活きたのではないかと思っている。本番で解いている最中に、過去問の何年のどの問題かは詳しく思い出せないが、何年か前のCランク問題で似たような問い方をしていた解答肢が正解だったなということが思い出された。後日過去問を引っ張り出して確認してみたら、問5-3の正解肢はR2の問6-5に、問7-2はR3の問24-オに正解肢の作り方が似ていた。ちなみにどちらの過去問も当時正答率50%をきっていたいわゆる捨て問の部類であったようだ。日頃から問題の癖をみる習慣をつけていると、本番でそれが活きてくるのだと実感した。

マーカーの使い方

試験中はマーカーの持ち込み可能である。最低2色はあるとよい。私の場合は、黄色とオレンジ色を使っていた。必ず使用することにしていたのが記述問題と文章理解、あとよく使っていたのが判例問題である。毎回ペンを持ち換えているのは確かに面倒なので、行政法など少し注意すれば大丈夫な問題はそのまま鉛筆で線を引くなり〇で囲むなりしていた。
記述問題であれば、まず問題文中の『何を書く必要があるか?』の部分を下から探し、そこにオレンジ色のマーカーを塗っていく。次に問題文上での事案の背景情報について黄色のマーカーを塗っていく。こうすることで、何を書くべきかがブレにくくなり、背景知識も見落としにくくなる。ただしそれでも、マーカー塗っていなくて見落としてしまうことがあるので、やはり注意が必要である。
 問題の意図がわかりにくい場合は、問の番号の横の説明書きを読んでキーワードにも塗るようにしていた。特に憲法。
 処分性・訴えの利益の有無を問う問題であれば基本的に一色あれば充分である。最初と最後みればだいたい解けることが多い。俗にいうキーワードで反応する、というやつである。
 文章理解型の問題の場合、場合によっては問題文の本文ではなく解答肢に塗ることもある。R5本試験の問60の挿入する一文を選ぶ問題が特にそうだが、解答肢毎に違う部分に色を塗って、どういう方向性の主張になっているかをみるのである。これは憲法の問題でもたまにそうすることがあった。
 R5の問6のように、問題文と解答肢両方に塗ることもあった。基本的に問題文が判例原文だったり、ながながと事案の情報が書かれているような場合は、最後のほうに結論や抑えるべき要旨が書かれていたりする。段落ごとの最初と最後に大事なことを書くのは、私もnoteを書き連ねる際に少し意識しているところである。
 まとめると、マーカーを慎重に使うのは、あくまで必然的にちょっと立ち止まる必要のある問題に対してである。改めて言うがマーカー使用は合法なので、自分なりの使い方を模試を通じて確立しておくに越したことはない。


※(人生の寄り道をした話)

 ここの話は本筋の受験とは直接関係のない、趣味の話がメインとなってしまう。結論から言うと、好きなことから得られる経験もまた貴重なものであり、受験生活中に一切合切封印してしまうのではなく、時には必要だったということである。以降の話は時間のある方だけどうぞ。

  • 『他資格への寄り道』
     他資格の勉強
    を少し進めていた。12月~1月は少しずつ講義受講をしつつ、趣味のポケモンと並行してFP3級の勉強をしていた。もし寄り道の資格試験の勉強をするのであれば、FP3級は比較的手軽でお勧めしたい。本一冊と過去問道場で十分すぎた。2択か3択であり、過去問そのまんまの問題もあり、行政書士試験との違いを感じた。とはいえ一般知識として必要な知識も多く、実際に行政書士試験の一般知識にも役立つことがそれなりにあったので、次の1月の試験に向けて申し込んでみてもいいかもしれない。2級も受けようかと思ったが、寄り道が過ぎると思いそこは今年は断念した。3~6月は簿記二級の勉強も少し進めていたが、こちらも寄り道が過ぎてしまう可能性があったのでいったん中断することとした。

  • 『ポケモンの対戦』で勝負勘を鍛える
     一回目の本試験終了一週間後にポケモン本編の新作にでることがあらかじめわかっていたため、どういう結果であれそれをひたすらやろうとは決めていた。発売後にswitch2台同時操作して2アカウント分ストーリーを堪能し、図鑑も1週間ほどで完成させ、その後はそれなりに対戦をやっていた。対人戦自体は前作のポケットモンスターソード&シールドのときから少しかじっていたので、まったくの初心者というわけでもなかったのもある。発売最初のシーズン1は約122万アカウントがランクバトルに参加していて、そのときはたしか2アカウントで交互に参加して最終7000位ぐらいとギリギリ10000位以内だったか。壁の厚さを感じた。
     なお、2023年8月は後述するポケモンWCSという世界大会イベントがありポケモン熱があったのと、まだ多少の無理して対戦してても大丈夫な時期だと判断したのもあって、8月実施のシーズンを一旦の引退試合と決め、自分に自信を取り戻すべく開き直って最終順位3桁以内を目指して頑張った。その甲斐あって、34万アカウント参加中最終810位と870位がとれ、自己ベストを更新した。個人的にここで終わりというシーズンで、我を通しながらも環境に適合させる試行錯誤が実った経験は9月以降の気持ちを保つ面でも非常にプラスであった。本試験も最終3桁以内がとれれば十分合格圏内というのもあってポケモンの対戦でも最終3桁以内にこだわった。なお、それより先は次元が違いすぎて寄り道が過ぎるので進むのをやめた。Twitter改めXをみると、最終3桁は当たり前で最終2桁狙いもしくは最終1位狙いで月末徹夜で翌朝9時のシーズン終了の朝9時までひたすらに戦い続ける猛者の姿もざらにみることができる。
     9月は勉強にシフトしていて対戦はほぼやらなくなっていた。ふと月末に少しだけ散歩感覚でやってしまったわけだが、月末のシーズン終了最終日に最終順位を少しでもあげようとせんとすることに魂をかけた人々に蹂躙され、なんとか勝ち筋を可能な限り追うもことごとく択を外し続け、自分の判断をまったく信用できなくなってしまった。そしてそのまま次の日LECのファイナル模試に挑んだ結果、会場模試としてはその年で一番の敗北を喫した。以降、無駄に運やエネルギーを使うの控えるため対戦は完全に封印した。

