「ニライカナイ」への祈り
幸運にも僕が現地入りした日に梅雨が明けた。
「ズルイ」「汚くないっすか」なんて揶揄されながらも、一足お先に辿り着いた沖縄県那覇市。中年の老体に鞭打ってどうにか切り抜けた週末の出張、それと引き換えに勝ち得た至福の時間。ちょっと言い方を変えれば、若手社員に仕事を押し付けて作った隙間時間、つまり人柱の上に成り立っている時間と言うことになる。
「サンキュー!」
ビルに切り取られた細い都会の空と違って、ここの空は果てしなく澄んでいて大きい。本州よりもグッと太陽に近づいた様な気さえします。風の匂いも本州の山間で感じ取れる爽やかな柔らかさと違い、強い陽光と混ざり合い、何処となく外国で感じるような力強さがある。
ふとホテルの入り口に視線を落とすと、朱色に染まったブーゲンビリアが、水をいっぱい浴びて元気に咲き誇っている。ホテルの従業員が皆で世話をしているんだなと、平和な気持ちになってきます。
仕事までの間、大人の遠足として少しだけ近くを散策することにしました。
今まで何度か沖縄に来ていますが、どうしても行ってみたかった場所がある。「波上宮」だ。
那覇港を望む高台の上に位置し、地元では「なんみんさん」「ナンミン」として親しまれている神社で、琉球国新一宮として認定されている。
ホテルから徒歩圏内である為に、少しだけ早起きして出かけてみることにしました。歩くこと10分、コンクリートで固められた独特の建物の先に、微かに鳥居らしきものが見える。
この辺りは地元でも有名な「辻」と呼ばれる歓楽街。本当にこんな場所に「波上宮」があるのだろうか。少し不安を覚えながら朝の歓楽街を抜けて行く。
この場所は古来より「ニライカナイ」への祈りの聖地であったらしい。「ニライカナイ」とは琉球で古くから伝えわる神の世界を意味する言葉で、ここに住む人々とは切っても切れないほど密接な関係であったと言う。そんな場所に鎮座するのが「波上宮」なのである。
諸外国との交易基地であった那覇港を出入りする船は、その都度、波上宮の鎮座する高い崖と神殿を望みながら、航路の安全を祈り感謝を捧げたと言う。一方、人々は五穀豊穣と大漁を祈念し、毎年正月には国王自らが参詣し、国の安寧と繁栄を祈った場所でもる。
そんな尊い場所と歓楽街「辻」がどうも合わない気がする。
神社の裏手に足を延ばすと、そこには小さいながらも歴としたビーチがある。さすが沖縄といった感じです。まだ早朝だと言うのに数名の人影を確認できる。上半身裸のおっさんとビキニ姿の女性が日光浴をしている。
日光浴?
一宮のすぐ裏手で?
古の「ニライカナイ」を感じてみる。
心ではそう思っても、どうも周りの環境がそうさせてくれない。
どうしてもビーチと神社の組み合わせがピンとこないのです。
かつての琉球国王がこの光景を見たらどう思うのだろうか。
一緒になってテトラポットの上で日光浴をするのだろうか?
仕事終わりは仲間と合流してキングタコスへ。
普天間基地近くのこの辺りは、さすがに那覇周辺と少し違う。外国人の姿も明らかに多い。
ボリューム満点のタコライスを頂いていると、目の前にも神社があることに気づいた。食後の散歩を兼ねて訪問してみると、ここがかつては異国だったと実感できる。確かに神社なのですが、僕が知っている神社と何かが違う。でも確かに神社なのです。
と言うことで、念願だった「波上宮」の参拝を果たすことが出来ました。
「ニライカナイ」ではなく「タコライス」になってしまいましたが、若手社員のお陰で「ニライカナイ・タコライス」への祈りを感じる事が出来ました。
さてと、来週からも頑張って働くとしよう。🌱
最後まで読み進めて頂きありがとうございました。
スッキリする日々が戻ってくれることを祈ります。🌱
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