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シャレン!インタビュー 地域と、選手と、サポーターと、-共に戦うフロンターレ- ③課題と未来

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1.地域から愛されるが故の課題


シャクル:これまでのお話からも川崎フロンターレは地域と共にあると強く感じましたが、今の課題を挙げるとしたら、どんなことがありますか。

岩永さん(以下敬称略):これは人・担当によって様々だと思うんですけど、私自身は地域の色々な方々とお話しながら事業を作っていく中で、 ありがたいことに「一緒に何かやりませんか」というお話を、地域の方々からも行政からもたくさんいただきます。だけど、手が回らないという課題があります。

シャクル:一緒にやりたくても手が回らないという心苦しい課題ですね。

岩永:ただ、地域事業を行う中で、病院、高齢者施設など色々な施設と共に行おうとした時、光栄にも至るところに「フロンターレのことが好き」って言ってくれる方がたくさんいらっしゃるんです。例えば、「こういうのどうですか」ってこちらから話したら、「いいじゃん、一緒にやろうよ」って先方のスタッフの方がおっしゃられて、そのまま企画を全て作ってくださったり。しかもその施設の利用者もフロンターレを応援してくれて、そういう仲間が街中あちこちに増えているっていうのは、本当にありがたいと思いますよね。

シャクル:人手不足を、地域の方々が自らカバーしてくれているんですね。

岩永:ここ、フロンタウンさぎぬまだって、 夕方は子供たちがサッカースクールに参加していて、お父さんお母さんがテラスでコーヒーを飲みながら、子供のサッカーを見ている。 近所のおばあちゃんが散歩に来て、焼き芋を買って帰ることもある。そんな環境が好きで、フロンターレと一緒に何か活動したいと言ってきてくれる方もいます。

シャクル:実際にフロンタウンさぎぬまを訪問させていただいて、そのような光景が鮮明に浮かんできました。まさに地域と一緒に作っている場所なんですね。

フロンタウンさぎぬまの外観
川崎フロンターレホームページ『愛される施設であり続けます!!!』よりhttps://www.frontale.co.jp/diary/2024/0330.html


岩永:トップチームの試合に限らず、そういう環境を作ることが大事だと思っています。人手不足という課題はあるけれども、今は地域の方々に支えられている。でも、そこに甘えすぎて、「おんぶに抱っこ」ではいけない。だからこそ、そこも解決しようと考えてます。


2.共に地域を創り上げる者たち


シャクル:私たち(シャクル)のようなクラブ外の団体と関わることやその課題について教えてください。

岩永:うちは団体や個人に関係なく、全てにオープンに接しているつもりです。 コアなファン・サポーターとだけ一緒に何かやろうとしている訳ではなくて、気持ちのある方どなたとでも一緒にやっていきたいです。例えば、「入場ゲートで配布するバナナの設置を手伝いたいです」って言う人がいたら、「ぜひ一緒に」って言いますね。もちろん、活動するに当たって、守ってもらうべきルールはありますけれど。

スタジアムでボランティアをしている方たち
川崎フロンターレホームページ『ボランティア募集中!』より
https://www.frontale.co.jp/diary/2012/0412.html


シャクル:コアなサポーターだけでなく、どこに対してもウェルカムな雰囲気ですね。

岩永:陸前高田の活動は、例えば応援団の多くの方々にも手伝ってもらったんだけど、応援団ではない人たちもたくさんいましたよ。有志の方が集まって、「一緒になってやろう!」ってね。今までの話も含めて本当に色々な層ですよ。そういう方々と全て一緒に、共にやっています。

シャクル:それは、私たちのような学生が一緒にやるとなった場合も、同様ですか。

岩永:もちろん。うちもいっぱい学生が絡んでますよ。例えば、大学のゼミと健康のイベントも開催したりもします。ただ、クラブ側で受け入れできる窓口がやっぱり足りなかったり、さっき言った課題はやはりありますけどね。


3.川崎フロンターレの未来


シャクル:こうした活動を通して、川崎フロンターレが目指す将来のクラブ像をどのように描いていますか。

岩永:地域の方々にものすごく支えられて、応援してもらって、共に活動を作ることができる状況がある。この状況を大切にして継続していきたいですね。地域の方々に「川崎の街って良いよね、フロンターレがあって良かったね」って、もっと思ってもらえるようなことをやって、どんどん成長させていきたいです。綺麗事かもしれないけど、それがちゃんとしっかり回っていれば、簡単ではないけれども、事業性もついてくると思っています。

