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脳科学でマーケティング?ニューロ・マーケティングに挑んだ老舗酒蔵の話

脳科学で消費者の深層心理を捉える!

ニューロ・マーケティングとは、脳科学の専門的知見や理論を活用した新しいマーケティング手法

従来のマーケティングでは、調査や観察によって消費者の心理や行動メカニズムを分析していました。

ところが、消費者の発言や行動には様々な思惑や配慮、恣意性が生じることもあるため、彼らの真の姿や思いを探り当てることは意外と難しいのです。

そこで注目されるようになったのが、脳科学を活用したマーケティング手法です。

消費者自身でも説明しにくい行動や意識の根底にある欲求などが、脳の反応を分析することで明らかになってくる可能性があるため、近年はこのニューロ・マーケティングの研究・実践が盛んに進められているそうです。
 
 

「体験」を買う消費者に対して、老舗酒蔵ができることとは?

兵庫県神戸市東灘区の「白鶴酒造」は、創業1743年の老舗清酒メーカー。

270年以上にわたって伝統的な技術と新しい技術を融合させながら、日本を代表する日本酒メーカーとしての地位を維持してきました。

その長い歴史の中で、白鶴酒造は時代の移り変わりに伴う消費者の価値観の変化に直面しました。

市場には商品が溢れ、消費者の求める価値は「所有すること」から「体験すること」に移り変わっていったのです。

消費者は体験を買う。そして、求める体験は消費者ごとに異なる。

そのため、メーカーは消費者の本質をより深く理解しなければなりません。

すなわち消費者が何に感動を覚え、何が消費者を満足させるのかを知るための取り組みが必要になったのです。
 
 

脳波測定やアイトラッキングでCMに対する反応を調査

消費者をより深く理解するためには、一般的に行われるインタビューやアンケートのようなマーケティング調査では事足りません。

消費者が発する言葉は「たてまえ」が多く、そこからは人の購買行動に結びつく感情を解明できない可能性がありました。

本当に知りたいのは、さらに奥深くに隠れている本音の部分。言語化されていない消費者の「深層心理」です。

そこで、白鶴酒造は日本酒ブランド「まる」のブランド強化のために、消費者の商品に対する無意識下の反応を調査しました。

これが、脳に直接的に問いかけるニューロ・マーケティングです。

採用された「静態評価」という手法は、被験者が商品CMやパッケージをモニターで視聴している間の脳波や目線の動きを測定するもの。

この調査で商品に興味を持つまでの段階の感情を評価し、合わせてグループインタビューを行い、購入を検討し意思決定するまでのプロセスに重要な意識を把握しました。
 
 
 

脳科学に裏付けされたCMやパッケージで、ブランドの若返りに成功

そして、この脳科学に裏付けされたデータをCM構成やパッケージデザインに活かし、リニューアルを重ねます。

さらに、その成果を再びニューロ測定による数値で把握。パッケージは、より売り場で目を引くデザインに改定され、改善を重ねたCMの効果で「親しみやすさ」や「家庭的」といったイメージが伸長したそうです。

結果的に、彼らはブランドの若返りを成功させたのです。

白鶴酒造は、以降も継続的にこの手法をブランディングに活かしています。

なお、老舗でありながらまだ研究段階にある新しいマーケティング手法を業界でいち早く導入できた背景には、同社が創業から受け継いできた「伝統を守りつつ、新しいものを取り入れる」という精神があったことも忘れてはなりません。

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