  • 『会社法を深く理解するため株主総会へ』
     会社法の勉強をより自分事とするために、3月から株を少しだけやってみることにした。
    株主総会に参加してみたい、という気持ちもあった。株主総会自体は基本的に平日午前なので仕事をしていると参加が非常に難しいところであるが、今年は勉強に専念する一年と決めたのでその点は問題なかった。初めて買ったタイミングが3月中旬だったのだが、3月末をまたいで株を1単元保有していると6月の株主総会への招待状が届く。私自身が関西人なのもあって、比較的近くで株主総会が開催される京阪と任天堂の株主総会へいってきた。言うまでもないが、株取引は当然損もする可能性もあるし、そこはあくまで自己責任である。

     特に任天堂の株主総会では、ポケモン世界大会の件でちょうど聞いてみたいことがあったので簡潔に質問できるように遂行に推敲を重ねた。
     余談になるが、ポケモンは権利関係が少々特殊である。厳密にはスーパーマリオのように任天堂直下にあるわけではなく、株式会社ポケモンという別会社が権利関係を管理しているようだ。つまりそのままポケモンの話を株主総会をするのは場違いということになる。株式会社ポケモンの株主総会があればよかったのだが、どうやら株式が非公開なため、やむなく任天堂にきくしかない。
     ただ、よくよく調べてみると、株式会社ポケモンは任天堂にとっては持分法適用会社でいう関連会社にあたるとのことで、必ずしも無関係ではないということがわかった。そしてポケモン世界大会というリアルイベントについて直接聞くのではなく、そこを具体例として挙げたうえで俗にいうEスポーツについての取り組み方についてという形で質問にまとめ上げた。なお、任天堂自体はリアルイベントについては前向きではあるものの、Eスポーツという呼称は明確に否定している。後に任天堂ゲームを利用したイベントのガイドラインが発表され、一部界隈では物議を醸しだしたものである。
     実際に任天堂の株主総会に参加してみて質疑応答を生で体感したわけだが、挙手して質問できるかどうかはとんでもない倍率である。前から10番目ぐらいの列の人ほぼ全員、ざっとみて数百人が一斉に挙手をする。仮に事前に質問を遂行したからといって質問できるかどうかは引き寄せる何かがないと難しいようだ。幸いにも質問をする機会を得ることができたが、本当に運が良かったとしか言えない。
     他の株主の質問や経営陣の聞く力についていろいろと勉強になることが多々あり、これもまた非常に大きな収穫となった。そのときの話をまとめたのが下記の記事である。本記事執筆段階時点で9000ビュー以上読まれている、個人的に一記事のビュー数では人生最高記録の記事となった。

    『聞く力』と『伝える力』 株主総会に参加して得た学び|テツノトリ (note.com)

    noteの企画にも応募してみた。上記の話を企画向けに書き直して試しに応募してみたら、なんと賞をいただいた。受賞記事はこちら。

    推したい会社『任天堂』|テツノトリ (note.com)

  • 『裁判傍聴から世界大会観戦遠征まで』
    その他、裁判傍聴に何度か行ってみたり、行政書士試験改定の意見公募があった以降は意見公募手続きのページや官報も数日おきぐらいに目を通すようにしていた。他にも7月に現役行政書士の先生方の食事会にお邪魔させていただいたり、8月に行われたポケモンの世界大会関連のイベントに単身遠征したりと、なんやかんや好きなことはしていた。
     嫁からのさっさと働けとの圧がまあまああり、2回目受験に向けて途中で何か働きながらにするかとも考えたが、8月のポケモンWCSのイベントにどうしてもいってみたい気持ちが強かったため、当面勉強中心の生活を送りつつ、8月のイベント後に少し考えようということにした。
     横浜で開催されたポケモンWCSはいうなればポケモンのオリンピックイベントのようなもので、日本で開催されるのも実は今年が初めてであった。関連イベントだけでも割と広範囲で開催されていた。一生で一度あるかないかぐらいのイベントであり、人生最後の贅沢とまで考えていたので家族も勉強も全部ほうりなげて8月のその期間は2泊3日楽しんできた。ほとんど本戦をみるまもないぐらいに関連イベントの観光をするのと、Twitter改めX上での付き合いの方ともご挨拶するので忙しく楽しんだ。なかなかいそうで身近にいない同志がこの世に存在するのを確認した。また、ポケモン好きな人は世の中にそれなりにいるが、ポケモン好きにも様々な宗派があり、皆が皆Twitter改めXのアカウントをお持ちというわけでもないということも実感した。

     身近にはいなくても、世の中にはおそらくどこかに同志は存在する。これは意外と見落としがちの視点であるが、実際そういうものである。R5の行政書士試験本試験でいえば約5万人が参加予定であったが、果たしてこの中でTwitter改めXにて行政書士試験受験を明言されている方あるいは勉強用のアカウントを作成されている方はどれぐらいいるのだろうか?正直わからないが、全体から見ればごくごく一部であろう。

  • 『note記事の執筆』
     この記事もそうであるが、noteでたまに記事を書くようになった。もとは趣味のポケモン対戦で使用していた構築や経験を書き残すために始めたが、今となってはその他諸々雑多に書くこととなった。とはいえ今のところは記事を書くのはあくまで趣味の一環である。可能な限りわかりやすく書くことを一応意識してはいるが、一朝一夕でできるものではない。
     自分が体験した、感じたもので、他の人に少しでも教訓になるのではないかと思うことは意外とそこらへんに転がっていたりする。行政書士とは?に関する本も何冊も読んだが、ビジネスの機会はいろんなところにあるという見解が多々見受けられた。人生何がきっかけでどう転ぶかわからないわけで、そういう機会を見逃さずに捉えてうまく活用していけるように日々心掛けたい。note執筆や記事の閲覧はその一環としてなかなかよかったりもする。


9月~本試験までの直前期の過ごし方と試験中の動きの確立

2回目受験時の模試・本試験の結果

 これらは、2023年(R5)11月12日本試験自己採点分までの1年間の試験の記録である。

R5本試験最終結果分まで
20230716_LEC到達度確認模試1回目
20230820_LEC到達度確認模試2回目
20230903_LEC公開模試1回目
20230910_伊藤塾公開模試1回目
20230917_LEC公開模試2回目
20231001_LECファイナル模試
20231008_伊藤塾公開模試2回目
20231015_LECヤマ当て模試1回目
20231022_LECヤマ当て模試2回目


