6.ソーシャルイノベーションを呼び起こす「意味」を超える「意義」の力
この連載について
前回「クリエイティビティを解放せよ」はこちら
SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA2020 は2020.11.7-15に開催。
「HOW -今を、これからを、どう生きるか- 」をグランドテーマにお届けします。
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北村
今回のテーマは「意味と意義の境界線」です。前々回、「仕事」をテーマに語った中で、「仕事とは他者から価値を認められた自己実現である」というひとつの定義が生まれました。続く前回は、どうしたら、自分自身の好奇心から仕事を生み出せるのか、鍵となるクリエイティビティについてお話いただきました。今回はさらにお話を進めて、「では、その仕事が生み出す価値とは?」という問いを「意味と意義の境界線」を探ることで掘り下げたいと思います。
「意味=都合」で「意義=価値と情熱」?
双方が呼び起こす現象の違い
北村
国語辞典を引くと、意味は「行為・表現・物事の、それが行われ、また、存在するにふさわしい、価値」。 意義は「行為・表現・物事の、それが行われ、また、存在するにふさわしい積極的な(すぐれた)価値」 ほぼ同じ語義ですが、意義のほうがより能動的・行動的なニュアンスがあります。
SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA2018では、「スポーツの本質」のセッションにおいて、スポーツが持つ意味を超えた意義についてお話がありました。
スポーツの本質 2018/9/17 11:30-12:50 @表参道ヒルズ
スポーツによって国際貢献を身近なものにできます。たとえばJリーグでは、サポーターの子どもが大きくなって着られなくなったユニフォームの提供を呼びかけ、東ティモールやスリランカ、ツバルといった紛争や自然災害などの社会課題をかかえた地域の子どもたちに届ける活動を続けています。スポーツを介在させることで国際貢献のハードルを下げ、日本にいながら世界に興味をもってもらうきっかけになります。(山下氏)
「今治へ行こう」の活動を通して、東名阪のサラリーマン60名と共に元日本代表チーム監督の岡田監督に会いに行き公式戦を観戦し、夜は岡田さんと飲みに行く活動をスタートしました。すると、2回目以降は参加したサラリーマンの方が「自分の生きがいなんだ」と。「会社ではそんなに居場所もないし、課長にも部長にもならないけれど、これに参加している自分は非常に嬉しく、役に立っている気がしている」と運営を買って出てくださいました。スポーツを通して、誰かの生きがいが創出できました。(石井氏)
<登壇者>
株式会社スポーツマーケティングラボラトリー
執行役員石井宏司氏
公益財団法人日本スポーツ協会広報専門委員会委員
/株式会社グリッド 代表取締役社長 田中安人氏
株式会社Jリーグマーケティング
専務執行役員 山下修作氏
北村
こうしたプロジェクトは意義がモチベーションになっているのかなと思いますが、お二人が進める具体的なプロジェクトでは、意味と意義をどんな風にとらえていらっしゃいますか?
金山
僕は、そもそも「『意味』と『意義』ってどう違うんだろう?」と問いを立てて考えてきたんですね。今日は長田さんとお話ししながら、その答えを自分なりに探求できればと思います。例えば、広告会社の仕事だと、関わるメンバーが誰も乗ったことがない軽自動車の広告の仕事でも、予算が大きければ一生懸命取りに行く。そこには、「意味」はあるけど「意義」はないのではないか、というようなことなんですけれども。
SIWのトークゲストでお呼びしている人たちの共通項は、「意義深い」ことを実践していることだと思っていて。じゃあ、意義深いことって、何をもって意義深いと言えるのだろうかと気になっています。その境界線を探ることで、具体的なプロジェクトをどんなふうに仕分けできるのかに興味があるんですよね。
