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#122 宮沢賢治と大谷翔平(11)

(続き)

宮沢賢治の作品は、生命や自然など、現代で言うところのエコロジー的なジャンルとしてのイメージも強く、成功哲学的な自己啓発のジャンルとはあまり結びつかないかもしれません。

しかし、信仰を巡って父・政次郎と対立した際に花巻の市街地を太鼓を叩きながら修行して回ったり、晩年に健康を大きく損なった後も石灰の営業や営農指導に心血を注ぐなど、並外れた努力や行動を実行するという側面もあります。

賢治の妹・トシも、エマーソンを愛読していた時期があった模様ですが、トシが晩年ににまとめた「自省録」の中で、トシ自身が大学時代に、「極端に不自然な努力緊張の生活」「努力に緊張し、精神に駆り立てられた生活」を送っていた、という主旨の文章を残しています。

賢治やトシのこのような行動が、エマーソンの影響かははっきりしません。ただ、二人がエマーソンに近い思想を持ち、あるいはエマーソンの思想に共感しながら、実際に行動していた可能性もあると思われます。

これまで見てきたように、エマーソンは、その新しい思想「ニューソート」で、アメリカの当時の知識人に大きな影響を与えました。今なおその影響は続き、ニューソートに影響を受けた日本の中村天風から、大谷翔平も影響を受けたのではないかと思われます。

そして、宮沢賢治にもエマーソンの影響が見られます。

言い換えると、エマーソンの思想のルーツに、賢治が信仰した法華経等の東洋思想があり、そのエマーソンの思想は、賢治へ影響を与え、そして同郷でもあり、100年以上後の世界を生きる大谷翔平へ、何らかの影響を与えている可能性があるのです。

法華経、ニューソート、エマーソン、宮沢賢治、大谷翔平は、不思議な輪の中にいます。

(続く)

2024(令和6)年2月14日(水)

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