306_苦労しない「総合的な探究の時間」の仕組みづくり
人生に感謝を。シンパクト和 です。
高校で総合的な探求の時間を担当する教員が苦労しているイメージがあります。
何をやったらいいのか?
何をやったら効果的なのか?
同僚の協力が得られない?
など耳にします。
私は担当者が苦労しない「仕組みづくり」を進めています。担当者が苦労する要因の考察とそれを解決する実践を紹介します。
本校の現状
2年前まで
7・8年前にまとめられた「〇〇講座」という仕組みがありました。しかし、いつの時期に誰が何をやるかが引き継がれる形で仕組み化されていませんでした。そのため、当初のビジョンが形骸化していました。その結果、学年長が中心となって、学年ごとに前年の内容を参考にしながら行っていました。
この方法の弱点は、毎年4月に新しい学年団で「何をどのようにやるか」を考えてしまうことです。学年団中心の取り組みだと、前年を参考にしつつ、その学年でやりたいように新しく考え直す傾向があります。そうすると、担当者が「仕組み」として「単純化」作業できる内容が減り、時間の無駄が多く発生します。せっかくよい「やり方」が前年に行われたのにそれが進化せずに退化する可能性すらあります。
大変な上に、取り組む内容の質が担当者の力の入れ方次第で変わってしまう問題もあります。教員の時間は多く取られるし、どういう効果が得られるかも定まらないまま進みがちです。
私はこういう教員の手間がかかる無駄を「よい仕組み」を作ることでとことんなくしたいと考えています。
改善実践
昨年より、担当分掌を定めてその分掌の数名を中心にして、「やることを仕組み化する」作業を意識しながら運営しています。誰が担当しても「継続性がある」「改善を重ねて効率的に進められるようになる」仕組みを目指しています。
なぜ探究で苦労するか?
定義は?探究とは?
何を教えるの?何をやればいいの?
評価は?成果は?
生徒に前提知識がないのに、これをやる意味あるの?
このような「問い」を踏まえて考えました。
誰が担当しても「継続性がある」「改善を重ねて効率的に進められるようになる」仕組みにするために、本校では、以下の内容をまとめて教員、生徒へスモールステップで周知を進めています。
[前提]探究とは
「答えのない問い」に取り組むには、論理的に解決策を出す能力だけではなく、「良い問いをたて行動する能力」が必要である。探究とは「良い問いを立て行動すること」と定義する。
人生を有意義に過ごすためには「問い、行動」の繰り返しが必要となるからである。生徒たちの「問い、行動」が、現在取り組んでいる問題解決につながらなくてよい。行動した過程で得られた体験を糧にし、次の「問い、行動」に繋げていくことが大切である。
自らの「問い、行動」から得られた体験の積み重ねで「いつか問題解決の芽が出るだろう。」くらいの気持ちでやってよい。基礎学力の定着は、通常教科で行う。探究では、うまくいかなくてもよいから「問い」を立て「やってみる」ことに重点をおく。
総合探究の方向性
地域の外部人材と協働して行っていく。
提携先
地域振興センター、青年会議所、〇〇大学〇〇教授、探究コーディネーター〇〇、データサイエンティスト〇〇など。
地域の外部人材と協働する理由
教員だけで専門外の学問、キャリアの指導をするのは難しいため。(質の担保が難しい)
担当教員が変わっても、持続可能な「探究活動」にする仕組みにするため。
地域に開かれた学校を実現するため。
教員・外部講師の役割
教員は、[前提]に沿って外部講師と実施内容と日程の調整を行うことと、講師が作成したプランの遂行のサポートを行う。生徒の実態を伝えると共に、学校として今取り組んでいること、生徒に取り組ませたいこと(〔前提〕を参照)を伝える。計画に則って生徒をファシリテイトする。総合探究の時間は指導者ではなく、伴走者になる。
外部講師は、教員との打合せに沿ったプランを教員とやりとりして実施計画を立てる。計画に則って生徒をファシリテイトする。
教員の留意点
教員は生徒と一緒に活動する、楽しむ、という姿勢を持つ。(生徒管理、教えなければ、傍観から脱却)
評価
自己評価・相互評価でよい。生徒によって現れる成果は異なる。やる前に成果にこだわらない。やってみて振り返りで検証する。
教員へ理解を広める
定義、プランを使用して小グループ(教務、学年長、◯学年担任)ごとに「情報共有」の時間を作り考え方を磨いたり、浸透させたりする。
教育現場は、毎年繰り返しでやることがほとんどです。その一つ一つが「改善されながら進化する」あるいは「不必要になったらなくす」仕組みができていない場合が多いです。「総合的な探究の時間」の進め方に限らず、担当者が変わっても「効率化が検討される」「効果をあげる改善」が継続的に行われるような「仕組み」を生み出していきたいです。
1年間やってみて
生徒の発表を聞き、ヒアリングしたことを踏まえて下記にまとめます。
次年度へ向けてのポイント
生徒へ知識をつけさせるための講義は必要である。しかし、その量は必要最低限にする。また、講義内容は、新しい考え方・手法を聞いた後に、プチ実践してみる時間を確保する計画にする。あれもこれも教えようではなく、教えたことを実践し、活用・応用してみる時間を確保する。活用・応用のところは思い切って生徒に任せる。「生徒が問いを立て行動できる時間」を確保することを第一にする。
1年生は、前半2サイクルは学び、後半は「自分で問いを立て行動する時間」にする。2年生は、「自分で問いを立て行動する時間」がメインとなる。途中途中で、外部講師、教員との交流を通じて「問い」と「行動」を変容させていくスタイルにする。
教員は総合探究のために特別頑張る必要は無い。普段の授業での学びが、生徒の「良い問いをたて行動すること」の過程で少しでも現れればよいので、授業で頑張ればよい。総合探究は様々な講演会を設定し、そこで新たな学びを提供することがメインの場ではない。新たな学びは、通常授業で得ている。総合探究は、それを少しでも活用して問いを立て行動する時間である。授業内容の成果が少しでも出た上で、生徒が自分の頭を使って問いを立て行動する時間になっていればよい。
大事なこと
定義を定める
担当者が変わってもできる仕組み化を意識して設計する
~なら~にお願いすればよいを整理していく
教員の強み、外部人材の強み、を活かして背伸びをしないでできることをやる
外部連携はTeamsで行うフォーマットにする
教員の理解を得るための継続的な仕組みをつくる
人生の限りある時間を大切に、自分のやりたいことを実現したい。
シンパクト和 でした。
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