前回は『なぜ「やる気」は長続きしないのか』(白揚社)を取り上げ、長期的な成功のためには感情、特に<感謝>に注目であると述べましたが、今回は、瞑想が「思いやり」を通して自制心を高めるということについてです。
目の前の大事な仕事や勉強をこなさなければならないのに、SNSの通知が気になったり、買ったばかりの新作ゲームをしたくてたまらなかったりする、もしくは、明日食べるために買っておいた甘いお菓子を、そばに置いておくとすぐに食べてしまう……そういう場合に必要なのは「自制心」です。
(目の前の誘惑に抵抗する能力を測ることに関しては「マシュマロ・テスト」が有名ですが)『なぜ「やる気」は長続きしないのか』で取り上げられていることは、この「自制心」はどうすれば高められるのかということなのです。
しかしながら、仕事にしろ勉強にしろ、そもそもやりたくないことをやっている場合、「意思」の力だけで目の前の誘惑に抵抗し、自分をコントロールするというのは、正直なところ、かなり難しいのです。
心理学者のデイヴィッド・デステノ氏は、『なぜ「やる気」は長続きしないのか』のなかで、以下のように述べています。
そして、「私たちは未来についての計画に熱心ではなく、将来訪れる恐れのある状況にあまり関心を払っていないのである」と述べる著者が注目するのは、
「「認知」――建前としては合理的かつ論理的で、人を導く役割を果たすと思われている心のメカニズム――」
よりも、
「「感情」――不合理で、気まぐれな要素とみなされ、招いてもいないのに姿を現すように思えるもの――」
なのです。
そして「長期的な成功に関していえば、そこで必要となる正しい感情」として、前回取り上げた「感謝」のほかに「思いやり」(compassion)を挙げています。
さらに、デイヴィッド・デステノ氏が自制心ということに関して言及しているのは、「渇望や利己的な誘惑に陥る危険についての千年にもわたる教えと思考を授けられ、日常的にその恩恵を受けている仏僧」、そして「思いやりと自制心を高めてくれる」瞑想についてです。
特に瞑想に関しては、著者らの科学的な調査によれば、「前の八週間に瞑想をしなかった人のなかで、苦しんでいる女性に椅子を譲ろうとした人はわずか十六パーセントにすぎなかった」というのですが、瞑想を経験した人を調べてみると、「彼らは八週間にわたるマインドフルネス(瞑想)の訓練によって思いやりを抱き、自分の快適さを犠牲にして痛みに顔を歪めている女性を助ける割合は三倍以上、じつに五〇パーセントの増加となった」といいます。
そして「人が親切と寛容さをともなう行動をするためには、自制心が必要となる場合が多い」というのですが、「このような調査結果の数々は全体として、瞑想が思いやりを通していかに自制心を強化したかを示しているといえる」としています。
次の記事へと続きます……。
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