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5.クリエイティビティを解放せよ

この連載について
前回「価値と価値観が交差する シゴトと社会と私の連鎖」はこちら

SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA2020 は2020.11.7-15に開催。
「HOW -今を、これからを、どう生きるか- 」をグランドテーマにお届けします。
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北村
前回、経済的な価値を自ら定義することができれば、自分の好奇心やワクワク、挑戦を仕事として認めてもらうことができるという仕事観をお話しいただきました。今日は、そこからさらに進めて、ワクワクが事業になるまでのプロセスを「クリエイティビティ」をキーワードに紐解いていきたいと思います。

金山さんは、好奇心やひらめきをどうやって仕事にしているんですか?

金山

ここ十数年、だんだん遊びと仕事の境界線がすごく曖昧になってきたり、遊び心の延長線上にクリエイティブ産業が育ってくる時代になってきている。まず、そんなふうに今という時代を捉えています。

その上で、ひらめいたり好奇心に心が惹かれるときはワクワクするんですよ。そこから、アイデアっぽくなるとドキドキするんです。誰に話そう、どういうふうに話そうって未来予測に入ると、ワクワクがドキドキに変わって、「あ、アイデアになったな」と感知します。そのアイデアを人に話して、人が「面白いね」って乗っかってきて動いてくるとプロジェクトになって、プロジェクトに専門知識を持った人が経営的な視点や財務的な視点を加えると事業になる。そして、このピラミッドのどの段階においても、そこかしこにクリエイティビティが必要だし、発揮されてくると思うんですね。

クリエイティブの再定義1

北村
脇田 玲さんのセッションでは、一見両極にあるように見えるアートとサイエンスのどちらにも、クリエイティビティがあることを見出していました。

アートとサイエンスの本質 2018/09/17 12:10-13:00 @EDGE of
脇田さんは、「あらゆるものにアートとサイエンスがありうる」と話します。「私が言う、アートやサイエンスとは“アプローチ”のこと。物理学や化学、生物学などのジャンルの話ではありません。サイエンスは普遍性(ユニバーシリティ)を起点にして、目の前に現れる、個別的なもの、つまり特異性(パリティキャリティ)を見る行為。逆に、特異性からみた、新しい普遍性へのアプローチがアートです」
〈登壇者〉
アーティスト、サイエンティスト、慶応義塾大学 環境情報学部教授
脇田 玲氏


金山
レオナルド・ダ・ビンチって、サイエンティストでもあるしアーティストでもあると言われてますよね。

彼は天才という位置づけなんですが、僕はクリエイティビティって人間なら誰もが持っている能力だと思うべきなんじゃないかというふうに、クリエイティビティを再定義したいんです。クリエイティブかどうかは他者が判断することだけど、クリエイティビティは誰でも持っている。

広告会社にいたとき、コピーライターとかCMプランナーとかがクリエイティビティのある人で、マーケターがクリエイティビティと戦略脳のハイブリッドで、営業はあまりクリエイティビティを求められてないと定義されていた。そこに対する違和感がすごくあったんですね。クリエイティビティは、別に特定の職種に閉じたものではないのではないか、と。

ずっと持ってきた違和感を掘り下げるきっかけになったのは野村萬斎さんなんです。狂言師でありながら、東京五輪の開閉会式のクリエイティブディレクターというクレジットを見たときに、ものすごい違和感と興奮を覚えたんですよ。野村萬斎って、クリエイティブディレクターなの?すごい時代が来たなと思って。言われてみれば確かに、狂言師ってクリエイティビティの塊でもあるよねっていうふうに思った。

それで、クリエイターと呼ばれる人たちが広告業界の中にしかいないと言っていた時代が閉鎖的で陳腐だなと思っちゃった。事業家だって、ビジネスクリエイターだと思うから。

クリエイティブとエンターテイメントは、アートとデザインの間に置かれる

北村
誰もがクリエイティビティを持っているとして、それが表出して他者からクリエイティブであると認められた先には、何が生み出されるんでしょうか?例えば、冒頭で金山さんがおっしゃったクリエイティブ産業と呼ばれるものの中には、アートやデザイン、エンタテインメントなどがありますけれども。

金山

20年くらい仕事をしてきて見つけた、「こうなのではないか」というひとつの理解としては、スキルには値段がつきやすいけど、パッションには値段がつきにくい。けど、つくときには爆発的に価値がついてしまうこともあるっていうことです。
クリエイティビティの表出のしかたには、スキル寄りのデザインと、パッション寄りのアート、その間のクリエイティブとエンターテイメントの3段階がある気がしていて。チャレンジングだけど、当たったときにめちゃめちゃでかい経済を生みそうなエンタテインメントを作りたいときは、パッション寄り・アート寄りで物を考えるようにしています。

