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エッセイ|ほどいてゆく

取り組んでいる仕事のプロジェクトで、初めてむかえる大きな山をうまく越えられたらやりたいこと ―――

ステキなパジャマを買う。(最高に心地よく眠りたい)

切らしている基礎化粧品を買いに行く。(ずっとまえに慌てて買った、ドラッグストアの旅行用セットでどうにか間に合わせている)

整体院に行く。(ツボのよくわかっているマッサージ屋でもいい)

録画を溜めこんでいる俳句番組を、一気観する。(こういうときのために溜めこんでいる)

Netflixでヒューグラント漬けになる。(『ノッティングヒルの恋人』とか、『Re:LIFE リライフ』、『ラブソングができるまで』… あーもう、何でもいい…)

川上弘美さんのエッセイを読む。(ずっと前に買った『ゆっくりさよならをとなえる』」をもう一度。日が暮れるころに、それっぽく浸って読みたい)

ORIGINAL LOVE(ちょっと古い)と、J.S.バッハ(かなり古い)を、交互にガンガンかけてロックする。

無農薬・減農薬の食料品を、ショッピングカートいっぱいまとめ買いする。(すこし食事がおろそかになっているのが悩み)

甘いトマト+モッツァレラチーズを、たんまり食べる。(かけ値なしに旨い)

セーターを編みすすめる。(愛すべき単純作業。とくに、編み間違えて慎重にほどいていく作業が、この上なく心地いい)

新しい靴を買う。(靴を買うという行為、いつが最後だったかもう記憶になく)

傘も欲しい。(衝動買いになると思ってガマンしたやつ)

英会話にとりくみたい!(理性的な望みが一つだけあった)


さて。
プロジェクト最初の山をどうにかこうにか上首尾に越えることができ、いざ欲望の海へ漕ぎださん、と街へ出かけた。まずはステキなパジャマを買って(しかも2着!)、上機嫌で次へ向かうべく店から出たところで、わたしの動きがハタ、と止まった。

あと、何が欲しかったんだっけ?…忘れてしまった。ちょっとやそっと考えたところで思い出せない。(逆に、それほどまで寝心地についての強いこだわりはあったんだということに気づかされた)。

プロジェクトの第一難関を突破したというだけで、じゅうぶん満足したのかな。
欲も何も感じなくなるほど、疲れきっているのかもしれない。
どのみちまた次の山がやってくることに思い至って、途端に気持ちのゆとりを失くしたか…?(”廊下”現象のため忘れたか?なんてことは、あえて考えない)。

あらためてゆっくり思い出しながら、このエッセイの冒頭部分に一つずつ書いてみた。やりたいと思っていたことが、少しずつ、少しずつほどかれていく…

そしてもう一つ、やりたかったことがあったのを思い出した。すでに手をつけていることだった。

それというのは、いまここでこうして、やっていることである。


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