僕は、SIWっていうプロジェクト自体が、意味ではなく意義側にあると思っています。誰のためになっているのか、明確に想像できていない。そこが反省点でもあり、一方で、だから面白い。「きっと誰かのためになっている」って、意味としては弱いかもしれないけど、意義としてはありなんじゃないかと。
明確に想像できていないけれど、僕自身の興味関心や学びたいことを学ぶ場が、誰かの興味関心と繋がるのではないかと考えながら、SIWをつくっています。
長田
SIWについては、私も同じように思っています。マーケティングの世界で語られる「ペルソナ」に描き出せる誰かのためっていうより、何かを感じて来てくれた人、そこからさらに繋がっている人の中に、何か一つでも残ってほしい、という思いでやっています。
意味と意義の違いを考えたことがなかったけれど、「私にとって意味がある」とは言うけど、「私にとって意義がある」とはあまり言わないですよね。一方で、社会的意義とは言うけれど社会的意味とは言わない。だから、意義は目線が全体的で外向きのときに使っていて、意味はどちらかというと個別性が強くて内向きなのかな。
意義のほうのプロジェクトだと思ってやっているのが、2018年に立ち上げた「Next Generations」です。「スケートボードなどのストリートスポーツをしたい人ができる場所が少ない」という少数の人たちの課題に対して、街として受け入れたらどうだろう?って考え始めたのが起点で、カシオさんと渋谷区に一緒にやりませんかと呼びかけ、コンペティションイベントが実現しました。
Next Generations
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/bunka/sportsnavi/detail/Next_Generations.html
ストリートスポーツって、なんとなくスポーツの主流ではないような雰囲気があったのですが、「スケートボードはアーバンスポーツであり、個と多様性が掛け合わさった存在だから」とプロジェクト化してやり続けてきたら、2020年東京オリンピックでは正式種目になり、実は日本人が強い競技だと気づいてもらえて、「応援する価値あるよね」って人々が変わってきた。そうなってくると、スケートボードをやりたい人たちの個人的な課題だったことが、「社会にとっても必要、街として取り組もう」っていうふうに、参加する側も受け入れる側も意識が変わってきた。
結果的に、SIWと同じで「誰のため」と限定できない。強いて言うなら「街の未来」や「未来を生きる子どもたち」のための「意義」があるから存続しているのかなと思います。
金山
人が人の情熱に触れる瞬間には、掛け値なしの価値があるよね。いいプレゼンテーションでも事業の紹介でもそうだし、「Next Generations」みたいに15歳以下の子どもたちがほんとに真剣に楽しそうに、技を習得しようとしたり、みんなの前でパフォーマンスをして感動を生もうと思っていたりするような。
情熱なのか熱量なのか、いずれにしても、熱に触れることが最高の学びの瞬間なんじゃないかと思っていて。そういう瞬間を、仕事を通じて手を変え品を変えいっぱい作っていきたいなって思ってるんですよね。それはやっぱり、誰か具体的な人物像を想像してやってるわけじゃなくて、時代が作れるといいな、みたいな感覚なんですよね。石川善樹さんがセッションで話されていた、「時代は『運』と『学問』でつくられるという話とも重なるかもしれません。※2.幸せや豊かさは自分の言葉で紡ぐもの 参照
長田
「Next Generations」をやると、参加者の人やオーディエンスの人たちが笑顔になったりとか、「こんなイベント作ってくれてありがとう」って言ってくれたりするんですよ。「渋谷という街の中で踊ったことなかった」って。ヒーローやヒロインが生まれる瞬間を見ていると、SIWでもそういう瞬間ってあるな、と。これって、「意義」なのかなと思う一方で、自分にとっても次なる何かになる「意味」もあるとも思える。境界線はどこにあるんですかね?
