「繋いだ手が熱を持つ」で始まり、「理由なんてないよ」で終わる物語
繋いだ手が熱を持つ。
「良いかい、焦らなくていいから、ゆっくり降りておいで。大丈夫、絶対に離さないよ」
声をかけても、彼女は静かに俯いている。表情は見えない。
夏の夜の屋上では、空気はじっとりとまとわりついて、ますます体温を上げるのみだった。顎から雫が落ちる感触で、自分が汗をかいていることに気付く。
繋いだ手が汗で滑るような錯覚に焦って更に強く握ると、彼女は漸く屋上の縁から、とん、と降りてきた。
制服のスカートがふわりと動いて、まるで止まっていた刻が動き出したようだ。
そのま