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中小企業やスタートアップのために書かれたブランディング本3選

「戦わず、金をかけずに儲ける」が鉄則

日本にある企業の約99%が中小企業。しかも、そこで働く社員の数も全体の約7割。

日本のサラリーマンの多くが、小さな組織に所属しています。
 

本書はそのタイトルのとおり、中小企業を対象としたブランディング入門書。ターゲットは日本にいる大多数のサラリーマンとも言えるでしょう。

著者の高橋克典さんは、シャルル・ジョルダン、カッシーナ・イクスシー、WMFなど世界の一流ブランドを渡り歩いた経営コンサルタント。

彼は冒頭で、

「書店で販売されているマーケティング本の多くは、大企業の成功や理論ばかり」(巻頭i)

と述べ、多くのマーケティングの手法が大企業の発想であると指摘します。

さらに、

「どこかハンバーガーの匂いがします」(巻頭ii)

と形容するように、ブランディング手法やマーケティング手法のほとんどが
アメリカで広まったものゆえ、大量生産と効率偏重を前提とした理論になっていると言います。

こうした理論を自社の事業に生かそうと思っても、資金力や組織力、商品開発力に雲泥の差がある中小企業には、とうてい真似できない戦略なのではないのだろうか。という問題意識から生まれたのが本書なのです。


ところで、彼の「ブランディングとは何か?」に対する答えは明瞭です。

それは、「値引きをせずに高く売れるように」(巻頭vi)すること。もっと簡単に言えば、「もっと儲けるため」(P.2)の手段だという。

実にシンプルでわかりやすい。

そして、中小企業のブランディングとは、“大企業やライバルと戦うことなく、お金をかけずに今以上に儲けること“だと定義している。

戦わずして勝つ。お金や労力をかけずに儲ける。

そんな夢のような状態に持っていく力がブランディングにはあり、それを実現するための“中小企業専用”の様々な手法を、事例を交えながら教えてくれます。

詳細についてはぜひ本書を手にとって確かめていただきたいですが、高橋氏が伝授している「中小企業がブランディングに成功するための3つのコツ」だけ紹介します。

(1)ひとまず顧客の顔を忘れる
(2)ひとまず競合他社を忘れる
(3)ニッチのなかにリッチがある


中小企業ブランディングの実践者が語る“使えるブランディング術”

本書は、中小企業・ベンチャーに特化したブランド戦略について述べられています。

著者である木村裕紀さんが、長期的に発展を続ける企業を作るために必要なことは何なのか?を自分の会社で実践してきた知見がふんだんに詰め込まれています。

彼は自社の14期連続成長を達成しますが、その大きな原動力となったのがまさにブランディングでした。

ブランドはいくつかの要素から構成されますが、中小企業・ベンチャーにおいて重要なものは、

(1)理念としての存在意義
(2)ビジョンという目指す未来
(3)創業から今日までのコーポレートストーリー
(4)大切にしている行動指針や社是、社風、価値
(5)USP(競合優位性)の明確化

の5つであるといい、ブランディングはこれらの各要素を磨きつつ、そこに一貫性を持たせる取り組みだと説明しています。

木村さん曰く、大企業のブランディング成功事例が多いのは、これまでブランディングを主導してきたのは広告会社であり、少なくとも1千万円単位の金額がかかることから、その体力がない中小企業の成功事例がなかなか世の中に出てこなかったとのこと。

しかし、これからの時代は決して大きなお金をかけずしても、正しくブランディングに成功すれば企業の著しい成長が期待できる。

実際、木村さんは中小企業である自社の成長と取引先の企業のブランディングを手掛ける中で、さまざまな成功事例を生み出してきました。

詳細は是非とも本書を手にとって読んで欲しいですが、ブランド本にありがちな専門用語は少なく、誰にでも内容が理解でき、またすぐに取り組めるようになっているところが大きなポイント。

当事者の視点ならではの具体的な実践事例を解説しているので、ブランディングがより身近に感じられるところがオススメです。


成熟産業に新規参入して勝つための戦略とは?

本書の著者であるウィリアム C. テイラー氏は、アメリカのビジネス誌である『ファストカンパニー』の共同創刊者。同誌は毎年「世界で最も革新的な企業ランキング50社」を発表し、ここにランクインすることは国際的な栄誉と言えるほどの影響力を持っています。

さらに著者は、元『ハーバード・ビジネス・レビュー』のエディター/コラムニストという顔を持ち、今でもハーバード・ビジネス・レビューのサイトや『ニューヨーク・タイムズ』に連載を持っている売れっ子のライターです。

そのテイラー氏が、世界中を取材して回り、新しい時代を象徴する成功を収めた15の企業の成功の理由や、それらに共通する特徴について記したのが本書。

飲食、金融、病院、製造、運輸、不動産…など、イノベーションが出尽くした超成熟産業において、勝つための戦略はあるのか?

また、すぐに真似され追い越される競争の激しい業界において、ずば抜けた企業の共通点とは何か

高い業績を生み出すためには、イノベーティブな挑戦が欠かせません。さらに、ナンバーワンよりも、オンリーワンであることも重要です。こうした成功物語には、確かに共通項があったのです。


例えば、イギリスの「メトロバンク」。

2010年に100年ぶりにイギリスの金融業界に新規参入したリテールバンク、いうなればスタートアップ企業です。

この銀行のスローガンは「ついに愛される銀行が登場!子どもたちは大はしゃぎ。愛犬も歓迎。ばかげた規則は一切なし」というもので、これらはあちこちのロビーやスクリーンに表示されています。

大きな特徴は、年に休業日はたったの3日、営業時間も平日は12時間、土曜10時間、休日6時間という圧倒的な顧客志向の高さ。

さらには、新規口座開設にかかる時間は15分以内、ペットを連れての来店も歓迎という利便性の高さ。

現在は48店舗、2017年5月には100万口座に達するなど順調に成長しています。


業界内で異彩を放つメトロバンクのコンセプトですが、これは実は新しいものではありませんでした。

創業者のバーノン・ヒル氏がアメリカで開業したコマースバンクのビジネスモデルを、そのままイギリスに横展開したものだったのだそうです。

しかし、そのコンセプトを競合は真似しようともしません。

「世界最高の銀行になろう」という高い志、並外れた顧客重視の姿勢、そのための細部へのこだわり、熱意あるスタッフの雇用。

こういったものは、おいそれと真似できるものではないからです。

熱い想いと行動力は、他社を凌駕するための大きな要因となることをこの事例は示しています。

著者は、チャレンジャーブランドに共通する四つの戦略の柱を「視点」「徹底性」「突出性」「強固な基盤」と定義していますが、まさにメトロバンクはそれらを体現しているのではないでしょうか。

本書では、全部で15企業のケーススタディが紹介されています。どの企業の事例も読みごたえがあり、「なるほど!」と思えるものばかり。

理論も大切だけれど、理論を超えた「想い」や「情熱」こそが、理論を超えるブレイクスルーの重要な柱になりうることがわかります。



以上、中小企業やスタートアップこそ参考にしたいブランディング本3選を紹介しました。また面白い本を見つけたら追記したいと思います。

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