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元米マイクロソフトのソフトウェアエンジニアが教える「エンジニアになりたいなら知っておいた方がいいコト!」 後編

高校時代から伝説のアスキーでバイトをし、大学時代は自作ソフトで億り人に。その後マイクロソフトの日本法人立ち上げに参加し、ビル・ゲイツの働きかけで米マイクロソフトでWindows95を作った伝説のエンジニア中島聡氏。彼がどのような子供時代をすごし、ソフトウェアエンジニアになったのか、そしてソフトウェアエンジニア、起業家になるためのアドバイスを伝授します。

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2022年8月26日にレッドインパルス×シンギュラリティ・ソサエティ共同で「学生生活を豊かにするサービス」をテーマにハッカソンを開催しました。
そのオープンニングディスカッションの模様を公開します。(後編)

人と人とのつながりを大切にする

司会:続いて、今中島さんはエンジニアとしてのキャリアを築いてますが、これらの経験と知識を踏まえて、自分が今学生をすることになった場合にこれはやっておいた方がいいみたいな、学生ライフハック、自分だったらこういうことをやるみたいなものありますか?

中島氏:今思うと、もっとネットワーク作りをしておけば良かったと思います。このようなハッカソンなどに参加するのはすごくいいことで、学校周りの友達だけと知り合いだと、道が広がらないんです。

例えば大きい企業、トヨタとかNTTみたいなところは、会社のブランドがあって、当然安定しているということで就職希望の人もたくさんいるから、そこで求人と求職がすごくマッチングがいいわけです。入りたい人もいるし、採りたい会社もたくさんあるので、大会社に向けての就職ルートというのはすごく学校側も支援してくれるし、学校にも情報が来る。就職を手伝ってくれる教授とかもいるので、そっちにはすごくいい流れができている。

しかし、ベンチャー企業って小さいし、知られていない。特にまだ作られたばかりですごいベンチャーみたいなのが結構あるが、誰も知らない。彼らは彼らでお金かけて自分のブランド力を上げて、就職希望の人を集めることができないので、結局どういうことが起こっているかというと、そういう面白い会社というのは、人づてで人を採用しているのです。知り合いがいたとか、昔ハッカソンで出会ったことがあるとか、1回インターンしてたとか。そういうベンチャー側の人の採り方というのは、すごく人のネットワークに頼っているのです。お金かけてマーケティングもできないから。そういう意味で言うと、面白いベンチャーに入ろうと思ったら、そのネットワークに触れるようにしとかなければいけなくて、それは学校で勉強して、友達と遊んでいるだけだと作れないと思います。
だから、積極的にこういうハッカソンに参加するとか、もしくはちょっと難しいのかもしれないけど、オープンソースのコミュニティに入るとか。何らかの形で、ベンチャー界隈のエンジニアたちが人のネットワークを作っているところにちょっとでも触れることをすると、有利だと思います。

僕は、アスキー出版というところでアルバイトしていたのがものすごく役に立った。そこで学校外の人と付き合うことができ、知り合いが増えた。結局この業界って、特にシリコンバレーとかがそうだけど、結構みんな転職が多いから、1度一緒に働いた人との信頼関係をずっと保つんです。会社辞めた後も。それで自分が会社を作ったときに、この人とまた働きたいと思った人に声を掛けたりすることが起こるので、そのネットワーク作りが、すごくリクルーティングで役に立つし、それぞれのエンジニアにとって財産になるのです。

僕もそういう関係をお互いに持ってる、向こうも僕のことを信頼しているし、僕も向こうのことを信頼している人が何人もいるので、いざ会社を作ろうと思ったら声掛けるとか、もしくは会社を作ったときにお金集めを手伝ってもらう人がいるのが、すごく力になるんです。それは学生時代から作るのは難しいけど、そういう世の中なんだっていうこと。エンジニアの世界というのは、そういうものということを理解し、意識した上で、ちょっとずつでもいいから何か始めるといいと思います。

今回のハッカソンに参加しているだけでも、僕はすごくいいことだと思うし、ハッカソンで、たまたま同じチームにアサインされたエンジニアですごい人がいた場合には、その人と長く付き合っていく。そのためには、お互い様なんだけど、その人に自分がすごい人だと思ってもらわなきゃいけない。そういう関係を1人でも2人でも、こういうイベントを通じて作れたら一生の財産になるので、ここは意識してもらうといいと思います。

司会:そうですよね。本当に技術だけでなく、人脈なども併せてエンジニアのキャリアが築かれていくというのは、感じるところがあります。

これから学んでおきたい技術は?

司会:今、学ぶべき技術、これから学ぶべき技術というところで、中島さんがこれは学んでおいた方がいいという技術などあれば、ぜひお伺いできればと思いますが、いかがでしょうか?

