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「部活?」「インターンシップ!」志望理由書でよく見かける間違い5選

更新日:2024/09/28

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、文章作成における基本事項を紹介するのが、このシリーズ【文章作成の基本】。

(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)

 本日は、カテゴリーが難しい、志望理由書の添削でよく見かける間違いを5つ紹介したいと思います。これらは今まで記事にしようと何度か考えましたが、どの枠で話していいことなのかわからないトピックだったのでそのままにしていました。しかし、「えぇーい!ままよ!ごった煮にしてしまえ!」ということで、一つにまとめてしまいました(笑)。そのため、一つひとつのトピックが独立しており、志望理由書関連という共通点はあるものの、各々は関連性があまりありません。ご了解ください。

志望理由書の添削でよく見かける間違い5選

1.○○学研究科?

 志望理由書で自身の志望先の学部・学科名を書く際に、□□大学○○学部○○学研究科と書いてくる生徒をたまに見かけます。どうも○○学研究科を学科名と勘違いしているようですが、これは学科名ではありません。これは「大学院」です。当然高校生はいくら願っても入ることはできません。大学卒業しないと大学院には進学できませんから。

 どうしてこのような間違いが出てくるのか、自分なりに推測をしてみました。たぶん、これはこういうことが原因で引き起こされる間違いだと思います。

 これは同志社大学法学部のHPです。見ると正面下に大きく「法学部/法学研究科」とあります。間にスラッシュがありますが、並記されています。これ、大人は法学部(大学)と法学研究科(大学院)と分けて並べているんだなとわかりますが、一部の高校生はそう思わないようです。「法学部の法学研究科という『学科』」だと思っているのかもしれません。

 また、同HPの左側には、上から学科が並んでおり、同学部の各々の学科のページに飛ぶようになっていますが、このラインナップ上にも、「法律学科」や「政治学科」と並んで「法学研究科」があります。こういうのを見て、「法学研究科という『学科』がある」と思う生徒がいるようです。

 ○○学研究科は学科名ではありませんので、注意しましょう。また、もしこちらの記事を、大学関係者の方でご覧になっている方がいらっしゃいましたら、大学のサイト作りをご一考ください。

2.部活?朝練?

 部活も朝練も全く通じない言葉ではありませんが、志望理由書で、そうした学校内や部内など内輪で通用している略称を使うのはやめましょう。「部活」は「部活動」・「クラブ活動」、「朝練」は「(授業前の)朝の練習」などと書き改めてください。

 ここでは具体的に挙げませんが、中には余りにその高校や部の独自過ぎる習慣や制度、呼び方のためか、「考えても何の略なのか全くわからない略語」を見かけることもあります。これは、本当に読み手に通じません。仲間内や内輪でしかわからない略語は使わないでください。正しい、あるいは適切な表現に改めましょう。志望理由書では部活動のことを書くことが多いですが、こういうときは注意するようにしてください。

3.インターシップ?インターンシップ!

 よく「インターシップ」と間違えて表記する生徒がいますが、これは、言わずもがな「インター『ン』シップ」が正しいです。単なるケアレスミスならまだいい(よくないですよ!)ですが、文中で「インターシップ」と何度もくり返し書いている人がたまにいます。これは完全に間違えて記憶しています。

 「インターンシップ(internship)」とは、学生が就業前に行う「職業体験」・「就業体験」のことで、企業が行っているものや、学校や自治体、非営利団体が行っているものなど様々あります。こうした体験は、当然自分の将来の夢を見つけるのに役立ち、職業理解にもつながるものなので、大いに行って結構です。また、こうした体験は志望理由書をまとめる上でも有効なネタとなります。しかし「インターシップ」ではないので、間違えないようにしましょう。

4.どこまでが数詞か?

 「83パーセント」、「50メートル」、「第2回」など数字を含むものを数詞と呼び、これらは横書きの場合は算用数字で書いてもよいです(ただし算用数字は一マスに二字)。しかし、数字が入っているものが全て数詞ではありません。

 たとえば「百獣の王」は「100獣の王」とは書きません。これは「百獣」が一つの熟語であり、この場合の「百」はリアルに「100」を意味しているのではなく、「たくさん」の意味で使われているためです(同様のものに「百発百中」などがある)。同じように、「勉強には集中力が一番重要だ」の「一番」も「1番」とは書きません。この「一番」も熟語でありこれに続く「二番」、「三番」はなく、これは「最も」という意味で使われています。「一人ひとり」もそうです。これも「各個人」という意味で使われているため「1人1人」とは表記しません。

 このように、数詞は算用数字表記できますが、数字だからといって何でも算用数字にするのはやめましょう。数詞でないものに算用数字は使えません。

5.スマホ?

 私たちの生活に欠かせなくなったスマートフォン。志望理由書の中のエピソードの中でもよく登場しますが、ここで「スマホ」と書かない方が無難です。「略称だからダメ?」、という声が聞こえてきそうですが一概にそういうことではありません。たしかに3の「部活」のとき、そういう話をしましたが、何も全ての略称がダメということではありません。

 たとえば「一般的に略称として通用しているもの」や「略称そのものがオフィシャルなもの」、「もはや略称自体が正式名称のようになっているもの」なら、略称で表記可能です。たとえば、NHKを日本放送協会と言い直す必要はありません。NHKは、その企業自身がオフィシャルなものとして使っているからです。

 では、「『スマホ』もいいのではないか?みんなわかるじゃないか。」、そういう人もいると思いますが、これは「ダメ」です。それは、たしかにみんなに通じる言葉ですが、これはまだ現在一過性の「流行語」や「若者語」として認知されていると考えられており、正しい表現とは言えないと考えられているからです。これは「ら抜き言葉」の記事で述べましたが、あの「ら抜き言葉」でさえ昭和初期に生まれてもう100年以上経つにも関わらず、いまだに「正しい表現とは言えない」とされています(下の記事を参照)。

 これを踏まえると、「スマホ」という呼称は、一般的には2007年に生まれたとされており、まだ「正しい日本語表現」とは言えない段階と言えます(下のwikipediaの記事の「略称・呼称」の項目を参照)。

 ですから、志望理由書では「スマホ」ではなく、「スマートフォン」と表記してください。なお、「歩きスマホ」や「スマホ割」はそのままでよいです。前者は、「『歩きスマホ』は『歩きスマートフォン』と一般的に言わず、また官庁や自治体の冊子やポスター、ウェブサイト(公文書)に使われている事例も多くあり、『歩きスマホ』そのものが一つの単語として一般的に認知されていると言えるため」、後者は「一企業のサービス名としての呼称(=その略称がオフィシャルなサービス名である)であるため」です。ややこしいですが、このように考えてください。

(例:東京消防庁による「歩きスマホ」事故への注意喚起)

まとめ ~志望理由書は一つの「書類」です。~

 以上が、カテゴリーの難しい、志望理由書でよく見かける間違い5選でした。

 実は、3と5の「略称問題」は、いいか悪いか、判断が難しいところがありますが、ここに書いたことをおおむね守ってもらえれば大きな問題はないだろうと思います。判断に困る生徒は、近くの大人や学校の先生に聞いてもいいかもしれません。

 志望理由書は、大学に提出する大事な「書類」です。正しい表記・表現で書くようにしましょう。


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