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「運動」はなぜ【40代からの健康長寿&認知症予防対策】のために大切なのか?

前回は『ライフスパン 老いなき世界』を取り上げ、「運動」は今すぐ長寿遺伝子を働かせるために効果的な方法であると述べましたが、40代からの健康長寿を目指しつつ、認知症・アルツハイマー病を予防していくためには、日々、適度な運動を行うようにすることが大切であるように思います。


特に40歳を超えてくると、以前よりも疲れやすくなるなど、体力の衰えを感じることは多いかもしれませんが、もし運動をほとんど行わないで、デスクワークなどで座りっぱなしの毎日を過ごしてしまうと、認知機能や体力はますます低下してしまいます。

しかしウォーキングやジョギング、ヨガなどの運動を無理しない程度に行うことは、加齢による筋力や持久力の低下を防ぎ、心と身体の調子を整えるのに効果的です。

さらに適度に体を動かす習慣をもつことは、脳の様々な部位を複雑に刺激し、神経細胞を増やしたり、認知機能を改善したりすることにつながっていきます。

特に運動を行うと前頭葉の運動野や大脳基底核、小脳の働きが亢進し、反対に感情の中枢である扁桃体などの活動は下がるとされています。

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このような「運動」の効能に関して、ジョン J.レイティ氏は『脳を鍛えるには運動しかない』のなかで、以下のように述べています。

 定期的に有酸素運動をすると体のコンディションが安定するので、ストレスを受けても、急激に心拍数が上がったり、ストレスホルモンが過剰に出たりしなくなる。少々のストレスには反応しないようになるのだ。脳では、運動によって適度なストレスがかかると、遺伝子が活性化してタンパク質が生成され、ニューロンを損傷や変性から守るとともに、その構造を強化する。さらには運動はニューロンのストレス耐性の閾値も上げる。

(ジョン J.レイティ『脳を鍛えるには運動しかない』 野中香方子 訳 91頁)


しかも、運動によって脳にストレスをかけることで、神経細胞の成長を促すタンパク質である脳由来神経栄養因子(BDNF)が増えるといいます。


 運動は筋肉だけでなく脳にストレスをかけ、脳はそれに反応してBDNFを放出する。それが引き金となって脳細胞は成長し、運動を支える機能を果たそうとする。しかし脳内にあふれたBDNFが潤すのは、動きに関連する部位だけではない。脳全体を潤すのだ。つまり運動は、脳細胞が成長するのに必要な環境をもたらすのだ。

(ジョンJ・レイティ、リチャード・マニング『GO WILD 野生の体を取り戻せ!』 野中香方子 訳 NHK出版114‐115頁)

なぜ運動は健康長寿のためにイイのか?

また前回取り上げた『ライフスパン 老いなき世界』(梶山あゆみ 訳)のなかで、著者のデビッド・シンクレア氏は「運動」に関して、

なぜ運動が体にいいかといえば、運動によって数々の長寿遺伝子がプラスの方向に調節されるからだ。そのおかげで、テロメアが伸びる、細胞に酸素を運ぶ新しい微細血管ができる、ミトコンドリアの活動が高まって化学エネルギーが増える、といった効果が現れる。

と述べています。

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さらに「運動が遺伝子のスイッチを入れ、私たちを細胞レベルで若返らせてくれる」としています。

このことに加え、

「そもそも運動とは、体にストレスを与えることにほかならない。運動をするとNADの濃度が上昇し、それが今度はサバイバルネットワークを作動させる」

「AMPK、mTOR、サーチュインといった長寿関連の物質は、カロリー摂取量にかかわらず運動によって正しい方向に調節される。そして新しい血管をつくらせ、心臓や肺を健康にし、体を丈夫にし、くだんのテロメアを長くするのだ」

とも述べています。


「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」は健康長寿のための運動として注目。

またデビッド・シンクレア氏は「長寿遺伝子の力を余すところなく発揮させるには、強度は間違いなく大事になる」とし、メイヨー・クリニックの研究チームの調査を挙げ、

健康を増進する遺伝子を一番多く活性化したのは「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」だった。これを行なうと、心拍数や呼吸数が著しく上昇する。高齢の被験者ほど、HIITによる活性化効果が大きかった。

としています。


 自分のしている運動が激しいかどうかは、きついと感じるかどうかでわかる。呼吸は深く速くなり、鼓動は最大心拍数の70~85%になる。当然ながら汗をかき、一息つかないと二言三言しか話せない。これが低酸素応答と呼ばれるもので、この状態は体に適度なストレスを与えるのにうってつけだ。永続的な害を及ぼすことなく、老化に対する体の防御反応を活性化させてくれる。

(デビッド・A・シンクレア『ライフスパン LIFESPAN 老いなき世界』 梶山あゆみ 訳  192‐193頁)



この「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」に関して、『サクセスフル・エイジング 老いない人生の作り方』(俵晶子 訳)のなかでダニエル・J・レヴィティン氏は、ノルウェー科学技術大学のウルリック・ウィスロフ氏の研究について言及し、

30秒から1分程度のランニング、階段上り、サイクリングなどを行い、その後にウォーキングやスローペダリングなどのクールダウン運動を1~2分程度行います。このサイクルをわずか10分繰り返すと、HIITを行ったことになります。

と述べています。


運動は認知症・アルツハイマー病の予防のためにも重要。

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なお、運動は認知症やアルツハイマー病の予防にも重要な役割を果たします。

たとえば医師のデール・ブレデセン氏は、アルツハイマー病との関わりにおいて、運動の効能について『アルツハイマー病 真実と終焉』のなかで以下を挙げています。


1.運動は、アルツハイマー病の進行に重大な役割を果たすインスリン抵抗性を減少させる。

2.とりわけ、ニューロンを支える分子である脳由来神経栄養因子(BDNF)の生産を増やすケトーシスを促進する。

3.記憶を司り、アルツハイマー病において委縮する海馬を大きくする。

4.ニューロンやシナプスの健康に不可欠な血管機能を改善する。

5.アルツハイマー病を促進する、炎症の重要な引き金となるストレスを軽減する。

6.認知力の健康に欠かせないもうひとつの要素、睡眠を改善する。

7.ニューロン新生と呼ばれる脳のプロセスで産生される、生まれたばかりのニューロンの生存率を高める。

8.気分を改善する。

(デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』 山口茜 訳 281頁)

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しかし「運動」が大事とはいっても、普段は「おうち時間」で座っていることが多く、もし体を動かすことが習慣になっていないのであれば、ウォーキングやジョギング、ヨガ、スクワットなどの運動を無理しない程度に行うようにするだけで十分であるように思います。

健康長寿や認知症予防のために運動を続ける秘訣は、トレーニングジムに通うなどハードルを高くするのではなく、散歩から始めるなど、最初はハードルを低く設定し、とりあえず体を動かすことなのです。


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪


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