中島氏:今学ぶべきは、やはりAIじゃないですか? Deep Learning。これはいろんなとこで使う時代になっているので、深いところの研究者になる必要はないんだけど、研究者が作った新しいDeep Learningの技術を、ソフトエンジニアとして応用できるみたいな立場になっておくといいと思います。そこは確実で、黎明期なんていう話ではなく、既にAIを使った技術がガーッと今伸びていて色々なところで使われているので必ず役にたちます。

あと、これからのポテンシャルで言うと、クリプトとかWEB3ですが、まだまだビジネスモデル的に、このビジネスが本当に社会に価値をもたらすのかが見えていない。黎明期だからチャンスといえばチャンスだけど、無駄になるかもしれないという可能性もあるというぐらいの意識で、勉強するといいと思います。

エンジニアとして会社を選ぶ基準は、ソフトウェアで勝負しているかしていないか?!

司会:ありがとうございます。続いて、エンジニアの就職に関する質問です。いろんなIT企業とか大企業、ベンチャーもある中で、エンジニアが就職するとしたら、今ならどのような企業に入ったらいいのか。中島さんのお考えを伺えたらと思います。いかがでしょうか?

中島氏:ソフトウェアで勝負している会社で、かつ、受注産業じゃないところ。これは何回もいろんなとこで言っているんだけど、日本の多くのIT企業の大手は受注型なんです。NECや富士通・日本IBMなどは基本的に自分たちのソフトを作っているのではなくて、お客さんのためのソフトを1人月いくらで作っているのです。そういう企業に入ると、出世するには、実はエンジニアでずっといては駄目で、営業とか企画とかの人にならないといけないので、エンジニアとして勝負したいのであれば、行くべきではないと、僕は思います。

別に外資系のGoogleとかMicrosoftでもいいし、日本のベンチャーでもいい。そういう自社のソフトウェアで勝負してる会社の中でのエンジニアというのは、スポーツチームの、例えばサッカーチームの花形選手みたいなポジションなので。折角エンジニアとして働くなら、自分が花形になれる業種を選んだ方がいいと思います。

司会:そうですよね。今、そういった自社開発のソフトウェアやサービスを持ってるところが勢いありますね。

中島氏:悩ましいのが、例えば、トヨタ自動車みたいなところが果たして変われるかどうかというのは、すごく微妙なところで判断難しいですよね。トヨタはこれからソフトウェアで勝負しないと駄目な会社なので、そこだけ見るとソフトエンジニアは花形なので行くべきなんですが・・・。カルチャーとしてハードな会社なので、彼らが本当にソフトで勝負できる会社になれるかというとすごく疑問です。だったらテスラに入った方がいいと僕は思います。

司会:あーなるほど、確かにそうですね。

中島氏:テスラなんか最高です。今、学生だったら一番行きたい会社がテスラで、2番目がスペースXかな。

司会:そうなんですね。すごく勢いを感じる会社ということですか?

中島氏:本当にソフトウェアで勝負してる会社だし。スペースXはすこし違うけど、テスラは明らかにソフトウェアで勝負してる会社なので。エンジニアが花形ですから。そこで勝負しないと。

キャリア選択を考える

司会:ありがとうございます。最後の質問なんですが、大企業、ベンチャー企業、そして起業など、大学卒業した後のキャリアの選択肢としてあると思うのですが、これについてどれが正解というのはないかもしれないんですが、中島さんの考えるこれらの位置付けというか、自分だったらこれをお勧めするみたいなのがあれば、お伺いできればと思います。

中島氏:どうしても起業したいと言うのならば、してもいいと思う。しかし、普通に考えたら、まずはベンチャー企業もしくは外資系のIT企業がいいMicrosoftとかGoogleとか。日本IBMは別だけど・・・。その他もう少し若い、例えばストライプみたいな面白い会社もあるから、そういうところに入って、そもそもベンチャー企業というのは、どういう働き方をしているんのかを勉強した上で起業するというのもあり。

また、第3の選択肢として、大企業の中でもソフトウェアを開発をしてるところがあるかもしれないので、そこでチャレンジしてみるというのも一つの手ではありますよね。例えば、トヨタ自動車はいい例です。ベンチャー企業が怖いと思っている人にとって、ベンチャー企業はどうなるのか分からないから、トヨタみたいな企業は安心するというのは分かるんです。トヨタの中でも、ソフトエンジニアを採用しているところもあるし、トヨタだけではなくてホンダとか、そういうところに行ってみるというのはあるかもしれない。

ただ、働き方が旧態依然としているので、本当の意味でのベンチャー企業の中で起こっている生産性の高さとか、個人個人にどんな責任が与えられるかなど、働き方が全く違うんです。大企業とベンチャー企業だと。大企業に1度染まると、結構難しいと思います。だから、やはりベンチャー企業がいいかな。

司会:そうですよね。いきなり起業となると、リスクが大きいですけどベンチャーだったら、ある程度守られつつ挑戦できるというところはありますね。

中島氏:ただ、どうしてもやりたいんだったら起業してもいいじゃないですか。別に失敗したところで命を失うわけではないので。起業した場合は、絶対してはいけないのが借金とかするときに個人保証をしないことです。VCなどからお金を集める分には、そういう個人保証とかついてこないけど、銀行などからお金を借りると、個人保証を付けさせられることもある。そうすると、倒産したときに借金がずっとついて回り、失敗が傷になってしまう。それだけ気を付ければ、いくら起業して失敗しても大丈夫です。

司会:挑戦心のある人は、起業も選択肢という感じですね。

中島氏:はい。

司会:ありがとうございます。

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