シャクル:地域の方々と一緒に作っていった結果、地域を愛する人が増えたり、地域のスポーツクラブを愛する人が増えることは、素晴らしい結果ですね。

岩永:クラブを引っ張っていく顔であるトップチームには、今までのスタンスを忘れずに、どんどん力を発揮して、川崎の街を盛り上げて欲しいと思います。ところで、私は「チーム」と「クラブ」という言葉は絶対使い分けているんですよね。「チーム」はあくまでプロであるトップチームとか、ユースのチームとかのこと。「クラブ」はチームを含む組織全体のこと。チームはあくまでもその顔。極端に言えば、トップチームがなくても、街クラブとしては成り立ちます。 ただ、Jリーグに所属するプロのトップチームがクラブの顔としてあること自体がものすごい牽引力になっているから、それは大事にしたい。加えて、ボディの部分も頑張る。それこそがクラブのあるべき姿だと思います。

シャクル:理想のクラブ像に近づくためには、トップチームに牽引されるだけでは足りないということですね。その理想のクラブ像に向けて、今後岩永さんが変えていきたいと思うことはありますか。

岩永:個人的には変えたいことはたくさんあるけど、すぐに日本のスキームや文化を変えるのは難しい問題がある。あと、今の企業の役員レベルの方々はサッカーやJリーグで育った人がまだ多くはないから、Jリーグが何をやっているのかご存知ない方もまだまだいる。ただ、これから20年も経つと、自然に変わることが何かあるんじゃないかな、と。シンプルに、Jリーグを見て育った層である皆さんの年代とか、もしくはもう少し上の年代が企業の役員レベルや世の主要なポストに就く時代が20年後には来る。それだけでも私は変わると思っています。Jリーグを見て育った世代だから、サッカーが何をやっているか漠然とでも知っているでしょうからね。

サポーターで埋め尽くされる等々力陸上競技場
川崎フロンターレホームページ『2017 明治安田生命J1リーグ 第34節 vs.大宮アルディージャ フォトギャラリー』より
https://www.frontale.co.jp/goto_game/2017/j_league1/34.html


シャクル:自分たちがその年代を担っていると思うと、これからの20年が非常に楽しみです。最後に、今進めている事業の今後の展望について、岩永さん自身の考えをお聞かせください。

岩永:今進めていることだと、うちが地域で持っているパワー自体をもっと活用していこうと思っています。タウンコミュニケーションパートナーというパートナーシップの形態を作って、試合や選手を絡めずとも、通年でクラブのパワー自体を生かして街の皆さんと一緒に事業をやり始めました。そういう事業をしている例ってたぶん世界中にないんじゃないかな。だから、果たしてそういうことが本当にできるのかという声もありますけど。

シャクル:前例がない分不安もありますね。

岩永:だからこそ、試合以外の面で、クラブ自体にこういう社会的価値の生み出し方があるんだよっていうのを見せる必要がある。理解してもらうためには、分かりやすい形だと、やっぱり1番はお金に繋がるのかどうかが、シビアな経営目線で言ったら地域活動する中でも結局は必要なわけです。事例を作らないとクラブ内でも実感されづらいかなって思ったから、作りました。それで、「地域と一緒になって実際にこういうことをやれるんだ」と認知してもらえる。事業として成り立つことを見せられると、今後に向けても繋がっていくと思っています。

シャクル:事例を実際に作ることが新たな事例に繋がり、今後の将来にも活きていくことがよくわかりました。川崎サポの学生やそうでない学生もいる中で、それぞれが様々なことを感じることができました。本日はお忙しい中、インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。



あとがき

「川崎フロンターレは2010年から2019年まで10年連続で全Jクラブの中で第1位を取り続けている」

皆さんはJリーグが実施する観戦者調査というものをご存じだろうか。その調査ではJリーグの観戦者に対して様々な質問が投げかけられる。その中に「Jクラブは、ホームタウンで大きな貢献をしている」という質問があり、その項目で10年連続1位を取り続けているのが川崎フロンターレだ。

インタビューを通じてその理由に少しでも迫ることができたのではないだろうか。「地域へ貢献する」のではなく、「地域と一緒に」という思いを持っているからこその10連覇。そしてフロンターレはなぜ愛されるのか、その理由がこのインタビューに詰まっている。受け継がれるクラブのDNA、スタジアム設計や言葉遣いの細かいこだわり、縁を大事にする姿勢。Jリーグで最も地域との距離が近い川崎フロンターレ、そのクラブのインタビューを通じて我々シャクルは多くのことを学ばせていただいた。今後、活動を展開するうえで学ぶべき点が多くあった。我々のような駆け出しの学生団体にもしっかりと向き合ってくださったことからもその愛される理由が見えてくるといえるだろう。


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