金山
さっきの広告会社の予算の大きな軽自動車のプロジェクトの話に戻るんだけど、競合プレゼンに一生懸命勝ちに行くことって、会社の売り上げとか自分のプライドにとっては意味はあるけど、好きでもなく乗った経験もないモノが売れるようにすることに自分の時間や才能を費やしていいんだろうかって思うんです。
意味を意義に昇華させるシナリオ
北村
「ソーシャルデザインの本質」の中で、NTT研究所でLiving Labの活動をする木村さんからは東洋的な利他の精神のお話がありました。
ソーシャルデザインの本質 2018/9/17 13:20-14:40 @表参道ヒルズ
アジア人として初めてノーベル経済学賞を受賞したインド人経済学者アマルティア・センは「西洋人は個を大切にするが、東洋人の私たちは誰かとのつながりの中で生きることを重要だと思っている」との考えを示している。(木村氏)
<登壇者>
NTTサービスエボリューション研究所 主任研究員
/デザインイノベーションコンソーシアム フェロー 木村篤信氏
世界ゆるスポーツ協会 代表 澤田智洋氏
グリー株式会社、グリービジネスオペレーションズ株式会社 代表取締役社長 福田智史さん
(モデレーター)
株式会社ロフトワーク 代表取締役、一般社団法人渋谷未来デザイン フューチャーデザイナー 林千晶氏
北村
つながりの中で生きるといっても、具体的に想像できない誰かのために、あるいは時代や社会、みんなのためにという、意義はあるけれどもとらえようによっては漠然とした目的で具体的な仕事を進めていくのって難しいですよね。それこそ、「自動車メーカーのために軽自動車を売りたい」という意味的なモチベーションのほうが形になりやすいかもしれない。セッションでは、そんな中でも意義ある現象を作ろうとされる、もう一押しで具体的になるかもという提案が、アントレプレナーのお二人からありました。
アグリカルチャーの本質 2018/9/16 13:30-14:20 @EDGE of
高度経済成長期に起きた農業の効率化で、生活とアグリカルチャーが切り離されてしまった。失われてしまった「自分たちが食べるものを自分たちで育てる」という大切なカルチャーを取り戻すために、都市生活に里山をインストールしたい。渋谷に新築中のマンションに、ジムやプールじゃなくて農園を設置するプロジェクトを計画しています。
<登壇者>
株式会社プランティオ 共同創業者 CEO 芹澤孝悦氏
都市医療の本質 2018/9/16 15:00-16:20 @表参道ヒルズ
「リングエコー」という痛くない乳がん検診が受けられる機器を開発しています。これを、できれば渋谷のターミナル駅の中に入れたい。美容院やエステサロンのように、気軽に立ち寄れる検診施設を作りたいんです。(東氏)
市民が日頃から自身の健康データを所持する時代をつくりたい。ブロックチェーン技術を活用すれば安全に情報を管理・共有・データベース化することができ、希少疾患や難病の診断に効率的に辿りつける。未病の促進にもつながります。(水島氏)
<登壇者>
株式会社Lily MedTech 代表取締役社長 東 志保氏
Facebook Japanディレクター 馬渕邦美氏
国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター長 水島洋氏
北村
渋谷未来デザインや観光協会という立場で行政と企業の間に立って働くお二人は、意義はあるけれど都合的な意味は定義しづらい活動をどう支援しようといらっしゃいますか?
金山
僕らは、渋谷未来デザインみたいな組織を作って運営することで、いろんなプロジェクトの社会の中での居場所を作ったりだとか、目的や可能性を見出したりしています。どんなアクションやプロジェクトにも意味はあるんだけど、それらを意義化できるシナリオを付与することが大切なんですよね。
プランティオの芹澤さんとは、このセッションから1年半経った今も継続してプロジェクトを作っていて、商業施設の屋上空間にいくつか野菜をつくる拠点ができ始めています。共給共足っていう概念で、みんなで育ててみんなで栄養源をシェアしていくコミュニティのあり方がサービスとして実装に入っている。僕としては、さらに意義の幅を拡張して、渋谷区の公園や植物園にプランティオの思想をインストールできないかなと思って動いています。それをするときに、「これは新しい観光資源、地域資源、ヒット商品の作り方ですよね」と、意味的な価値を付与できるシナリオを芹澤さんと日々語っています。
子どもたちがみんなで植物のことを学びながら育てて、例えばミントだったら地域のお店に出荷するリアルなビジネス体験をしたり、周りの飲食店はミントアイスとかモヒートとかをその地域の特産品にするみたいなことが起こりうるんじゃないかと。
長田