会場模試との向き合い方

 模試結果一覧にもある通り、年間で3時間一本勝負の会場模試9回と書籍模試8回を敢行した。9月~11月は3時間ガチンコ勝負の機会を可能な限り確保することとした。主な理由が下記の通りである。

・ 理不尽な初見殺しの問題への対応力向上
・ 喉の渇きや疲れ、思考能力低下からくるケアレスミスの最小化
・ 何をどのタイミングで摂取すれば最も良い状態で挑めるかの確認
・ 先に何度も本試験の恐怖と向き合ってどうなるのか、どこまで戦えるのかを確認しておきたかった点

 7月~9月の模試で、年の前半での伊藤塾の講義とテキストを中心としてきた学習により、一定程度の基礎力が構築されていることは確認できた。しかしながら、それでもなおいわゆるAランクとされている正答率の高い問題を毎回いくつも落としてしまっており、後半の模試ではその原因究明に注力した。解き始めで頭が回っていないのか、知識の抜けがあったのか、とにかく可能な限り原因の究明に努めた。しかし、ちょっとした読み違いや記憶のぐらつきによる余計な落としを直しきれず、会場模試だけでは結局改善しきれぬままに終わってしまっていた。
 どうしたものかと思案に暮れていた時にふと、『わからない自分を認めてあげる』という伊藤塾の平林先生の言葉を思い出した。わからない問題に遭遇したときは、わからないことを認めてあげたうえで、その上で対処していきましょうというお話である。『それでもやらかしてしまう自分を認めてあげる』ことにして、自分はやらかしてしまうものなのでそれはしょうがないと考え、その分二巡目のケアで読み違え等のイージーミスが発生しやすい問題番号を重点的に見直すことにした。本番でも行政法でそれで4点救えた。ただし、本番でも民法問27を簡単な読み違えで落としてしまった。これだけ慎重に慎重を重ねてもゼロにすることはできなかったが、逆に言えばその1問だけと最小限にはすることができた。なお問2、20もいわゆるA問題認定であり、結局模試通りの数程度のA問題を落とすこととなってしまった。これだけシミュレーションしても最後までやらかしてしまうものである。
 とはいえ、択一問題の正答率60%以上問題、あるいは50%問題をどこまでとることができるか?ここが合否の分かれ目であるとよく言われているが、そこを可能な限り取れるようにするためにはどうすればいいのか?この意識は特に模試が始まりだした段階で絶対に持っておくべきである。

 本試験当日はこの1年間はこの日のためにあるぐらいの感じのプレッシャーの中で臨むことになる。普通に考えて緊張しないわけがない。なので模試を受ける際は多少問題傾向が過去問と違うであろう点には目を瞑り、初見の問題と緊張状態の中で3時間ガチンコ勝負するという点にこだわって毎回挑んでいた。本試験当日の日を意識して、模試の日は昼の補給物資の構築の模索や水分補給量やその補給タイミング、トイレのタイミングに至るまで可能な限り本番を意識した形で過ごすことにした。たしかに模試は模試であり、本試験とは問題の癖が違う。仮に満足のいかない結果であってもそれを言い訳にすることができる。ただし、本番でいきなり傾向が変わってしまったときに、傾向がかわってしまって崩れたから今年ダメでした、などということは絶対に避けねばならない。本当に今回の試験で受かりたいのであれば絶対にあってはならない。

 9月頃には、解き順と所要時間は模試の難易度問わずほぼ一定であった。
ペースが崩れたことがあったのがLECファイナル模試と合格革命書籍模試3回目と伊藤塾書籍模試2回目の3回であった。共に一巡目終了時刻がおおよそ15:40前後であった。これではほぼ見直しができない。ただし、その3回は共に崩れた原因が問題の難易度以外にもあった点は容易に反省できた。点数だけみれば失敗したとはいえ、わからなかったときなりのトリアージの練習にもなったと考えた。

 一応、年度別過去問の通しは4年分を一応やるにはやったが、初見ではない問題なのでさくさくと1時間~1時間半程度で終わってしまい、時間配分確認としてはまるで使えなかった。くれぐれも年度別過去問を通しでやってみたから本番も大丈夫!などと勘違いしてはいけない。既知の問題なので基本的に解けて当然である。初見で角度を付けた変化球を投げつけられるのが当たり前、たまに意表をついて素直な問題そして年度によって増減こそあるが背後からの不意打ち上等なC問題、いかにそれ相応の準備をしたところで、予定通りに全部の問題を理解して解くのが凡人にとっては非常に困難であるのが行政書士試験本試験である。とはいえその多くは基礎をしっかり固めていれば解けるか、ある程度は択を絞れるようになっているようにつくられている。

やっててよかった書籍模試

 本試験当日のシミュレーションとしては、過去問を年度別に通しでやるよりも書籍模試のほうが圧倒的にお勧めである。本試験同等かそれ以上にレベルが高いが、初見の新鮮な気持ちで勝負することができる点はやはりよかった。ただし、会場模試以上に極端に難解な問題も出てくるため、心が折れないように気を付けたい。私は我慢できずに7月に一度手を付けたが、9月~本試験までの間の本試験当日の過ごし方を意識した微調整で使うのが良いと思う。なお、自己採点が終わったとしても、稀に没問もあったりするため、念のために出版元のページをみて没問がないかどうかは確認しておいたほうがよい。
 会場模試同様、問題の癖がそれぞれにあるのでどうせやるなら複数やるとよい。こんなもん知らんがな問題も割とあったりするが、そういうものかと思ってとりあえず一読はしておく。
 なお、本試験3日前に最後に手を付けた書籍模試が伊藤塾の2回目であったわけだが、なんと一般知識足切りに加えて圧倒的敗北した。それ以外にもラスボスにふさわしいこんなもん知らんがな問題にぼこぼこにされてしまい、強制敗北イベントとして処理することとした。しかし、本番直前に盛大な初見殺しをしてくれた国家賠償請求についての学説についての多肢選択問題に、択一問題として本番で再会した時はさすがに震えつつこぶしを握り締めた。無理にC問題の知識を深く追いかける必要はないし、解説を改めて深く読み返す必要もないだろうが、模試を通して初見殺しに対してどうやって対処するのか?そういえばみたことあるぞこれの経験が、土壇場で活きてくることもあったのも事実である。『そういうものなのか』と思いながらの一読は割と馬鹿にできないなと感じた。
 