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北村
今のお話を聞いて思い出したのですが、「アイデアの本質」のセッションで、作曲家の齊藤耕太郎さんが「それは誰の価値観か」というテーマでお話をされました。他の人の価値観に合わせたりとか、すごく計算してロジックで物を作るよりも、自分の直感で作った曲の方が上位にくることを実体験した、と。じゃあ、自分の価値基準をどう決めているのかというと、日々の料理や観葉植物の状態、きちんと掃除をすることを通して、心に栄養と癒しを与えて整える作業が重要なのだそうです。自分の基準や視座を整えた状態で異質なものに出会ったときにアイデアがポンと出てくる、と。

また、「アートとサイエンスの本質」のセッションで脇田先生に「アートって何ですか?」って聞いたら、アートは新しい普遍性を独自の視点から見つけることなんだ。世の中にはこういう側面もあるんだねという新しい普遍性を生み出すことなんだ、と。

みなさんのおっしゃることに共通した何かがあるように感じます。また、脇田先生からは「アートって誰のもの?」という問いがありました。脇田先生のお父さんが50代後半から突然アーティストになって、経済的・社会的にその状態を成立させることが難しかったそうなんです。だから、根底に「そんなに孤独にやるものなの?」という疑問を持っておられる。そしてアーティストの地位向上に取り組んでいるお立場から「アートはみんなのもの。アーティストだけのものじゃない。だから僕はアーティングと定義をしてます」という話があった。アーティストが生み出すものは、それを見る人や、パフォームする人、特に重要なのが批評してくれる人、全部がいて初めてアートになるんだ、と。その総体がアーティングだというお話をされていました。「みなさん、アートを特別視しすぎていませんか?」と問いかけていらっしゃったところが、金山さんの「クリエイティビティを一部の職種に閉じずに解放したい」という今日のお話と重なります。

長田
「お金を稼ぐ」イコール「人が期待しているものを作る」みたいなことでもあるから、自分のパッションや直感や独自の視点から生み出すのがアートだとすればアートはお金を生みづらくて、アーティストは苦境に立たされる状況がある。

だけど、レッドブルには「DJ」っていう職種がいたんですよ。結構びっくりしたんだけど、ただものを売るのではなく、人々が創るシーンやアクション、文化と一緒に成長する事業だったから、すごく親和していました。そう考えると、企業の中にアーティストの役割ができていくと面白いのかなって思いました。

自分の純粋な興味を表現していくアーティストのクリエイティビティが価値になるとしたら、それって一体、どういうことなんだろう?

金山

エンターテイメントの価値は、基本的には確認作業だと思っているんですよ。ラブストーリーの映画を見るときは、ラブストーリーを期待して、期待に応えてくれるかを確認をしにいくわけですよね。三谷幸喜さんの演劇を見に行くときは、三谷ワールドを確認しにいくわけじゃないですか。

それでいうと、アートの価値はオーディエンス次第なんじゃないかなと思ってるんです。

例えば美術館に行ったり、街中で物を見てアートだと感じるものとクリエイティブワークとして面白いと思うものの違いがどこにあるかというと、アートは哲学的に理解するもので、クリエイティブは文化的に理解するものという感覚がある。その作品を見たときに、頭の中に文学的理解が走るときはアートだとは置いていなくて。哲学的に解釈してみたいって思わせられるものが僕にとってはアートです。その価値が何かっていう問いへの僕なりの答えは、人間の中に眠る哲学性や、自分とは何なのかとか未知なるものを理解したい欲求を掻きたててくれるものがアート。

北村

「何これ?」って違和感を呼び起こす、という価値でもあるんでしょうか。シュプレー川に分身人間の彫刻があったりするのって、変で気になる。誰かがクリエイティビティを表現したものが、別の誰かの違和感を呼び起こし、それが好奇心となって次のアイデアの種になる。まさに、好奇心のセッションで金山さんが言及されていた、「人間にしかつくれないエコシステム。それは文化連鎖である」というお話につながりますね。アートの価値は、文化連鎖をつくることなのかもしれません。

全員で悩むことが、チームのクリエイティビティを創出する


北村
さて、次はチームのクリエイティビティについてお聞きしたいと思います。シルク・ド・ソレイユのクリエイティブデベロップメントディレクターのBorisさんとJamesさんは、「Old Meets New: クリエイティブ・コミュニティの創り方」というセッションで、次のようなお話をされました。

