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棚卸って、何のためにやってるの?

こんにちは。SKPです。
小売店や量販店などで働いたことのある人は「月末や期末に『棚卸(たなおろし)』というものをやったことがあると思います。宝飾品などの高額商品を扱うお店では簡易的に毎日ということもありますね。

今回はそんな「棚卸」について紹介します。

棚卸とは

『棚卸』という言葉は「棚から商品を卸し(下ろし)てきて調べる」という意味ですが、分かりやすく言うと「在庫の数・金額のチェック」をすることを指します。

何故このようなことをやっているのでしょうか?もちろん「盗難がないかのチェック」でもありますが、簿記・会計の上でも棚卸は大切な意味があります。

決算書などの会計帳簿の売上原価を確定させるためには、棚卸を行う必要があるのです。改めて売上と原価の関係を見ていきましょう。

700円の商品を仕入れて、1,000円で売った場合、売上は1,000円・売上原価は700円です。取引がこれだけであればすぐに計算できるのですが、一般的に物販のような商売は、先に商品を仕入れて、それから商品を販売します。

先ほどの700円の商品を100個仕入れたとしましょう。そうすると仕入は70,000円(700円×100個)です。そのうち、今期で売れたのが80個だとすると、売上は1,000円×80個で80,000円ですね。

この場合、決算書に記載されるのは「売上高80,000円 売上原価70,000円」でいいのでしょうか?売れていない20個分はどうなるのでしょうか?

売上と売上原価は期間を対応させる必要がある

『決算とは』『損益計算書とは』で紹介しましたが、損益は1事業年度(1年間)で区切って記載・報告をします。その「1年に区切って報告」を正しくするために、次のようなルールが定められています。

損益計算書原則三B、実現主義の原則
売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。(以降省略)

損益計算書原則一C、費用収益対応の原則
費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。

簡単に書くと、売上は『実現(販売・引渡が完了)したもののみ』をその期の売上とする。つまり「売れる予定」は入れてはダメ。

仕入(売上原価)は「売上が実現していない」ならば、『その売れていない部分』は入れてはダメ。ということです。

この『売れていない部分』が俗にいう「在庫」で、「棚卸」で数えている部分になります。先ほどの例でいうと、残っている20個分が「在庫」となります。棚卸で数えている部分がこの20個ですね。

この「20個の在庫(700円×20個=14,000円)」分を仕入高から差し引いて、売上原価を計算します。なお、仕入自体は100個分行っていますので、仕入は70,000円と書いて、あとから在庫分14,000円を引く、という書き方をします。損益計算書の書き方に合わせると、次のようになります。

 売上高           80,000円 
仕入高        70,000円     
期末棚卸高 (▲)14,000円     
売上原価          56,000円
売上総利益         24,000円

このようにして、売上原価を計算します。この「期末棚卸高」は翌期には「期首棚卸高」となり、翌年の仕入に足して原価に含めるということをします。「期首に残ってたけど、期末にも残ってる」という場合は、「その分を足して・引く」という計算になるので、損益には影響を与えません。

ちなみに簿記3級で習う繰越商品の期末整理仕訳「仕/繰・繰/仕」は、上記の期首在庫・期末在庫の処理を表している仕訳です。

長期にわたって滞留している、つまり売れ残っている在庫は、損益に影響を与えません。つまり「在庫として残っていて、倉庫を使っているだけ」という状態です。

『在庫処分セール』というのは、少し安くしてでもこの「在庫の滞留をなくして、商品を現金化(売上=収益化と原価=費用化)したい」という企業側の思惑の現れと言えるでしょう。

今回は「棚卸」について紹介しました。「皆さんが棚卸でお店の商品を数えている」のが、勤めている会社や企業の「決算書」を作っているんだ、と知っていただければ幸いです。

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