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【劇団あはひ連載5回目】ポストコロナ・現代演劇を巡る新潮流vol.2 劇団あはひ(大塚健太郎・松尾敢太郎)インタビュー(5)

次世代の演劇作家を取り上げ、紹介する連載「ポストコロナ・現代演劇を巡る新潮流」の第2弾として劇団あはひ(大塚健太郎・松尾敢太郎)を取り上げる。劇団あはひは劇作家・演出家の大塚健太郎と俳優の松尾敢太郎が共同主宰を務める劇団。2018年に旗揚げしたきわめて若い劇団だ。落語や能、シェイクスピア劇などを下敷きに古典の持つ構造と日常的な口語を用いた会話劇を重ね合わせることで観客を非日常の世界へと誘い込むという作風で早稲田大学在学中の2020年2月には下北沢本多劇場に史上最年少で進出。2021年にはKAAT、今年(2022年)は東京芸術劇場と金沢21世紀美術館で相次ぎ公演。豊岡演劇祭2022(9月23~25日)に参加しての公演もおこなった。私もこのところ連続して演劇ベストアクトに選んでおり、現在もっとも注目している若手劇団と言っていいだろう。
(インタビュアー/文責:中西理)

大塚健太郎(左)・松尾敢太郎

舞台「ソネット」から音楽作品も

中西理(以下中西) 「letters」ではエドガー・アラン・ポーの「盗まれた手紙」を原案としながら、その作品化へのアプローチが普通とはまったく違っていた。作品を作る前にいろいろと皆でレクチャーワークショップあるいは研究会みたいなことをやるということがあるのでしょうか。

大塚健太郎(以下大塚)それはよくやりますね。

中西 Youtubeを見ていたら水谷八也先生にシェイクスピアについて教えを乞うみたいなシリーズがアップされているのですが。ただ、あれは「ソネット」のためというのじゃなくて、「ソネット」の後ですよね。

大塚 コロナ禍で行いましたから「ソネット」より後ですね。

中西 それでは「ソネット」はやったけれど、一応シェイクスピアもそれきりではなくて、その後も興味を持っていろいろやっていたという感じなんですかね。

大塚 そうですね。コロナ禍がひとつきっかけでもう1回「ソネット」を音楽作品にするという試みをしようとしていた時にもう一度シェイクスピアの知識を勉強しようと考えてやりました。

中西 音楽にしようというのはそれは誰の作品としてそうしようとしてたんでしょうか。

大塚 これは我々がやっていたんですよ。いまでもアップルミュージックとかSpotifyで聴けるはずなんですが、オンライン演劇とかZOOM演劇が当時流行っていたけれど、それがあまり演劇としては面白いとは思えなくて、先ほども言いましたが自分たちのやっていることはどちらかというと音楽に近いんじゃないかなと思っていたので、だったら過去作のオンライン演劇版として音楽の形式で作るということができないかなと思い、そのテキストを使って音楽作品を作ろうと思ったのです。

中西 それでは「ソネット」に音楽を付けるというのではなくて、「ソネット」を音楽にした独立した音楽作品を作ろうということだったのですね。

大塚 でもテキストは上演したテキストそのままなんです。その音声ファイルを先に作ってその後大儀見海にそれを渡して、BGMというよりもあくまで音楽が主体であるようにやってくれていいからとというようにした。

中西 それではテキストが入った音楽ということなんですね。

大塚 そうです。劇団あはひ+大儀見海のような形で出しました。

中西 それってどこで聴けるんですか?

大塚 どこでも聴けますよ。Apple MusicとかSpotifyとかiTunesとか。だいたい聴けると思いますよ。日本語のあはひではなくて英語のAwaiで検索してもらえれば聴くことができるはずです。

コロナ禍で「模型劇」

中西 劇団とは名乗ってますが集団としてはいろんなジャンルをコロナ禍の最中には手掛けているんですね。Youtubeを見たら模型劇というのも見つけたんですが。 

大塚 やりましたね。

中西 あれはどの段階でどういう経緯でやることになったんですか。「流れる」の初演と今年上演した「流れる」の再演の間ですかね。

大塚 そうです。今年の4月に再演したわけなんですが、もともとは去年上演するはずだったんですよ。Corichのグランプリを受賞して、その賞金(100万円)を使って、2年以内に再演してくれという話だった。そういうことで2021年の2月ぐらいに東京芸術劇場でやる予定で稽古もしていたんですけど、緊急事態宣言が出てそれが上演中止になったんですね。それで代わりに何かやれないかなと思って、ちょうど舞台美術の模型があったのでこれ使ってオンライン演劇の別の形の何かが作れないかなと考えて作ったんです。

中西 あれとアニメーションと呼んでいる紙芝居みたいなのも自前で制作してますよね。先ほど早稲田大学では映像演劇学科とおっしゃっていたと思うんですが、あれは劇団メンバー本人が作ってらっしゃるんですか。それとも仲間でああいうのが作れる人がいるのでしょうか。

大塚 あれは我々が全部自分で作っています。大学の友人とかではなくて劇団員でやっています。模型劇も全部自分たちでやっています。

中西 それでは将来の計画で映画を撮りたいとも以前におっしゃっていたように思うのですが。映画ということであればもうちょっとバジェットもかかるしいろいろ違いもあるとは思うのですが、劇団で撮りたいということなんでしょうか。

大塚 まあ、そうですかね。

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https://note.com/simokitazawa1/n/n5088dca3e031

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https://note.com/simokitazawa1/n/n4be2acd735f2

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https://note.com/simokitazawa1/n/n981670e15168

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劇団あはひ 過去の舞台の劇評

https://note.com/simokitazawa1/n/n0e56c8434e27

 劇団あはひ「どさくさ」(本多劇場)は現役学生劇団(早稲田大学)が本多劇場で公演、古典(落語)をベースにした作劇、学生劇団とは思えぬ緻密な空間構成で会場に負けないような成果を残したという意味でコロナがなければ年間を通してももっとインパクトを残すような出来事になっていたかもしれない。いずれにせよ、この作品でこの劇団は次世代を担う有力な存在へと名乗りを上げたといっていいだろう。(2020年演劇ベストアクト)

https://note.com/simokitazawa1/n/nc99fcc08db92

若い世代にも日常と非日常のあわひを描く演劇が台頭している。文字通りに集団名を劇団あはひとして、古典作品を題材に作劇において能楽的な構造を援用しているのが劇団あはひである。早稲田大学の学生劇団として活動してきているが、すでに本多劇場にも進出。エドガー・アラン・ポーの短編小説「盗まれた手紙」を下敷きにした「Letters」(大塚健太郎作演出)ではKAATで死者が演劇的に立ち現れる能楽的な構造を生かしながら、生と死のあいまいな境界線を浮かび上がらせた。(2021年演劇ベストアクト)

https://note.com/simokitazawa1/n/n7becce205042

https://note.com/simokitazawa1/n/n471aa2d32667

劇団あはひ(Gekidan Awai)
2018年に東京で結成された劇団。
ヒップホップ的感性に基づき、能や落語といった古典芸能を取り扱いながら、常に前衛的な表現としてそれらを提示し直す挑戦的な作品を次々と発表。
メンバーに大塚健太郎(劇作家・演出家)、松尾敢太郎、古瀬リナオ、東岳澄(以上俳優)、小名洋脩(ドラマトゥルク)、髙本彩恵(制作)。


https://maps.google.com/

落語「粗忽長屋」

https://www.youtube.com/watch?v=ltUmlXN1XlU


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