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循環する子育て~SDGsとのつながり~

執筆者:あんみつ

我が家は親戚から「ほっこりいわた家」と呼ばれている。

私と息子、そしてエミおばちゃん(私の妹)の3人暮らしは、メンバーのほんわかした感じから、そんなイメージが湧くようだ。そして当の本人たちも、この家にぴったりな呼び名だな、と感じている。

夜は静かに深く眠る。休みの朝は誰かがコーヒーを淹れる。私が「何食べたい?」と聞くと私の思いつかない答えが返ってきて、それいいね!となる。
エミおばちゃんが帰宅すれば「おかえりー!エミちゃん、きょうぼくママにおこられたんだよー。」とおしゃべりがはじまるし、「今日めっちゃ腹立った!聴いてくれる?」「ビール飲も!」「きょうボクべらんだでごはんたべたい。」「見て見てカナト!芽が出てる!」「ママー、はっぱにあおむしがいる!」そんな、ちょっとした発見や気楽なコミュニケーションが流れていく。

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夕方から寝るまでの間、誰かしら大人がふらりとやってきてはご飯を食べ、お茶を飲み、カナトと遊んで帰っていく。婚姻時から、そんな理想を描いていた。こんな私をいいと思ってくれる人、そしてこの小さな息子と関わることに価値を感じてくれる人、一緒に育ちを見守り喜んでくれる人、血縁に限らず他人も出入りする暮らし。そんな家にしたいなぁと思っていた。
たくさんの人に息子に関わってもらいたい。夫婦だけで子どもを育てるのは、無理があると感じていた。私も元夫も、できないことが沢山ある。それなのに二人で何とかしようとすると相手に望むことが増え、コミュニケーションがギスギスしてくる。そんな時、型破りではあるが、例えばエミちゃんみたいな第三者が家の中にいつもいたなら。人手が増えるだけでなく夫婦間のコミュニケーションが柔らかくなり、想いが伝わりやすそうだとぼんやり思っていた。

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パパとエミおばちゃんが入れ替わったことで、家にお友達親子を呼べるようになった。近所のお友達パパが、息子と遊んでくれることが増え、そのつながりで山車に乗せてもらったり一緒にBBQや花火をしたり。マンションの集会室でお年寄りが集まる場に顔を出すと、今度は参加者の方との文通が始まった。

コロナ禍で積極的に人と関われない中、時々ポストにお手紙や「一休さん」など、私が選びそうにない本が届くと、サンタさんからの贈り物みたいに息子とふたりでワクワクした。大変なご時世だけど、一緒に今を生きている他者とのつながりを感じた。そのご婦人がかつてお仕事で携わられた漢字辞典を入学祝いにいただいたことも、大切なお品をありがとうございます、と感謝がわいた。

世界を変えるための17の目標として国連が掲げているSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の目標5「ジェンダー平等を実現しよう」や目標1「貧困をなくそう」を達成するためのアイデアとして、子育ても「循環」すればいいなと思っている。ジェンダーの問題も、貧困の問題も、子育てと密接な関係にあると思うけれど「当事者の自己責任」という閉じた環境が問題を引き起こすのではないだろうか?子育てには、もっと多様な人々が関わっても良いのではないか?

助けてあげないと罪悪感があるから手を差し伸べる、というのではなく、関わることに喜びや楽しさ、メリットも感じられるから、私やカナトと関わる、という人に出会いたい。

カナトが近所のお友達パパとじゃれあいながら親子みたいに遊んでもらえるなら、今度は元夫がこの地域の子どもたちに貢献してもらえないだろうか、と考えた。そして実現したのが、保育園でのピアノコンサートだ。元夫の持ち味が最大限生かされた姿を息子も見られたし、園のお友達も先生もプロの演奏に間近で触れて興奮した様子。できたら来年も…!とオファーをくださった。

私はきっかけがあれば、ひとり親であることをさらっと周囲に話すほうだ。息子と元夫は、近所の公園でよく遊んでいるし、エミおばちゃんと息子がふらふら散歩しているところも、お友達親子はよく見かけているだろう。

離婚しているのに、パパが登場しすぎて困惑されているかもしれない。でも傷つくようなことを言う人はいないし、パパ見かけたよ~と自然に話題にしてくれる。卒園式にはエミおばちゃん、入学式にはパパが来てくれ、サッカーに興味を持てば、もう一人の妹やそのシェアメイトが頼りになると思う。
この先関わりが深くなれば、マンションのご婦人も学芸会にご招待したりするかもしれない。まだ見ぬ世界とカナトを繋ぐために、人と出会い、緩やかにつなぐ。

実は、私自身「母」と言われてもちっとも実感がわかない。こんな感じで息子をめぐる司令塔をしているだけであり、息子は私のところに来てくれ、共に生きている小さい人、という感じだ。

血縁に閉じず、相互的で、人の関わりが循環する子育て。その一環として、夕方から寝る前までの時間帯に、子どものいる家庭同士で預け合いをしたい!と思っていた。

その矢先、最初の緊急事態宣言が出た。子どもの預け合いどころではない。

自分がコロナにかかった時に及ぼす影響に怖気づいた。

そんな不安がうごめく中、オンラインのセルフケア講座があると知り、参加した。保護者会で自分がひとり親であることをカミングアウトをしても、「私もだよ!」と言ってくれる人はいなかったのに、全国にはこんなにたくさんのシングルマザーがいる。私はその時、初めてシングルマザー同士で話す安心感を知った。

普段そんなに気を遣っているつもりはなかったけれど、同情されるのが嫌で、無意識に明るい話題を選んでいたことに気付く。自分がこんなに自身の人生を気に入っているというのに。

心身がほぐれると、自分の中にキャパシティが増える。私は安心して預け合いのアイディアや希望を語り始めた。すると「近かったら私やるのに!その企画一緒にやりたい!」とお返事がきた。嬉しかった。背中を押され、一歩、行動に移す。進捗を語ると、また祝ってもらえる。そうして今、企画はぐっと進んでいる。

私は離婚を経て、シングルマザーズシスターフッドの皆さんに出会い、私らしさに向かっている手応えを感じている。安心して小さな挑戦を選び、一歩を踏み出して居心地の良さを手に入れている。そして最近は、リアルでも身近な人に希望を語り、なぜか関心が近い人を引き寄せ、ひとりでは思いつかないようなルートで、情報が集まってきている。

人に話してみることで、何かが動くよ。仲間のいる心強さよ。

信頼できる誰かが、ただ「居てくれる」ことで、何かが動くよ。

今までバラバラだった点と点が、線になってきている。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。このエッセイは、NPO法人シングルマザーズシスターフッドMother's Dayキャンペーンのために、シングルマザーのあんみつさんが執筆しました。
このキャンペーンでは、ひとりとして同じ人はいない、個性あふれるシングルマザーたちのかけがえのない素顔を祝福し「自分を大切にすること」「セルフケアの大切さ」を呼びかけています。「こういう支援て大事よね」と応援してくださる方にはぜひ、ご寄付をお願いしております。ぜひ、Mother's Dayキャンペーン応援ページもご覧ください。

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