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地域教育の拠点/シン・フリースクール

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2023年1月から始まった、「これまでにない新しい教育施設」「地域教育力を最大限に生かす場所」を創出するプロジェクトを、構想段階から記録しています。 共にこの場所を創っていく「…
運営しているクリエイター

記事一覧

開くのを待たずに開けにいく~一般社団法人設立

 新しい動き出しを4月1日にしてしまうのは、どうにも学校っぽくて私が運営するフリースクールのコンセプトとは合わないのだけど、沸々と熱い思いがこみ上げてきて、カタチにするのはいつもこの時期なのはどうもしょうがないことのようだ。  この4月1日に、私は一般社団法人の代表理事となった。法人名は 「まなびのとびら岐阜羽島きょういくラボ」  これからやりたいことってすごく実験的だからラボ感出していこ!と思ったり、新幹線と高速道路がある地名を使わない手はないと盛り込んだり、でも願いを

Aさんの卒業

紹介したいAさんの事例  Aさんとの出会いは、約2年前。彼は中学1年生の終わりで、小学5年生からの不登校を継続していた。  当方がフリースクールになる前のオープン間もない頃、「この街にはそういう場所がない」と嘆き模索していたお母さんが訪ねてこられ、そういう声もあって当方はフリースクールになった。その後すぐにお母さんと一緒に来たAさんは、完全に他者に心を閉ざしていた。聞かれたことには最低限答えるけど、それだけ。いつも真っ黒な長袖の服を着ていた。  彼は勉強が得意である。しか

2023→2024 偶然の産物

2023年総括振り返ったら、うっすらと道ができてた  もう2023年の総括を書かなあかん時期?!  というのが、本音である。疾風怒濤、あっという間の1年だった。これを書くにあたって、自身の2022総括を読んでみて驚いた。1年前は現在の運営状況になる前の状態で、フリースクールは午後からで、同志スタッフは4人で、フリースクールの生徒は5人くらいだった。  「みんなの学び舎ことのは」が「地域教育の拠点/シン・フリースクール」としてどのように成長しているのか、それをつぶさに観察し

「ゲームは人生に効く」に関するいくつかの考察

不登校の子どもとゲームの関わり  ここで言う「ゲーム」とは、対人的なボードゲーム・カードゲームではなく、いわゆる「テレビゲーム」の類を指している。  不登校児童生徒は、本当によくゲームをしている。「YouTube漬け」もしばしばあるが、これは一定期間を過ぎると飽きてくるのか、知らないうちに視聴時間が減るケースが多く、「ゲーム漬け」はその持続性において驚異的なものがあると思っている。  不登校児童生徒がゲームをしている場合、これまでに出会った子どもの様子からパターンをいくつ

石とおひねりは同時に飛ぶ

認めたくないけど病んでいた 2023年10月から今週にかけて、怒濤の日々だった。 9月末から10月1週目の秋休み明けにかけての、フリースクールのお問い合わせが激増。そこから会員として定期的にこちらに通えるようになった子が増え、当方フリースクールは一気にフリースクールらしくなった。 いつも誰か子どもがいるし、そこかしこで活動が起きる。子どもたちが増えたことで、子どもたち同士の人間関係の形成に頭を悩ませるのも嬉しい悲鳴というか、とにかくとても楽しい毎日だった。 反面、ここ1

「好き」と言いたくて ~フリースクール運営代表としての確かな学びの備忘録~

 フリースクールや探究型学習塾を運営していて、関わりのある子どもたちにこれまでに一度も「学校の勉強」を強要したことがない。  「みんなの学び舎ことのは」でやりたい「学び」は、誰かから与えられるものであってはいけないと思っている。本来、学びは「自らつかむもの」だと考えている。学校での画一的な一斉授業や進学塾の詰込み型の学び方が一般的となっており、「座っていたら投げかけられるもの」が勉強だと思い込んでいる子の多さを憂う。  こうして本来的な意味の学びを見失った子どもは、あらゆるこ

【シン捗報告】シン・フリースクール3ヶ月

 今年度から「地域教育の拠点/シン・フリースクール」を名乗って活動し、早くも3ヶ月が経過した。この辺りで一度立ち止まって、この大きな動き出しを確かなものにするためのふり返りをしておきたい。  これから書きたいことを端的にまとめれば、この3ヶ月は「底知れない地域の力を感じた」「たくさん集ってくださった同志の心強さを感じた」「僕自身のスタンスを明確化できた」そういう期間だったと思う。それぞれについて書き記していく。 地域の力~アツい善意と眼差し  この3ヶ月の間に、フリースク