会場模試も書籍模試もお金と時間がかかるので、そんな時間があったらテキスト回転して基礎の部分をより固めるほうが良い、というのはそれは最もであるし、あまり時間が取れない方であればそちらのほうがよい。ただし、緊張してパフォーマンスが発揮できない経験のある方や本番当日一発勝負という点に課題を感じる方は、本番を意識した訓練に多めに時間を割くことは可能な限りやっておくに越したことはない。最早来年があるかどうかもわからないような切羽詰まった人であればなおのことである。

問題の解く順番の話

 本試験含めて、試験時間3時間の解き順・使い方は下記の通りに落ち着いた。

行政法     ~13:25(遅くとも絶対に13:30まで)
民法      ~13:50
商法会社法   ~13:55
多肢選択式   ~14:05
記述式     ~14:30(見通しが立たなければ一旦飛ばす)
一般知識    ~14:40
トイレ休憩   3~5分程度
文章理解    ~14:55
基礎法学・憲法 ~15:20
二巡目の見直し(記述の控えや、解き始めの行政法、その他解答中に印をつけた部分)   ~15:50
マークの確認 15:50-16:00

 行政書士試験の概要と私見で述べた通り、解き順に特に指定はなく、各自の戦略のままに自由に解くことができる。人によっては逆順に解かれる方もいたようだ。
 行政法から解き始める最大の理由が、問題を難しくしようにも他の科目と比較して最も限界があり、勉強してきたことが最も反映されやすいからである。スポーツの試合においても序盤で調子をあげていくというのは本当に重要なことであり、その点は是非考慮すべきである。仮に行政法を難しくしようとすれば、あまり知られていない判例を引っ張ってきてその趣旨まで問うてくるか、地方自治法の奥底の条文を引っ張ってくるか、学説を引っ張ってくるかである。R5本試験ではまさにその悪い想定のほうに問題が寄っていた。これらは基本的にC問題で、なかには少し良く読めば基本知識の応用で解けたりする問題もあるが、マイナー序文詰め合わせセットでくると解答肢を読んだところで結局知っているか知らないかの問題となるのでだいたいお手上げである。とはいうものの、一部の奇問以外はあくまで基本問題が多く、キーワード反応でさくさく解いていける。
 もっとも、行政法から解答をスタートさせるといっても、R4の問8のようにいきなり奇問が出現したりすることもあるので、問8~10をとばすつもりで読んでみつつ、すぐに解けそうなら手を付けていく感じにしていた。以降はきりよく順番通りに解いていき、問57まで解いて一旦トイレ休憩、そして文章理解⇒基礎法学⇒憲法⇒一巡終了、という段取りにした。

 R4本試験の反省でも触れたとおり、よほど開き直ってわからない問題を潔くとばすことができて後の解答作業に何の影響もない相当なメンタルの強い人か、冷静に問題を飛ばせるようにひたすら訓練していた人でもない限り、絶対に基礎法学と憲法は序盤で解かないことをお勧めする。R5本試験を経験した方は骨の髄まで体感したことだと思うが、憲法の問題は難しくしようと思えばいくらでも難しくできる。同じく問題数の少ない割に条文数が多く捨て問扱いされがちな会社法のほうは、基本的に選択肢の文章量も非常に少なく、条文知識問題ばかりで知っているか知らないかで判断が付きやすいため、むしろ割り切りやすいという意味で親切である。
 したがって、序盤に何が出てくるか予測しづらく、読むにしても労力のかかりやすい基礎法学と憲法で序盤の時間とメンタルを必要以上に消費して後に引きずってしまうリスクを上げるのは得策ではない。最後に回しておけば、仮にわからなくても後のことを考えなくて済むので最悪マークだけするという悪あがきもできないこともない。問題文や選択肢をよく読まないといけない上に、読んだ上でなお理解が困難となれば圧倒的にコスパが悪い。過去問でやったから大丈夫解ける、などという勘違いをして本番でも安易に序盤で憲法の問題に手を付けて、発狂して崩れる人が本当に多い。緊張状態、人によっては人生がかかった極限状態の初見で、それでもなお答えに辿り着けるのか?を本当によく考えてほしい。
 いずれにせよ、本試験までに会場模試や本試験にて事前に自分が解きやすい順番と時間配分を明確に確立しておくべきである。本番で練習通りのパフォーマンスを発揮するためには、極力余計な択を増やさないことが重要である。心配しなくても、そのうちにどこかであらわれるC問題で臨機応変な対応が求められる。C問題が連発して出されることも想定の範囲内であり、それもまた『予定通り』なのである。『予定通り』無理に付き合わないようにすればいいだけのことである。

 なお、模試のない日は問題演習はほんの確認程度で、基本的にテキスト回転と条文素読が中心であった。素読の際に意識していたことは前述の通り。あくまで基本はテキスト回転と素読である。伊藤塾では基本テキストを非常に重視しているのだが、実務をされている方の話をいろいろと聞いてようやく徐々に実感がわいてくる。受験勉強中はテキスト回転していたのが、合格して実務をすればそれが手引書にかわるだけのことであると。講義のどこかでそういう話をきいたのをうっすらと思い出した。
 一問一答や肢別問題というのは基本的にテキストに書かれている内容を切り抜いて具体化して問いかけたようなものであり、汎用的ではない。一問一答の圧倒的物量で受かる人もいるだろうが、物事を点で考えた勉強でその後務まるのかと言われると正直どうなのか?と思うところがある。もっとも、圧倒的物量の一問一答を解くその過程で、条文の趣旨を理解して汎用化しているのであればその後もつながるだろう。


会場の下見について

 都道府県によっては試験会場まであまりにも遠い場合があり、現実的ではないケースもあると思う。ただ、そこまで遠くないのであれば事前ルートや通常時の混み具合等の確認を兼ねて、可能な限り下見にはいっておくに越したことはない。もっとも通常時では建物の前までしか行けない。
 しかし試験会場が大学の場合、学園祭開催中であれば合法的に入ることができる。試験中の気分転換にもなってお得である。別記事に書いてあるので、そちらをご確認していただきたい。

下見のすすめ|テツノトリ (note.com)

