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錆びつかない残像

月が満ちていく夜は
心の凪がざわつき始める。

貴方のコロンと汗が入り交じった
体温の感覚が既視感を呼び起こして

月光の中で生ぬるい風になって
私にまとわりつく。

心の片隅に追いやったはずの記憶は
忘却を知らないらしい。

幻想と艶麗を誇る月を仰ぐたびに
私は、さびつかない貴方の残像に
心乱されるのだろうか。

手の届かない月は
まるで実になることを知らない
徒花(あだばな)のようだ。


艶めかしくさせる今宵の月に
私は影の自分を感じている。

虚と実なんてこの胸間の想いの前に
なんの意味があるのだろう?

少なくとも今は、
月にただ魅せられながら
貴方の匂いをたぐり寄せたい。

ひそやかに
憂いと快哉に折り合いをつけながら

夜露が零れ落ちる間に・・・・
私は気だるいまま眠りにつく。

Sara

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