「不登校を予防する」に対する本音

不登校は予防できるか? 増え続ける不登校。昨年度調査の約29万人をはじめ、数値的な上昇は留まるところを知らない。  それに対して、文部科学省の方針は「不登校の予防としてのICT機器の活用」や「不登校が増えないための魅力ある学校づくり」など、これ以上不登校児童生徒の数を増やしたくないという意識による施策が目立つ。  私が参加する自治体の会議においても「なぜこんなに増えているのか」「原因は何なのか」と質問する方がいらっしゃるが、「学校に行きたくない理由」は個人で異なることはも

「みんとしょ」の魔力~祝・岐阜県初みんとしょオープンその後

図書館を一番楽しんでいる人 当方の「みんとしょ」がオープンして約2週間が過ぎた。  実に多くの方に、棚に本を入れていただき、本を借りて楽しんでいただいている。この4月からの「地域教育の拠点/シン・フリースクール」を創りあげるプロジェクトに賛同してくれている同志でさえ、  「わざわざお金を払って棚を作りたい人なんていないのではないか」  「フリースクールへの寄付として、という謳い文句にしないと集まらないのではないか」  と多くの心配を寄せてくださっていた。そんな心配をよそに、じ

誰が為に②~フリースクールの作り方

この記事の在り方の説明 この記事が掲載されているマガジン「地域教育の拠点/シン・フリースクール」では、2023年から創っているこれまでにない教育施設ができていく過程を、構想段階~人集め~活動の様子、と余すところなく紹介していこうと思っています。  マガジンとして綴っていく目的は、第一には「軌跡の記録」、第二に「より多くの方へのフリースクールや教育を取り巻く現状の周知」ですが、第三として「若手教員や教育関係者への私の構想する教育実践のアピール」及び「これからフリースクール作ろ

¥500

誰が為に~学校の変え方

この記事の在り方の説明 教員を辞めて3度目の春。また、挑戦の季節が来たのだ。  この記事が掲載されているマガジン「地域教育の拠点/シン・フリースクール」では、2023年から創っているこれまでにない教育施設ができていく過程を、構想段階~人集め~活動の様子、と余すところなく紹介していこうと思っています。  マガジンとして綴っていく目的は、第一には「軌跡の記録」、第二に「より多くの方へのフリースクールや教育を取り巻く現状の周知」ですが、第三として「若手教員や教育関係者への私の構

¥500

かんばんをたてる

あえて看板を出していなかった理由の裏にあるもの 「みんなの学び舎ことのは」は、看板がない。  入り口を入ったところに、ポスターサイズに引き伸ばしたロゴマークが、額縁に入れられてイーゼルに乗っかっているが、これがオープン当初玄関先に置いていた看板である。2021年7月7日のオープン日からおよそ2ヶ月、台風一過の強風に飛ばされて、額縁の留め具が破損、それ以来屋外では使用できなくなった。直せなくはなかったが、同年11月にフリースクールのオープンを控えていたので、「あえて」屋外の看

大型書店が消えた街で

 「地域教育の拠点」「シン・フリースクール」を創っている真っ最中。その中核に据えているのは、「たくさんの本によって生み出されるよい乱雑さ」が実現された空間である。私設図書館を創っている。  私が「地域教育の拠点」の機能として、図書館が必要だと思った理由は他の記事にも書いた。  今回書くのは、その理由の二つ目だ。 「本に呼ばれる」をありふれた現象に なぜ今、図書館なのか。それは「子どもたちに本に呼ばれる経験をしてほしい」からだ。  この「本に呼ばれる」という表現は、私の言

同志へ~シン・フリースクール概要

 新しい運営体制のために、「同志を集める」という話を綴った前回。実際に少しずつ同志が集まりつつある今、これから実際の運営に必要な「共通理解」をどう作っていくかを考えている。「同志に的確に説明するため」でもあるし、「自分自身の思考の整理のため」でもあるが、4月からのシン・フリースクールについて書きまとめてみる。 理念子育てを親だけの責任にしない  私がここで創りあげたいのは「地域教育の大成功例」である。ここでいう「地域教育」という言葉、インターネット検索で探す範囲ではあまり