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かわいそうなのは赤ちゃんよりもお母さん

「生まれてすぐ預けっぱなしにするなんて、赤ちゃんがかわいそう。お母さんと一緒にいたいはず。」そんな言葉をよく聞く。そういう方は、シッターさんによる育児を見たことがないか、残念ながらハズレのシッターさんにしか当たったことがないのだと思う。

私の娘は、退院後0日、0歳0ヶ月からベビーシッターさんに見ていただいている。昼のシフトの方と、夜のシフトの方に交代で来ていただき、私も夫もそれまで通り昼は仕事をして、夜はしっかり睡眠を取り、合間に娘と触れ合う時間をもっている。

私はシッターさんを「抱っこプロ」と呼んでいる。シッターさんが抱っこをすると娘はすぐに泣き止んで落ち着いた表情を見せる。また、1時間でも2時間でも抱っこし続けてくれる。もし私が一人で育児をしていたら、体力のない私はそんなに長い時間抱っこしてあげることはできなかったと思う。

おむつを一瞬で替えられる。生まれて間もない赤ちゃんは、何かをされたことに気づくと泣いてしまうので、何もしていないかのような速度でささっとおむつを替えてくれるのである。私がおむつを替えると遅いので、いつも気づかれてしまう。

ミルクも適切なタイミングでたっぷりとあげてくれる。赤ちゃんはちょこちょこミルクを飲むと、またお腹が空いてちょこちょこ起きてしまう。もし私が一人で育児をしていたら、泣く度に焦ってちょこちょことミルクをあげて、胃が大きくなりにくく、いつまでたっても長く寝られなかったと思う。

毎日丁寧に沐浴をしてくれて、赤ちゃんがお風呂好きになるように工夫してくれる。おかげで娘はお風呂が大好きで、お湯に入れると銭湯につかるおじさんのように「気持ちええ~」という顔をして静かになる。終わった後は保湿クリームを使ってベビーマッサージをしてくれる。私が沐浴させていたら、支える力が足りずに何度もお湯に落としてしまい、お風呂嫌いな子になっていたと思う。

絵本の読み聞かせ、ガラガラでの遊び、歌を歌いながら赤ちゃん体操。0歳0ヶ月から毎日色々な遊びをしてくれて、たくさん話しかけてくれる。おかげで娘は豊かなクーイング(赤ちゃんの発声)を比較的早期の段階から見せてくれるようになった。私が一人で育児していたら、おむつ替えや授乳や寝かしつけに精一杯で、遊びまでしてやる余裕はなかったと思う。

シッターさんからもたっぷりの愛情を受けて、両親である私も夫も、シッターさんのおかげで時間と気持ちに余裕が持てるため、かわいい、かわいいと毎日笑顔でかわいがることができる。

え、私の娘ってかわいそうなの?なんて良い暮らしをさせてもらっているのだろう。かわいそうとは対極のところにいるな、と私は思う。

入院中の産院で母子同室をはじめて経験した時は、正直いって赤ちゃんをかわいいと思う余裕は全くなかった。出産で身体が痛い、疲れた、眠い、どうして寝ないの、どうして泣き止まないの、うるさい、静かにして、一人になりたい。慣れない育児にいっぱいいっぱいで、抱いてもただただ泣き続ける我が子をかわいいとはとても思えなかった。

「赤ちゃんがかわいそう」と言う人はよくいる。「シッターさんに預けっぱなしなんて赤ちゃんがかわいそう」、「母乳じゃないと赤ちゃんがかわいそう」、「0歳から保育園に預けるなんて赤ちゃんがかわいそう」、「ママが仕事復帰するなんて赤ちゃんがかわいそう」。

私はこういう言葉を聞くたびにいつも思うのだが、赤ちゃんは全然かわいそうではない。お母さんの方がかわいそうだ。赤ちゃんはお腹が空いたらミルクをもらって、おむつが濡れたら替えてもらって、寝たいときに寝て、お風呂に入れてもらい、抱っこしてもらい、絵本を読んでもらい、至れり尽くせりとはまさにこのことだ。

お母さんは満身創痍で疲れている中、毎日24時間育児をして、ゆっくりトイレに行く時間も食事する時間もろくに持てず、寝たくてもほとんど寝ることができない。どちらがかわいそうか、ちょっと考えたら、考えなくてもわかると思うのだが、「お母さんがかわいそう」という言葉は聞いたことがない。これだけがんばっている上に、さらに「赤ちゃんがかわいそう」とは、「もっと育児をがんばれ」とでも言いたいのだろうか、本当にかわいそうだ。

「赤ちゃんがかわいそう」と言われたら真に受けず、「この人何言ってるんだろう、私の方がかわいそうだわ~」と聞き流すのが吉だ。


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