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子どもを自分の親に預けない理由

子どもがまだ新生児の頃に、「毎日ベビーシッターさんに預けている」と言うと、「親御さんは見てくれないんですか?」「親御さんに見てもらったらいいんじゃないですか?」とよく言われた。

私は東北地方の出身なので、それを知っている知人は「親御さんは遠いですもんね」と言うこともよくあったが、私が子どもを親に預けないのは、親が遠くに住んでいて物理的に預けられないからではない。私は、仮に親が東京に住んでいて、親自身が働いていなくて時間に余裕があったとしても、預けなかったと思う。

なぜなら、親には親の人生があるからだ

私の父は60代で、すでに仕事は退職し、年金暮らしをしている。毎日庭いじりをしたり、釣りに出かけたり、親友とバイクでツーリングに行ったり、楽しそうにしている。

母は50代で、不動産関係の仕事をしている。母はもともと高卒だったが、大学に行くのが長年の夢で、50代になってから大学に入学し、資格を取って、最近になって働き始めた。慣れない仕事もあるが、楽しそうにしている。

親には親の人生があって、働いているとしても、そうでないとしても、自分で選んだ人生を生きていると思う。夫の両親も同様だ。夫の両親は東京に住んでいるし、時間にもそれなりに余裕があると思うが、夫の大切な人は私にとっても大切な人だし、私の両親と同様に毎日楽しく過ごしてほしいと思っている。

子どもを親に預ける人がたくさんいるのは知っている。本人と親御さんが双方納得しているのなら全然良いと思うし、他人の人生に文句をつける気はさらさらないが、私は、自分がやりたくない育児を親に押し付けることはできない。

3歳とか5歳とかになって、もうトイレにも自分で行けるし、会話もできて意思疎通ができるし、大人と同じものが食べられるし、夜も夜中起きずに一人で夜通し寝られるようになったら、「たまに」孫と遊ぶのは親にとっても楽しいイベントになると思う。

「たまに」孫と遊ぶのは「イベント」だが、「毎日」育児するのは「生活」だ。そして、新生児育児は「生活」というよりも「労働」に近い。

新生児育児は本当に大変だ。私は母子別室の産院で「入院中のうちに一晩だけは母子同室を経験しないと退院できないことになっている」と言われ、経験したその一晩ですっかり根を上げてしまうほど大変だった。寝る時間が取れずに24時間毎日育児をするのはとても無理だと一瞬で悟った。30代前半の私にとって体力的にも精神的にもきついのに、体力が衰えつつある50代や60代の両親にとってはどれだけ大変なことか、想像もできない。

「仮に自分自身が老後に介護が必要となった場合に、どこで介護を受けたいと思うか?」という質問に対し、「可能な限り自宅で介護を受けたい」と答える人の割合は年々減っていて、「特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護保険施設に入所したい」と答える人の割合が増加傾向にある。介護も、従来は「家族がするのが当たり前」だったが、介護離職や介護疲れ、介護うつなどの問題が表面化するにつれ、「プロに任せた方が良い」という考えの人が増えていった。また、これは、親世代が「子どもには子どもの人生があるから」と考えるようになったことの現れでもあると思う。

「介護士」が職業として成り立っているように、「保育士」が職業として成り立っているのは、一般的に素人が無料でやるのは難しいことだからである。

育児は、まだまだ「母親が自分でやるのが当たり前」、そうでなくとも、「親を含めた家族でやるのが当たり前」という風潮が根強いが、私はプロにお金を払ってお願いするのが一番だと考えたし、(介護と同様にもちろん金銭的な問題はあるにせよ、)これからそう考える人は増えていくだろうと思う。



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