わたしは、Lily MedTechの東さんとずっと繋がっていて、どことどんなコミュニケーションが必要で、実証実験をどうやればいいか、相談をいただいてます。SIWがきっかけになってつながった方で、「渋谷で実験してみたい。事業をスタートしたい」という方が増えている。そういう意味でSIWって重要な意義があると思っています。企業軸だと一社が儲けるみたいな都合の話になっちゃう。だけど、やっぱりひとりとか一社だけが頑張ってもダメじゃないですか。「これ、未来にとって絶対いいんだけど」って言っても。
だから、渋谷未来デザインやSIWを通して、関わっている人たちみんなで生み出すかたちをつくっていけたら、「みんなのために」にたどり着くシナリオができるのかなと思っています。
金山
意義あるものって、そもそも引力があって人を惹きつけるなと思います。都合を押し込むような話には引力がなくて、一撃必殺で理屈こねて刺しに行かなきゃいけないみたいなことになるんですよね。ほんとにオーガニックに価値があるのか、理屈をつけないと価値が宿らないのかの間に、人が寄ってくるか寄ってこないかの境界線がある気がする。
これからのMarketingは、意義を探しながら時代をつくる
北村
ひとりの想いにみんなを惹きつけて「みんなごと」にするために、という話でいうと、「ソーシャルデザインの本質」の中で澤田さんが、プロジェクトを発展させる条件として「本質にいきすぎない」「ウェットになりすぎない」の2点を挙げました。これにロフトワークの林さんが「なぜ?」と反応して、面白い議論になりました。
ソーシャルデザインの本質 2018/9/17 13:20-14:40 @表参道ヒルズ
意義のあることって素晴らしいんだけど、本質的でウェットな正論だけだと発展しない。コンテンツとカルチャーで楽しくすることが重要。「!」を生む新規性と「そうだよね」っていう共感性を交互に入れていくバランスだったり、「!」と「?」を設計するのが僕たちの仕事なんです。(澤田氏)
<登壇者>
NTTサービスエボリューション研究所 主任研究員
/デザインイノベーションコンソーシアム フェロー 木村篤信氏
世界ゆるスポーツ協会 代表 澤田智洋氏
グリー株式会社、グリービジネスオペレーションズ株式会社 代表取締役社長 福田智史さん
(モデレーター)
株式会社ロフトワーク 代表取締役、一般社団法人渋谷未来デザイン フューチャーデザイナー 林千晶氏
北村
おふたりは人を巻き込むプロジェクトデザインやマーケティングのプロフェッショナルですが、意識していることはありますか?
金山
昔は参加してもらいたいから価値観を押し出して説得するプロジェクトメイキングをしていたのが、今は、相手に納得したいとか理解したいと思われる存在になって仕事をつくっていこうという感じがあります。説明しきっちゃわない、全てを明らかにしちゃわない。みんなの頭の中で、空想や妄想や期待や希望が膨らむような見せ方を意識している。完全にオープンディスカッション型にして、みんなでユニークなパズルをつくる。合意形成というよりは、みんなで妄想してるうちに「ないのがおかしい」みたいになるんじゃないかなって勝手に思っていて。共感より意図的な共犯関係をどうやって作るかみたいなことを考えてます。
長田
マーケティングも今、特にコロナの影響ですごい変わってきてると思っています。ちょっと前は、目的が企業の利益だけだと難しい状況が生まれながらも、それでもショートタームのKPIをどう達成するかを追求されながらマーケティングやプロモーション、コミュニケーションをやっていた。これが、コロナで前提から崩れた。そうすると、一番最初に削られちゃうのがマーケティングの費用なんですよね。会社にとって、イベントの費用ってなんだったんだろう?みたいな。
一方で、これからの社会にとって意義があるか、という目線を持っているものはなくならない可能性がある。だから、何がどうなってもなくならない社会的意義についてみなさんすごく考えるようになったと思うんですよね。オフラインでイベントができないといったことにとどまらない影響が出て、マーケティングの価値やあり方は、これからどんどん長期目線に変わっていくんじゃないかと思います。プロダクトをどのくらい売るために予算をとって何をするかって考えるのが今までのマーケティングだとすると、これからのマーケティング、特に渋谷未来デザインの仕事では、単純なゴールがないことが多い。「よい街をつくる」って、広すぎて。人口や税収は上がった方がいいのだけれどそれだけじゃなく、未来に向けたいろんなアクションを考えていきますってなったときに、自分のマーケティングってなんなんだろう?って考えるようになっています。マーケティングがどういうふうに役立つんだろうって。
金山
マーケティングスキルを使いながら街の物語を紡いでいくことが長田さんのやっていることのように思う。人の心をどう捉えるかとか、バタフライエフェクトをどう演出するかとかは、マーケターのスキルが活かせるけれど、仕事の結果は「物が売れる」とかでは原則的にはない。ゴールはなく、シナリオをつむぎ続けるマーケターみたいなことなんでしょうね。