本番で緊張に飲まれないための事前準備

 模試と本試験は空気感が全然違う、という話をしばしば聞く。実際私もそうだと思う。一応昔体育会系出身でもあるので改めて感じたところであるが、練習の中で本番を常に意識し続けるということは本当に難しいし、それを言われてやるのと骨の髄まで自ら理解してやるのとではわけが違う。
 私事だが事実上無職勉強専業貯金暮らしの生活だったわけで、今回の試験の結果はいろんな意味で重大であった。そのまま独立開業に向けて動くことにするか、別の仕事探しを始めるかの、文字通りその後の向こう何年、下手をすると一生分の人生が決まりかねない、というような状態であった。本来なら緊張しないわけがない。実際10月ぐらいから毎日動悸がとまらなかった。生きていればまだ次の機会があるかもしれないけれど、正直家を売ることや一家離散といった最悪の状況が頭をよぎったりもした。最終的に、今回の本試験を最後の引退試合にしようという考えに至った。ちなみに合格して独立開業したからといってそれで危機が去ったわけではなく、前職以上の稼ぎを安定して出せるようになってようやくひとまずの大きな危機は去ったという認識でいるのは一年間変わらずにはいた。

 幸い、私は人生で何度も引退試合をしたことがあって、そこでの経験はある意味で成功体験としてもっていた。引退試合なのだから普通一回だと思うかもしれないが、取り組んでいた時期や分野が違えば、それだけ引退試合の経験は増える。
 大きく二つ頭をよぎったのが、高校時代の部活の引退試合と、8月のポケモンのランクバトルだったか。

エンジョイする受けループ S9シングル最終810位R1922&最終870位R1919|テツノトリ (note.com)

 どちらにも共通していたのが、心が澄み渡っていたということだ。何かが終わる前ってこういう感じなんだろうなということを想像しつつ、それまでやってきたことが自然と走馬灯のように出てくるのである。
 というわけで、10月からの模試はそのプレッシャーを常に抱えながら会場模試・書籍模試全部やってきた。そうすると、段々とマシンのごとく動きが機械的になってくる。動きがぎこちない、というわけでなく余計なことを考えなくなり、ひたすらに本試験でいかに負け筋を減らせるか?という目の前の目的のためにどう行動するか?にのみ注力するようになるということである。そのために自ずと試験当日の午前中もどう動くか、シミュレーションに次ぐシミュレーションを行った。模試の日にときどきその日の昼食の写真をTwitter改めXにポストしていたのもその一環である。基本知識の確認と同等かそれ以上に、いかなる場合でも通常通りに動くための、試験問題を解く以外の考えられうる負け筋を徹底的に排除することに注力した。

本試験当日の動き

 普段は8~9時に起きるという感じではあったが、前日は25時頃に寝て6時過ぎに起床した。一時間ほど行政法素読したあとに朝食のホットケーキを食べつつ、録画していた深夜アニメを一本みて、荷物の最終確認をして出発。自宅から1時間ほどかかるわけだが、早めに家を出ることができたため、想定よりも40分ほど早めの到着。私はタバコ好きなので、迷うことなく下見で確認していた喫煙所付近へ向かう。

 以降の動きは実に機械的であった。

喫煙所周辺で最重要論点150(コンパクト本)をまるまる1周、スマホでパワポ集・直前無料講義で得た一般知識対策pdfをまわしながら一服しつつ、合間にTwitter改めXのタイムライン確認。たまに試験中にこれは忘れてはいけないとみえた言葉を普段通りXにポストしていた。

 11:30 昼食(メニューは後述)
 11:55 最後の一服を済ませ、試験会場へ移動開始
 12:00 試験部屋到着、その後下痢ストッパー投入
 12:15まで 頭の回転具合を確認しながら、
         メルティキッスを3,4個口の中に入れる。
 12:20 リポビタンD2000を投入。
       その後、試験前の最後のトイレを済ませる。
 12:30 全体への説明開始

 なお、喫煙所到着後から試験開始まではひたすらスマホにイヤホンをつないでFRLG版とHGSS版のポケモンのカントー地方ジム戦のBGMを延々とループさせていた。なぜこの選曲なのか?もちろん適度に戦っている感じがするというのもあるのだが、ポケモンのジム戦というものが旅の途中の通過儀礼のようなものだからである。つまり、一定レベルをあげて適切なタイプで戦えばだいたい勝てるようになっている。この試験もちょっと熱い戦いになるかもしれないが、突破不可能な理不尽なものではなく突破するのがストーリー上予定調和な通過儀礼であると、ひたすら自分に言い聞かせ続けていたのである。脳内でBGMをかけられるようになると試験中の少々の雑音はまるで気にならなくなるため、日頃からの勉強で練習してみる価値はあると思う。私の場合はポケモンであったが、これは人それぞれ好きなものでよい。
 なお、歌つきの場合は歌詞に気を付けたほうが良い。万が一縁起でもないと思ってしまうようなワードが入っている歌を上書きで聞いてしまうと意識が削がれてしまう可能性が考えられる。それで本試験中に実力を発揮できなくなってしまったとなればそれこそ大惨事である。どちらかというと歌詞のないBGM、特に自分に親しんでいて力の湧くゲームのサウンドトラックがあれば特にお勧めである。余談だが、試験後に強風オールバックのBGMが直前に流れてペースが乱れてしまったというポストをみた。あれは中毒性が高く、歌詞に「風強すぎておなくなり」とあるので、試験前にはちょっと縁起が良くない。
 なお、模試で一度脳内でかけるBGMが前日の晩にループしていて聞いていた意図せぬ穏やかなBGMになりエンジンがかからず自滅してしまったこともあった。ポケットモンスターXYのクノエシティだったわけだが、曲自体はおだやかな環境音楽で夜中に六法を素読する際には非常に素晴らしかった。しかし試験中にエンジンをかける音楽ではなく、頭がエンストして結果としては振るわなかった。このようなしょうもない失敗もあり得るので、やはり何度か試しにやってみることが必要である。無論、無音でなんとかなるとかそもそも気にならない人であれば、当然それに越したことはない。

