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25才まで生きた心地がしなかったアラサー女の半生 #6

生命線


 何もかもが壊滅的にうまくいかなかった10代。家にひきこもる他なくなってしまうほど追い詰められた私は、そこから少々変わった生存ルートをたどることとなります。
 前回までに少々語りましたが、私は、アニメ・漫画・特撮を愛するオタクです。あまり上手ではありませんが、小さい頃から自分でも絵を描きますし、中学までに我流で漫画も描けるようになりました。興味のない方にはただの趣味に聞こえるかもしれませんが、私にとってオタ活は、全てを失っても尚、自身の心身を癒し、守ってくれる生命線なのです。
 そんな私には、物心ついたころから毎年、日曜朝の特撮番組を、はじめのほうだけでも必ず見るという習慣があります。しかし、ブラック会社に勤めていた約1年間は、それができずにいました。
 2009年、居心地の悪い実家にひきこもって元気のない私は、久しぶりに、新しく放送する仮面ライダーの情報をネットで調べました。体のタテ半分で左右の色が違う『仮面ライダーW』。第一印象は"ダサい"。早起きできる体調でもないし、視聴は見送ろうと思いました。しかし、それからしばらくした日曜の朝に、少し早く起きられた私は、なんとなくのクセか、Wの放送を途中から見ることになります。なんの偶然か、私のハタチの誕生日放送、第12話『復讐のV/怨念獣』。
 主人公たちは探偵という情報は事前に知っていて、ちょうど、教会で怪物と戦う山場のシーンでした。望まず怪物と化してしまった女性と、彼女の心を傷つけた男。復讐を果たそうとする女性を止めようとするW。怪物との戦いを終え、変身を解いた主人公――左翔太郎は、男に近づき一言「オイ、お前の罪を数えろ」間髪入れず殴る。「お前を殴ったのは俺の拳じゃない…サチさんの、心だ」去っていく翔太郎。怪物から人間へと戻った女性、サチは、病室で眠ったまま事件は解決…。
 衝撃が走りました。「これまでの仮面ライダーと違う!」タテ半分に色が違う姿も、動くと格好よく見えました。
 早速、某イラストコミュニケーションサイトでWを検索。放送回を重ねるごとに人気は増し、ファンアートを見るだけでなく自分でも投稿、W好きの仲間たちとネットで交流する時間ができました。毎日の家事の合間に、次はなにを描こうと空想しました。そして、夜中に描いてみる。当時の私にとって、これ以上の心の薬はありませんでした。Wの映画見たさに、貯金を切りくずして外出し、劇場に足を運んだことすらあります。
 しかし、どんな熱い作品にも最終回はやって来ます。2010年の8月の終わり、仮面ライダーWは、惜しまれながらその幕を引きました。寂しさを埋めるように、貯金をはたいてDVDBOXを購入。毎日、毎日、再生し続けました。
 現実ではうまくいかないことばかりの私でしたが、こんなに楽しい1年間はそれまでありませんでした。それと同時に、二次元には"限り"があることを痛感しました。確かに作品を追いかけるのは楽しかった。けれど、必ず終わってしまうものに、いつまでも縋っていられないとも思いました。
 ひきこもって1年が経ったころ、21才を控えた私は、母に「働きたい」と言いました。そこから更に数年をかけて、私は社会復帰の階段をのぼりはじめるのでした。

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