北村
シナリオを繋ぎ続けるって面白いですね。連載第3回の「弱さの自覚がコミュニティを生み、異質性がコミュニティを強くする」の話題にすごく近くなっちゃうんですけど、「ソーシャルグッド」という言葉が出てきたように、「意義」と「意味」を作っていく中には、全体を見渡せてそのエコサイクルを想像し発信できる能力と、その全体の中のシナリオを繋ぎ続けていく事と、両方必要なのでしょう。今問題になっている、ビジネスと文化芸術の分断なんかを含めて、渋谷未来デザインが越境と境界をデザインして、意味や意義に向かって現象を起こしていくような、みなさんで時代を作っていく時代になるんじゃないかな。
金山
オールドスタイルのマーケティングって、マーケティングの教科書があってメソッド化されたフォーマットがあるじゃないですか。でも本来マーケティングって、ingが付いているから未来に向かって変化していくニュアンスがあるはず。それなのに、方程式とフォーマットに閉じ込めにいこうとする風潮があったなっていうふうに感じています。渋谷未来デザインは、ingのリアルなマーケティングを実践しているんだと思う。ずっとingで、いろんなことに反応しながら、市場や風潮、社会の認知を形成できるんじゃないかって、ずっと探しにいっている感じだから。
長田
渋谷未来デザインが土俵にしている街って、社会の縮図じゃないですか。いろんな人たちがいて、医療も教育も土木建築も全て包含している。そこで人が生きることをどうしていくのかなんてことを、マーケティングするって、到底メソッドやフォーマットに閉じ込められるものじゃない。
金山
これまでは、マーケティングもクリエイティブも広告もプロモーションも、なるべく最大公約数を取りに行く、シンプルに捉えていくっていうことがスマートに見えていた。だけど、地域とか街とか都市とかをテーマに仕事をしてみると、複雑なものは複雑であると全体把握する、全体認識することが大事だと思います。
僕が、社会的意義を追求するingの文脈で今年新しくフォーカスしたいテーマが、渋谷区の非受験組の子どもたちに向けた教育なんです。
教育って受益者が経済力のない子どもで、しかも、提供した価値がいつ芽を出して顕在化するかわからないという、都合的な意味でいうととてつもなくコストパフォーマンスの悪い事業なんですよ。だけど、見えない未来をよくするとか、時代をつくるということそのもので、社会的意義は大きい。そういう意味で、究極の意義側のプロジェクトだと思っています。
渋谷区の子どもたちは、小学校3年生くらいで中学受験組と非受験組に分かれ始めます。学習塾に通って、目的の学校に向かって一生懸命努力を重ねていく受験組がいる一方で、非受験組は非常に多様な興味を持っていたり、時間的な余裕があったりするんじゃないかな。非受験組の子どもたちを、渋谷区を代表する「違いを力に変える子どもたちクラスター」みたいにできないかなって思っていて。そういう子たちの新しい学び方をデザインすることに興味がある。受験組と非受験組ってコミュニティの分断があるってよく聞くんですよね。受験する子たちは勉強して頭がよくなっていくレールに乗っかっていて、ある程度裕福な家庭の子どもたちであることが多い。一方で、受験しない子は勉強が苦手か嫌いで、家庭もそこまで経済的に余裕がないみたいな見方がある。
じゃあ、そっちの子たちはもっとユニークな学びの機会が行政から提供されていて、想像力や感性、好奇心を育むことができたらどうなるか。人生を進んでいって、ユニークな興味領域を持った子どもたちが公立中学・高校に行ったあとに、AO入試で大学に入ったら、受験組の子たちと同じ学校にいましたとか、そんなことになるといいんじゃないかなと思うんです。王道レールじゃないところにいる子どもたちをさらにユニークにしていくっていうようなことができないかなって思ってます、今。
(2020/7/3 16:00-18:00 @online)
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to be continued to
vol.7 経済連鎖を超えて。これからの人間社会は「文化連鎖」でつながる
vol.8 ルールや規制は、感動を生む舞台装置。
構成・浅倉彩
SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA2020 は2020.11.7-15に開催。
経営者・社会事業家・クリエーターなど各界のキーマンがセッション。
会場観覧とオンライン視聴が30カンファレンスすべて無料。
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