本試験の昼の補給構築


全てファミリーマートで買える

 私は昔から試験の時は甘いものを多めにとることにしていた。当初は『ダブルクリームサンド』と『シュークリーム』を軸にいろいろと構築を模索した。糖分ブーストという点ではシュークリームは非常に素晴らしかったが、運搬中に不慮の破損や食べている最中に中のクリームが口元で爆発する可能性もあったため、安全第一を優先して構築から抜けていった。生クリームたい焼きもなかなかよかったが、より腹持ちがよかった『しっとり触感のバウム』と『ミニクリームパン』に入れ替わり、結果画像のような構築に落ち着いた。一度書籍模試を実施した際、リポビタンD2000なしでやってみたことがあったが、個人的にファイト一発があるかないかは頭のエンジンのかかり方があきらかに違ったので、以降個人的に絶対に外せないものとなった。試験開始直前30~40分前に一本いれておくとよかった。本試験3日前にこの構築にたどり着いたおかげで、当日家を出てから近所で昼食を確保する際に何の迷いもなかった。なお、日曜日の午前中でも構築に必要なスイーツの在庫があるか散歩の際に目視確認をしていた。当日に万が一売り切れしていたら大惨事になってしまうため念のために予約をすべきか検討したが、目視の確認の結果そこまでは必要ないと判断した。
 人によって適切な補給構築は異なるのは言うまでもない。しかし、試験本番に今日のお昼は何にしようかなと当日になって考えるのではなく、模試を受けた際に事前に決めておき、本番でもそれと同じものを食べるほうがパフォーマンスの『再現性』が増す可能性が上がる。人生の都合でなかなか難しい側面もあるだろうが、特に会場模試の場合では、会場までの移動や補給タイミングの確認も兼ねて、朝起床してから16時まで、つまり試験が終わるまでの時間全部を本試験当日の試運転の時間として可能な限り大切にすべきである。


本試験中に考えていたこと

 12:50頃には説明が終わり、開始数分前の段階で問題冊子の裏面の何も書いていない面をじっとみていた。裏面がまっさらなので、各科目終了時の通過時刻のメモと自信のない問題やとばした問題などの後で確認するメモをどの大きさで使うかを最終確認していた。
 今年からだったような気がするが、事前の説明時間の間に氏名・受験番号・生年月日をあらかじめ記載できたのは非常にありがたかった。それでも試験終了3分前にはさらに確認した。試験開始後の動きは、先述のR4本試験での反省や2年目で確立した3時間の使い方の通りである。あくまで『予定通りに』行動した。


問題用紙の裏側

 本来人に見せることを想定しないので、メモは自分がその時読めればそれで十分である。

 試験中も引き続きただひたすらに事前のシミュレーション通りに体を動かした。16時以降のことは一切考えず、頭に浮かびそうになっても一巡解き終わるまでは時計とにらめっこして自分のペース通りと乖離がないか程度のこと以外は目の前の問題を可能な限り確信をもって解くことにひたすら集中した。15:21一巡目終了と、いつもの模試通りであれば170点は固いペースだった。
 一息呼吸を整えた後は、まず記述問題に戻って答案用紙に書いた原稿をもう一度読み直し、ファイナルアンサーかどうかを確認して問題用紙にそれをそのまま書き写すことにした。記述3問目を多少文面変えたりして書き写すのに時間がかかってしまった。その後今までの模試でケアレスミスが多めであった解き始めの行政法から順に見直しを開始し、そうこうしているうちに残り8分前になり、全部のマークを番号通りに塗れていたかどうかを確認して、あっというまに16時となった。
 試験終了後はこれでよかったのか実はダメだったのか何の手ごたえもなく、『これでだめならもう知らん!』というのが正直な感想であった。

 問題用紙裏面をみての通りだが、極度の緊張状態でも絶対に大丈夫と言えるように頑張ってはみたものの、それでもなおこれだけ△や?!な問題が出てきた。?!は未知との遭遇だったりするのでそればかりはしょうがないとは思うが、本来であれば△がないのが理想ではある。それでもなお、〇△の〇だけども自信がない、を〇や◎にしきることはさすがに無理であった。直前のSNSでも基礎力がとことん大事であるとは言われていたが、基礎であるA問題の知識だけでもよくよく考えたら数いくつあったのか?という具合に十分多い。問題を見て解けるではなく、たとえ緊張状態であっても、お題を一つ出されてそれについて問題を作ったり多少の話ができるレベルまでもっていく気概はいるのかなと感じた。

本試験終了後の話

本試験後について大きく以下の点に言及しておく。

  1. 休息

  2. データリサーチや成績診断の登録

  3. いろんな人と会い、話を聞くこと

  4. これから先何が必要か?を考えて動く

まとめると、『休息 ⇒ 振り返り ⇒ 次を見据えた行動』といった具合か。

休息は必要。本試験終了後しばらくは燃え尽きてしまう

 本気でこの試験に挑戦したことのあるものなら割とよく聞く話であるが、試験後数日、あるいは11月いっぱい下手をすると年内いっぱい燃え尽きて何もする気が起きなくなる。

  文字通り『燃え尽きる』 これは本当にしょうがない。

 燃え尽きると、本当に何もする気が起きなくなってしまう。長期間に渡りその日のために取り組んできて、それがなくなるわけであるから燃え尽きてしまうのは仕方がないことである。なのでしばらく休養するでいいと思う。可能であれば、温泉・銭湯・サウナ・整体あたりにいくのもよい。日頃から多少の運動が習慣に入っていない場合は、相当体にガタがきていることだろうなので、体のメンテナンスは是非。

 とはいえ、早めに『振り返り』はやっておくべきである。試験当日直前期である9月~11月の過ごし方勉強を開始してから今までの過ごし方…。どのような結果であれ、振り返ることは本当に大切である。そんなわけで、本試験後1週間程度は吐き出すようにnoteにこの行政書士試験に挑んだ記録を残すべく振り返りの記事を書いていた。noteやブログ等に書き記しておくことは思考の整理にもつながり非常に有効である。

データリサーチや無料成績診断への登録

 そして振り返る際にもう一つやっておくべきことがある。大手予備校のデータリサーチや成績診断である。後日行われる各予備校の本試験分析会の貴重な元データとなる。基本的に予備校利用生に限らずどなたでもyoutubeで視聴可能になっていることが多く、本試験を振り返るにあたって非常に有用である。記述の採点がどれぐらいになるのかに意識が向きがちであるが、本試験での各問題ごとの正答率が後々わかることのほうが主な使い方としては重要ではないだろうか。
 ただし、成績診断やデータリサーチというのは本試験1週間後までしか入力期間がない場合が多い点は注意すべきである。そしてどこから申し込めるのかちょっとわかりにくいのも難点である。本試験終了直後であれば、SNSでも告知されていたりはおり、比較的わかりやすくなってはいるが、一度それを見逃してしまうと探しに行くのがそれなりに手間である。
結果自体は12月1週目まで確認できない場合もあり、一旦これを入力して起きあとはしばらく休んでよいと思う。いずれにせよ早めにやっておくことをお勧めする。データが出揃わない以上、振り返りは本試験終了後数日では終わらないものであるが、できる範囲のことをやっておき、データが出揃ってきたらまた一旦振り返るでよいと思う。
 他の人の話を聞いてみると、記述の採点だけ気になっていたので記述の解答だけ記入して後は面倒くさかったので択一の解答は記入せずに出したという方もおられたようだ。なるほど、そういう使い方もあったのかと思いつつ、正答率が狂ってくる可能性あるかもしれないのでそれはちょっと…とも思ってしまった。ただ、実際の正答率を見比べてみると、あまり影響している感じはなかったようだ。私は5社分実施してみたが、一部の問題で10%前後正答率の乖離があったものもあるが、概ね似たり寄ったりであった。

