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[書評]小さな企業8社のユニークなブランディング術に学ぼう!

小さな会社にこそブランディングが必要

著者の村尾氏は、中小企業のブランディングにおける、日本のパイオニアのような存在として知られています。本書の発行も2008年と10年以上前ですが、中身は全く古さがないので、ぜひ一読をおすすめします。

村尾氏は、起業するときに、経営戦略と併行してブランド戦略を行うべきだと主張しています。

「さぁ、経営をはじめよう!」と経営戦略ばかりを重視するのではなく、「ブランドをつくろう!」とブランド起点で起業した方がビジネスは上手くいくという理論の持ち主。ブランドの定義はいろいろありますが、村尾氏にとってのブランドとは「あなたのビジネスに関わるすべての人が、ファンになるような研ぎ澄まされた経営をしている会社」とのことです。

ブランドにはファンがつきもので、ファンのいないブランドは長続きしません。会社のファンをつくるというのは、中小企業にとって経営戦略そのもの。だから、起業する際にブランド戦略が同時に必要になるものなのだと著者は言います。


生き方・働き方と合致したビジネスが人を魅了する

小さな会社には、ファンを惹きつける引力があります。その引力を生み出す原動力が「ミッション(使命感)」にあるとのこと。ミッションとは生き方であり、同時に働き方でもあるのです。

ミッションとは具体的に、
「業界の、こんなところを変えていきたい」
「こういう人のこんな生活をもっとよくしたい」
「社会のあの問題を解決したい」
「この国を、少しでもこんな風に変えていきたい」

など、事業を通してつくりたい世界のこと。

このように会社の使命や、事業の存在理由をはっきりさせ、それを上手に世間に伝えていくことが、小さな会社のブランディングで欠かせない重要なプロセスとなります。

使命感を持っている会社、使命感を持っている経営者、使命感を持っている従業員。確かに前向きで、モチベーションが高く、魅力的な会社に見えて、ファンも増えそうですよね。特に、「なんのために働いているか」が明確で、皆がいきいきと仕事をしている会社は輝くといいます。


特定の地域や業界で輝く小さなブランドたち

2章では、小さなブランドと呼ばれる企業8社を取り上げています。たとえば、有限会社ザリガニワークスという会社。「コレジャナイロボ」という子ども向けのロボットを製造販売している会社です。

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このような木でつくられた手作りロボット。その名のとおり「これじゃない感」がたっぷりのダサさで、でも妙に愛嬌のあるロボットです(笑)。

小さい頃、ヒーローの名前を伝えて親におねだりすると、似ているけど違うものをプレゼントされて「これじゃなーい!」と怒った記憶のある方も多いのではないでしょうか。

なぜザリガニワークスがこんなカッコ悪いロボットを売っているか?

それは、教育のためです。欲しいものはそんなに簡単に手に入らない、ということを子どもに体感してもらうためのロボット。なんと、この使命に共感する親たちのあいだで売れまくり、発売から20年経った今でも根強い人気を誇るロングセラー商品となっています。

どんなモノでも、どんな情報でも、ワンクリックで欲しいものが簡単に手に入る時代。「コレジャナイ」を体験する機会が減っているからこそ、ロボットの希少価値は高まっているのだとか。残念なかっこ悪いロボットを前にして、子どもはなんとか知恵を振り絞り、「これじゃなーい!」を克服します。

遊び心のある教育玩具として、ダサい見た目ながらグッドデザイン賞も受賞。キーホルダー、Tシャツ、USBメモリー、主題歌CDなど商品ラインナップは増え続け、「コレジャナイロボ」は「これが欲しい!」と求められるほどの人気ブランドとなりました。

コレジャナイロボの大ヒットによって会社も大きくなるのかと思いきや、同社の組織図には様々な事業部が仰々しく書かれているのですが、よく見るとどの部署の役職にも創業者の2人の名前ばかり。コレジャナイロボのくだらなさが、しっかりと企業にも反映されています。

何も立派な使命を掲げることだけがブランディングではありません。彼らの独特な世界観、楽しそうに働く姿は、ファンを惹きつけてやみません。

他にも小さなブランドのユニークなブランディング術が載っている本書。事例は以下のとおりです。

1.パンガン島の専門家「Phangan Traveler」
2.世界中のVIPが行列するイタリア田舎の生ハム屋
3.体育の家庭教師派遣業「スポーティワン」
4.家事代行サービス「ベアーズ」
5.真っ暗の空間を提供する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」
6.教育玩具コレジャナイロボ「ザリガニワークス」
7.世界シェア100%のゴールネット製造会社「ラ・レーテ」
8.日本の開業率を10%引き上げる「ビジネスバンク」

大企業や海外企業のブランディングとはまた一味違ったアイデアや戦略が満載で、事例を読むだけでも楽しめる一冊です!


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