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無痛分娩は無痛じゃない

結論から述べると、全ての女性に無痛分娩をお勧めする。

「自然に産むべき」論は小規模病院の経営者のハッタリ

2016年時点でアメリカでは約7割、フランスでは約8割が無痛分娩を選択しているのに対し、日本で無痛分娩を選択している人は6.1%と驚きの普及率の低さである。

日本では「自然に生むべき」論がはびこっているが、自然に生むと具体的に何が良いのかというと、べつに良いことは特になにもない。ただ痛いだけだ。

ではなぜ良いことが特に何もないのにこれだけ「自然に産む」ことが良しとされる風潮があるのかというと、無痛分娩が普及すると、小規模病院の経営者が困るからである。無痛分娩を行うには産婦人科医だけではなく、麻酔科医が必要になる。

入院20床未満の産科診療所で出産をするのは日本特有で、そのような小規模病院には基本的に麻酔科医はいないので、無痛分娩に対応するためには新たに麻酔科医を雇用する必要があり、費用がかかる。出産は大規模病院で行うのが通例になっている欧米では、麻酔科医が常駐しているので、新たにかかる費用がないため無痛分娩の普及率が高い。

無痛分娩のメリット・デメリット

無痛分娩のメリット・デメリットは以下の通りである。

図1

正直本当にこの表だけで十分だと思うが、「それはお前の主観だろ。もっと真面目にやれ。」という方はこちらのURLにまとまっているので、一読されると良いだろう。

慈恵病院「無痛分娩のメリット・デメリット」
https://jikei-hp.or.jp/painless/merit/

読む時間がない方のためにまとめると、無痛分娩はかなりの痛みを軽減してくれる(全くの無痛になるわけではない)。また、分娩後の回復も早い傾向にある。

上記のURLにはなかったが、計画分娩になるので、出産の予定が立てられる(あらかじめ、「この日に入院してこの日に出産しましょう」、と決められる)ことも、働く女性にとっては嬉しいことだ。約20~30%の確率で予定よりも早くお産が始まってしまうことがあるが、初産の場合は早まることは少ないようだ。私も実際の出産予定日よりも1日遅れた。

メリットが多いことに加えて、デメリットはほぼない。上記のURLでは万が一のリスクまで非常に丁寧に書いてくれているが、0.0002%の確率なんて気にしていたら、もはや家から出られないし何もできない(1年間の間に交通事故に遭う確率が約0.5%である)。

デメリットは、しいていえば追加料金が必要なことである。料金は病院によるが、私の場合は+8万円だった。正直出産を終えた後なら+80万円でも喜んで支払ったと思う(陣痛中なら+800万円でも払ったかもしれない)。

無痛分娩は無痛ではない

今回のメインテーマだが、無痛分娩という名前をつけた人のネーミングセンスを疑いたくなるくらい無痛分娩は無痛ではない。

・序盤・麻酔なし
まず、子宮口(赤ちゃんが出てくるところ)が5~6cmくらい開くまでは、麻酔を使うことができない。あまりにも序盤から麻酔を使ってしまうと、陣痛が止まってしまうことがあり、出て来られないと赤ちゃんが危険になるからである。

・中盤・麻酔あり
子宮口が5~6cm開いたら麻酔を開始する。ここからは嘘のように痛みが全くなくなる。

・終盤・麻酔なし
最後に、子宮口が全開になって、「いざ産みますよ」という段階になったら麻酔を止める。「えっ!一番痛い時なのに、なんで止めるの?」と思うだろう。なぜなら、麻酔をしているといきめないからである。出産はものすごく固いうんちを出す感覚に近い。皆さんトイレをする時に、「うんちを出したい」という感覚があるから、いきんでうんちを出せるはずだ。それと同じで、「子どもが出てきそうだ、出したい」という感覚が(麻酔によって)わからないと、いきむことができないのである。