次を見据えた準備

 本試験の結果がどうであれ、振り返りの結果も踏まえつつ、次はどうするのかをいずれにせよ決める必要がある。ここから先は人によって状況が異なりすぎるので何がどうとは一概に言えない部分ではある。次の資格試験に挑むのか、合格がみえていそうなので登録や開業後の実務について勉強をしてみようかとか、今年はダメそうだからまた来年に向けてだとか、いろいろあると思う。最終的な判断は各人に委ねられるとはいえ、他の人の意見を聞いてみて自分の気づかなかった視点や考えといった、『気づき』を得ることは大切である。他責思考に陥るのはよくないが、ヒントを得るのはむしろ大切なことだと思う。完全に自己完結して振り返りと次の対応策を考えて前に進める人は別にそれでもいいと思う。ただ、それがために数年かかってしまうのもどうなのか?とも思ってしまう。また来年も再来年も挑める環境の人であればそれでもよいかもしれないが…。

いろんな人と会い、話を聞くこと

 ここから先は、一旦ある程度の振り返りを終えてからの話となる。11月中旬以降は、Twitter改めXのスペースという通話機能を存分に活用して情報収集をしていた。
 無論、他の人の話を聞いて全部が全部自分に取り入れることができるかと言われるとそういうわけではない。合格点180点を最終的に超えればよいという点では全員同じであるが、そこに至る過程は本当に様々ある。試験後に開催されたスペースを通じて、本当に様々な状況でこの受験に臨んでおられたのだと痛感した。
 そういうわけで、試験後しばらくの間は晩御飯終了後には狂ったようにTwitter改めXのスペースに出没していた。盛り上がりすぎて長く続いた日は気が付いたら日が昇っていたこともあった。受験生のみならず現役の先生が入り混じっていたり、現役の先生が主催されているスペースにお邪魔してみたりして見識を少しずつ広めた。早朝組がやってきたりもして、昔心斎橋で朝まで呑んでいたときのことを少し思い出した。ただし徹夜明けの次の日は体調が少しおかしくなってしまったりしたこともあったので、何事もやり過ぎには注意ではある。
 スペースで盛り上がったり、お誘いがあったりして実際に食事会のお誘いが入ったり、逆にこちら側で提案してみたりと、使い方次第では割と次につながりうるものなので、時々は参加してみるとよいと思う。

もともとあるものを見直し、改めて開拓する。

 ネット上のみでの交流以外にも、今既にある経験や人脈を活用するのは言うまでもなく大切である。私の場合でいえば、前職の同僚で退職して独立して開業されている方、家の近所の人、家族親戚やその知り合い等可能な限りのツテを洗い出しつつ、まずはご挨拶に伺うことにした。受験生活で引きこもり気味になっていたので久しぶりにというのもある。
 都会に住んでいると近所付き合いが薄めになるので難しい部分はあるだろうが、これはあとあと聞いてくるかもしれない。町内会やマンションの組合、PTA等でたまたま役員をしているなら、さりげなく雑談の合間に事情を振っておくと、もしかしたら何かしらそこから先つながっていくかもしれない。
 その際に行政書士をもうじきやる予定ということだけ伝えてもおそらく伝わりにくいので、今目の前でご挨拶している人と関連しそうなところから何ができるのか?は意識しておいたほうが良いと思う。仮に何もなかったとしても、他の人につなぐことも可能にはなるだろうし、そのように準備して動いていた。

受験生交流会の開催

 本試験後に夏頃面接でお世話になった現役の先生の所へご挨拶へ行った際、非常に話が盛り上がり、全面的なバックアップを得て受験生の交流会を開催することとなった。スペースで全国どこの相手でも話ができるのが非常にありがたいが、やはり対面での交流もそろそろやりたいと思っていた所であったのでこれは本当に渡りに船であった。

※当時の交流会開催案内の記事
行政書士受験生の交流会開催のご案内|テツノトリ (note.com)

※交流会の開催報告と他の分野にも通じる経験の記事
オフ会の様相の交流会に参加しておくことの意義|テツノトリ (note.com)

構想を計画に落とし込んでいくこと

 私の場合でいえば、引き続き無職であることには変わりなく、合格発表までの約2か月半の間に開業のための準備を休み休み始めることにした。独立開業するにあたって何をやる必要があり、何をやっていきたいのか?まずは頭の中の整理から始めることにした。開業にせよ何にせよ、構想を計画に落とし込む作業は必要である。ここでもスプレッドシートを利用した。とりあえずできることは少しずつやってみた。正月を開けても明確な方向性や方針が明確に定まらなかった上に、やったこともないことをいろいろと想定しながらになるので結局無駄になるかもしれないことは一旦度外視して、休憩をはさみつつ可能な限り検討していった。

  • 開業準備作業タスクリスト

  • 要素読法令

  • 業際問題関連諸法令のまとめ

  • HP記事候補メモ

  • 業務方針メモ

  • 参考にすべき先生方のHP一覧

  • その他参考情報リンクとメモ

 といった具合でシートはみるみる増えていった。必要に応じて図書館や大きめの本屋にも足を運んだ。役所のHP等ネットから得られる情報もあったりするので、試験後に読んだ本は10冊かそのあたりとあまり数は多くないが、何度も読み返したほうが良い類の本もいくつかあったため実際には数多くの本を読むのはなかなか難しいと思う。
 とはいうものの、合格発表を迎えてもなおこの分野を専門にというものが明確には決まらず、とりあえずこちらの方面をやることにしてあちらの方面は自分ではやらないことにするという程度にしか決めることができなかった。そこが明確な人は本当に動きが早い。