Old Meets New: クリエイティブ・コミュニティの創り方
            2019/9/15 16:45-17:30 @渋谷ヒカリエ ホールA

見たことないような誰も思いつかなかった最高のクリエイティビティを生み出すためには、年齢関係なく、幅広くいろんな専門家の話を聞いて、実際にある事業のネタを作ったあとは、すごく地道に辛抱強く修正を加えていくという作業なんだと。
<登壇>
シルク・ドゥ・ソレイユ Director-Expert, Performance development
Boris Verkhovsky
シルク・ドゥ・ソレイユ Senior Director of Creative and Business Strategy
James Tanabe

北村
金山さんと長田さんが、チームでクリエイティビティを発揮するために心がけていることはなんですか?

金山
チーム全体でクリエイティビティを発揮して、ワクワクドキドキしながら仕事をする環境で大事にしているのは、めちゃくちゃ悩むこと。全員に全体把握をさせ、悩みを伝播させて、みんなが悩むことが大事だと思っています。
僕が素晴らしいと思うほとんど人は、最もそのことに対して悩んでいる人。問いに向き合い続けて、締め切りがあってしょうがないから、その時点での最善の答えを出している人で、そこで終わっていない。例えばアウトプットがテレビCMだとしたら、素敵なクリエイターや編集マンって「納品した瞬間から後悔が始まる」って言っている人たちですね。だから、ずっと悩む。その悩みにこのレベルでしか答えを出せていないという状態をみんなで共有することが、チームのクリエイティブ力をあげていく最善の近道なんじゃないかと思うんですよね。分業が業務効率高いと言われるけど、クリエイティブプロジェクトみたいなことは、分業じゃなくて全体把握をしてもらうということが大切なんじゃないかなと思ってますけどね。

長田

今まさに、クラウドファンディング(※)でめちゃくちゃ悩んでますね。「これでいいの?」「あれでいいの?」と、やったことがないことをみんなでチャレンジしているから、誰も正解を持ってないんですよねたぶん。同じモデルがないから、一方から「こうであるべき」って言われ、別のところからは「こうかもしれない」と言われ、「どうしよう」みたいな話をしながら進んでいるから。こういうとき、持っている特性とか専門分野とか経験ができるだけ重なっていない人たちを集めながらやるのが自分は好きです。

以前の職場でも、ブランドチームもイベントチームも営業チームも、お互いがどうあるべきかを一緒に考えて議論していました。「これは言っちゃいけない」とか「営業チームは営業のことだけ考えるべき」じゃなくて、みんなで一つのゴールに向かって考えていって、そこから新しい発想や融合が生み出されるようなチーム作りがいいなと思っているので。

人をチームに迎え入れるときには同じような人じゃなくて違う分子を入れて、そういう人たちとやっていくことでチームのクリエイティビティが生まれてくるんじゃないかな。すでにやったことがあることにチャレンジすることもあるし、やったことあることを経験的に言う人がいてもいいけど、経験談で「こうあるべき」っていうふうに結論づけない。

北村
ありがとうございます。チームのひとりひとりが、誰も正解を持っていないという前提を共有した上で、自分の中にあるクリエイティビティを自覚して表出させ、みんなで次へいく。「豊かさと幸せ」の回でご紹介した藤原教育実践家の藤原和博さんの言葉-「一つの正解に縛られず自分自身と周りの人が納得できるそれぞれの答えを導き出す重要性」- を思い出しました。

次回は、クリエイティビティを解放するプロセスを経て経済的価値を生むためには?という部分を掘り下げ、みんなのためになる=意味や意義があることをどう創出するのかをテーマにお話をしたいと思います。
(2020/7/22 16:00-18:00 @online)

※ ウィズコロナ、アフターコロナに向けて、渋谷区の街の“抗力”を引き上げ、大きなダメージを受けているエンターテイメント産業やファッション産業、飲食業、理美容業など、渋谷の文化を牽引してきた業界を支援する「YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング」。4477万2735円を集め達成した。

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to be continued to

vol.6  ソーシャルイノベーションを呼び起こす
        「意味」を超える「意義」の力
vol.7  経済連鎖を超えて。これからの人間社会は「文化連鎖」でつながる
vol.8  ルールや規制は、感動を生む舞台装置。

構成:浅倉彩

SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA2020 は2020.11.7-15に開催。
経営者・社会事業家・クリエーターなど各界のキーマンがセッション。
会場観覧とオンライン視聴が30カンファレンスすべて無料。
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「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020」 11月7日(日)~11月15日(日) 文化、経済、社会、世界。今、どう未来を想像するか? social-innovation-week-shibuya.jp
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