わかりやすい図を描いている方がいた。

画像2

出所:https://s8000.works/archives/1611

私の場合、この図でいうところの、陣痛開始から子宮口6cmまで(序盤)は12時間、完全無痛(中盤)が11時間、ずっと痛い(終盤)が2時間半というところだった。

序盤の中でも前半の方の痛みは、かなり痛い生理痛くらいなので、我慢できないほどではなかった。痛すぎて呼吸ができなくなってきたレベルのところ(中盤)で麻酔を入れてもらえたので、麻酔がなかったらいったいどうなっていたのか恐れおののいた。麻酔は1-2時間で切れるので、1-2時間おきに麻酔を追加する。

また、終盤の出産直前の時間は、「私でも子どもでも、どっちでもいいから殺してくれ(そしたらこの痛みから解放される)」と思うくらい痛かったのだが、それでもまだ残っている麻酔があるので、自然分娩の人からすると3割程度の痛みらしいということを聞いて戦慄した。

無痛分娩反対派の人は、「お腹を痛めて産んだ子どもがどうのこうの」とよく言うが、無痛分娩でも普通にめっちゃ痛いので、お腹は痛める。でも、自然分娩とは比較にならないくらいましのようである。私は麻酔を入れる直前の時点ですでに呼吸ができないくらい痛かったので、それの何倍もの痛みが十何時間(時には何十時間)も続くとは想像を絶する。

無痛分娩の流れ

最後に、無痛分娩の流れを書いておこうと思う。出産予定日はX月23日だったので、前日の22日の朝から入院となった。

22日(出産予定日前日)
9時:家で朝食を食べてから病院へ
・入院時点から何度も医師や看護師の方に子宮口を確認されるため、産褥ショーツにナプキンで出かけた方が良い。血や破水の際の羊水がつくのでお気に入りのパンティで行くのは絶対にやめよう。
・化粧を落とすタイミングは一応あるが、すっぴんでいくのがお勧めだ。

10時:入院受付を済ませ、個室へ移動

12時半:昼食

15時:硬膜外麻酔用のチューブを背中に入れる
・チューブを入れる際には痛みはほとんどない。
・チューブを入れたら出産を終えるまでシャワーはできない。

16時半:子宮口が開きやすくなるようバルーンを挿入
・バルーンを入れると出血する。
・バルーンを入れるとお腹が痛くなるが、これは陣痛ではなくバルーンによる痛みである。バルーンによる痛みはかなり痛いが寝られない程ではない。

18時半:夕食

22時:就寝

23日(出産予定日)
7時:朝起きたらバルーンによる痛みはなくなっていた
・子宮口がまだ3cmしか開いていないため、子宮口を開きやすくする薬を飲む

8時:痛み始める

8時半:朝食

12時半:痛いので昼食をパスする

16時:「今日はまだ産まれなさそうだから明日になりそうだ」と言われる。「今日はまだ産まれなさそうだから、夕食を食べますか?ただし、食事をしてから1時間は麻酔が入れられなくなります」と言われ、この時点ですでに痛みに悶絶していたのでいつでも麻酔が入れられるように夕食もパスする。

17時半:破水
・破水したからといってすぐには産まれないことを知り絶望

20時:子宮口5cmになり硬膜外麻酔開始
・嘘のように引いていく痛み
・体力回復のため就寝

24日(実際の出産日)
5時半:分娩室へ移動

7時:麻酔の注入を停止
・痛みに悶絶

9時半:出産

10時半:個室へ戻る

退院後に仕事を続けるには

出産後、入院中は母子別室の病院であれば赤ちゃんを預かってもらえると思うが、退院後は仕事をするのであればその間赤ちゃんを預かってもらう必要がある。新生児はほとんど24時間泣いているので、新生児の面倒を見ながら仕事をするとか、昼は仕事をして夜は新生児の面倒を見る、ということは現実的ではない。産後もこれまで通り昼は働き、夜は仕事に備えてしっかり睡眠を取りたいという方は、なるべく早く良いシッターさんを見つける必要があるだろう。





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