未来の行政書士試験受験生へ

 これから行政書士試験を受けようと思った方に伝えたいのが、過去の行政書士試験合格者が何をして合格したのか?を調べてから勉強を始めることである。いわゆる合格体験記や受験記録を複数読むことをお勧めする。受験資格がないため、勉強開始時点の知識量や受験勉強中の環境、受験する目的までもが人によってバラバラであり、人それぞれの合格の仕方がある。したがって、そのような類の話を読む際は、スタート地点でのスペックや、勉強期間中の状況がどうであったのかは特に留意しておく必要がある。
 一つ読んだからといって、それをそのまま自分にも当てはめることは無理があるが、複数読むことによって共通して見えてくるものがいくつかある。
 私はこれに気づいたのが二度目の本試験終了後であった。勉強開始時期に読んでいれば、違った結果になったかもしれない。合格するためにはどれぐらいのものが求められるのか?何をどこまでやれるようにしておく必要があるのか?残された時間から逆算していつの時期にどこまで到達しているのが望ましいか?ただ試験日に向かって勉強するのと、ざっくりでも構わないので計画を立てて勉強するのとでは、やはり勉強の仕方は変わってくる。合格体験記や受験記録にはそのヒントが随所にちりばめられている。以前いくつかの過去の合格者の受験記録を紹介する記事を執筆したので改めて紹介しておく。

受験記録という名の読み物紹介(行政書士試験)|テツノトリ (note.com)

 再び行政書士試験に挑まれる方については、既に本番での失敗の経験を見つめ直して教訓は得られたのではないかと思う。足りなかった要素がどこかにあったからこそ届かなかったわけである。どこが何点で、総じて何点足りなかったのかは人によって違ってくるので一概に言えないところであるが、知っているはずだった知識がブレていたり、本番で引き出せなかった部分が必ずあったはずである。私も一度目の受験ではそのような部分が多く見られた。
 問題を解くにあたっての知識はもちろんではあるが、目の前の問題を解くにあたっての様々な負け筋を徹底的に排除するにはどうすればいいのか?人それぞれ現状や課題が千差万別かと思うので、一度時間をとってゆっくりと整理する時間はどこかで定期的にとっておいたほうがよい。

 これは行政書士試験に限った話ではないけれど、『どこが足りなかったのか?』『なぜ足りなかったのか?』その原因がわかったとして、『それを解決するにはどうすればよかったのか?』『そのためには何が足りなかったのか?』『見落としている視点はないか?』深く、深く、考える。心が折れそうになったときは、もともとどうして始めることにしたのか?と初心に帰る。あきらめずに道を探せば全体としてはなんとかならないことはない。
 勉強に注力する必要こそあれど、好きなものは完全に封印する必要はなく、むしろ好きなもののために挑戦してほしいと思う。

最後に

 もしも最近の私の状況だけを見て、急に人が変わったように感じられるという方がおられればそれは違うため、この際にここで書き残しておく。戦力外通告からの這い上がる経験は今までにも何度かあったわけで、自己の生存のために常にどうすれば生き残れるのかを考え続け、権利を勝ち取り続ける半生だった。取り入れられるものは取り入れ、考えに考え抜いて努力してきた。それでもなお、だめだったことも当然あった。
 この記事を読んで、たまたまうまくいったから書いたのだろう?と思われる方がいるかもしれない。ここまでうまくいった点がたまたまである可能性は否定しないが、可能な限りの負け筋をケアして徹底的に負けの可能性を最小化した結果がこれである。得点マウントがどうこうというしょうもないことを気にしている人がいるようだが、そこをどうこういっているのであれば、今までの経験を活かしてどうすればできるようになるのか具体的な改善策を建設的に書き残しておくなり共有することに注力すべきであり、足りていない部分があれば積極的に他から学ぶべきである。模試の点数などナマモノではあるが、採点基準が明瞭な限りにおいては、その時点での一定の客観的な指標となる。1年目の9月の模試分から何点であろうと記録としてツイート改めポストし続けていた。大半の人にはおそらく記憶されていないだろうが、私にとっては自分が歩いてきたせめてもの足跡のようなものと捉えていた。
 なお、何点で合格しようが180点以上であれば等しく合格であり、開業登録の際には何の関係もない点は当然理解している。試験内容もお世辞にも直接実務に関係するとは言いにくい点もまた同様である。試験合格ルートで行政書士開業を選択するのであれば、その後の実務や営業方法など、個人事業主として必要なことをまた一から学ぶ必要がある。もっとも、ここもまた人によって今までの経験値がまるで違い、スタート地点がまるで異なる点もまた留意しておく必要がある。そして範囲は際限がなく、目標も人それぞれ。よくもわるくも自由であり、可能性は無限大である。そういう意味では、本当にこれからが本番である。

 私の最低目標は、2年以内にあくまで行政書士に転職して生計を立てていくことである。これは1年半前から変わらない。そういう意味では今回無事に合格できたというのは、ある意味で予定の範囲内であった。逆に予定通りにいかなければ、今年以降の予定がだいぶご破算になっていた。そういう意味では一旦ほっとしている部分もあるにはあるが、当初予定のリミットまであと約半年少々であり、依然として落ち着かない点はある。それまでに目途が立てられなければ、非常にまずいことになるだろう。
 『自分がいる場所こそ自分の居場所』というのは今までの半生で得た教訓であり、便利な家を手に入れ、家族も猫もひとまず一旦手に入れた。ただ長生きしようというのではなく、自分のやりたいことをやる人生を実現する方向に舵を振り切ってしまった。人生は一度きりしかないわけで、どうしてもそこをあきらめたくなかったのである。

 『自分がいる場所こそ自分の居場所』とはいったものの、そんな私に応援のメッセージをくださったフォロワーの皆さま、伊藤塾の講師の皆さま、秒トレアプリスタッフの皆さま、数々の模試を作成いただいた大手予備校、私のわがままを追認してくれた家族、疲れた時に様子を見に来てくれた猫、その他大勢の方々に改めて感謝を申し上げるとともに、これから先も引き続きのご指導ご鞭撻を改めてお願いし、この拙文を締めくくることとする。

 この記録が今後の挑戦者の何かしらの一助となれば幸いである。

『どうすればできるのか?』を常に考え続けた1年半だった

おわり

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