足元に歴史が

朝、高校生の坂本の前に、バスという鉄の塊がプシューと音を立てて彼女を迎え入れた。高校に行くための通行手段だ。運転手は、バスを発進させた。他の客も乗せながら、バスは他の車に抜かされながら、ゆっくり、ゆっくりと加速していった。

ブォー

バスの窓から流れるように見える景色、そこには多くの歴史が存在した。

横を通り過ぎていく田んぼに、また、バスを動かす道路に、歴史は長く繋がっている。それはとうの昔からそこに存在しており、誰かが習慣的に使っていた道、または牛が歩いたあとだったりするのだろうと、坂本は考えていた。

横切っていく建物を眺めながら、ふと坂本は思った。「もし、私の高校が廃校になったら、その歴史は消えて無くなっちゃうのかな。そのまま更地になって、誰にも使われずに忘れられていくのかな。」

なんて儚く虚しいことなのだろう、と思った。どうすればその歴史は長く根付き、人々の心に残るのだろう?と考えたが、バスに揺らされるにつれ眠気が回って、次第にうとうとし始めてしまった。高校生の坂本には難しすぎたのだ。

高校に着く頃にはすっかりそのことは忘れ、当たり前のように人口密度の高い大きな建物に坂本は吸い込まれていくのであった。

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