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思わぬところで大きな愛に触れた話~「続ける思考」~

 この記事を読んでいる貴方には、やりたいことはあるだろうか。
 私は山のようにある。Noteの更新もしたいし創作もしたい、そのためのプロットも書きたい、歌を歌いたい、本を読みたい、勉強をしたい、動画も見たい、ゲームもしたい。やりたいことだらけだ。
 しかし今挙げたことを全てこなせるわけではない。何故なら人にはやるべきこともあるからだ。
 一番身近なやるべきことは仕事だろう。仕事のことは憎んではいないが、これがなければもっとやりたいことが出来るのにと溜息を吐きたくなる日は何度もある。そう言っておきながら、仕事が無い日の方がだらけてしまうこともあるのだが。
 そんな風に、人はやりたいこととやらなければならないことを天秤にかけて過ごしている。
 だがもし、やりたいこともやるべきことも出来るようになる、そんな魔法のような方法があったとしたら。貴方は手を出すだろうか?

「『やりたいこと』も『やるべきこと』も全部できる! 続ける思考」(著:井上新八、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

この本を読もうと思ったきっかけ


 なんとなくAmazonを見ているときにこの本に出合った。「あなたへのおすすめ」で表示されていたような気がする。どうして表示されたのかは正直覚えていない。
 ただとにかく、やりたいこととやるべきことを両立したいと強く思っているところに、「この本を読めばいいよ」と言わんばかりにこの本が目に飛び込んできたことを覚えている。
 私は早速この本を購入した。

何故「続ける思考」なのか


 忙しい生活の中でやりたいこともやるべきこともやるにはどうすればいいのか。それは毎日継続して行う習慣を身に付けることだ。
 今すぐに成果はでなくとも、やり続けていればいつかは終わる。いつかは形になる。いつかは、何か意味が見つかる。
 ではそのために、どうしたら新しく始めようと思ったことを続けられるようになるのか。そういうことが、この本の前半を占める。
 後半は、著者自身の様々な習慣とそこから得た知見や実体験を元に、習慣を継続することの大切さを説くエッセイのような文章になっている。

 さて、そのような本を読んだという記事であれば、当然、習慣を身に付けるための知恵を共有してくれることを期待されていることだろう。
 小説を書くとき、読者の期待を裏切る行為はしてはならない。それはキャラクターの行動であったり、ストーリー展開であったり、期待が込められる箇所は様々あるが、そういう期待を裏切るような行為をすれば、読者は一気に離れていく。いい意味で予想を裏切られる展開というのもあるにはあるが、それは予想であって期待ではない。予想には「こうなるんだろうな、でも違う展開になって欲しい」という期待が込められている場合もあるからだ。
 故に、小説では読者の期待を裏切らない方がいい。
 しかし、これは小説ではない。
 よって、私は継続させるために必要なことは記述しない。
 それよりも、私はこの本の何に感銘を受けたのか、そちらに焦点を当てて話をしたい。
 勿論習慣を継続させるための方法や考え方はとても参考になったし、実際日々のルーティーンを見直して、試行錯誤を重ねる日々を楽しませてもらっている。
 ただ、それは実際に本を読んで得た知識だ。
 知りたいのなら、貴方も実際に本を読んでみればいいだけの話だ。
 前にも言ったかもしれないが、私は本の要約をしたい訳ではない。それよりも、本から得た知見を紹介し、自分がどのように思考を深めたか、感銘を受けたかに焦点を当てて話をしたい。

この本の真髄


 あくまで私にとっての、という話だが。
 著者自身がたくさんの習慣を継続しているだけあって、参考に出来る例がたくさんある。すぐにでも何か習慣を始めたいと思わせるだけの力がこの本にはある。
 けれど、それ以上にこの本に出合えてよかったと思える箇所がある。いくつか紹介しよう。

1.正しくない努力などない
 先日「無駄な努力」なる文言を立て続けに見る機会があり、嫌な気持ちになったことがある。
 無駄な努力なんて存在しないと考えているからだ。どれだけ遠回りだったとしても、結果に結びつかない行いであったとしても、自分がやると決めて続けた事の中に一切の学びが無いとでも思っているのだろうか。最短ルートを教授しようとするのは結構だが、勝手に無駄だと決めつけないで欲しい。
 そんな風に思った日があった。
 そしてこの本で、同じような考えに出会った。
 純粋に嬉しかった。正解ばかりを求め、不正解恐怖症と新しく命名してやろうかと思うような、「間違い」を避ける空気のある世界が嫌だったから、同じ考えの人と出会うことが出来て不思議と元気が湧いてきた。
 
2.好きなものから遠ざかる理由
 私は好きなものを「好きだ」と認めるまでの時間が人より長い。
 私の中で「好き」という感情は物凄くハードルが高い。優れた身体能力を生かし様々な障害物を乗り越えていくフィールドアスレチックかのような具合で、自分の中で設けた基準を全て超えないと「好き」だと認めることが出来ない。
 そして「好き」だと認めた後も、今度は「好き」ならああしなきゃこうしなきゃとまた制限をつけて溺れてしまう。最近はそうでもないが、一時期は本当に酷くて、好きなものを「好き」でいられない自分が本当に嫌だった。
 しかしこの本に、私の状況に近しい答えが偶然記述されていた。
 好きだから大切にしたくて、結果ハードルを上げ過ぎて離れてしまう。
 これは著者の昔好きだったもの(今は習慣化してまた胸を張って好きと言えるようになっている)に対しての所感であり、私の話ではない。
 しかし、薄々感じていた私の想いが思いもよらぬところで言語化されていて、スッと胸が軽くなった。
 思ってもみないところに自分が探していた答えがあるから読書はやめられない。
 これは著者自身も語っていたが、本当にその通りだと思う。

3.この本の裏テーマ
 習慣を継続すること、がメインテーマの「続ける思考」だが、著者によると実は裏のテーマが設定されているらしい。
 テーマそのものは実際にご自身で確かめて頂きたいのだが、該当箇所を読んだとき、私は「あ、一人でいいんだ」と口にしてしまった。
 習慣とは、自分自身の力だ。過去から未来の自分へ向けて、自分で自分を助けることが出来る唯一の手段。「人を頼ろう」とか、「一人で抱え込まない」とか、皆の力が叫ばれる中で、著者は数少ない、一人の力がどれだけ凄いかと説く人物だった。
 私は人を頼るのが苦手だ。出来ることなら一人でなんでもこなしたい。不可能なことは分かっているけれど、出来るだけ自分一人の力を試したい。そんな自分が嫌でどうにか人を頼ろうと練習してみても、結局自分が全部やった方が速いし早いということに気付き、どうしたもんかなと思っていたところだったのだが、別にどうでもよくなった。
 一人でいいなら一人でやろう。
 それは別に寂しいことじゃないと、同じように一人の力で全てをこなす人が、本を通して教えてくれた。

まとめ


 習慣を続ける力が身につく本だ。これは一つ確かに言える。
 しかしそれ以上に、この本は「人の力を借りずに自分だけで頑張りたい」という、意地っ張りとも言える人達に向けた、壮大なラブレターのような本だった。
 無理しない、頑張らない、肩肘張らない。そう諭す本は多々あるけれど、そのまま突き進んでしまえ! その先に何かある! と背中を押すような本には、この本以外にそう無いんじゃなかろうか。そしてそんな応援の書が、今、自分の手元にある。これ程幸せなことは無い。
 実はあとがきに、「この本にあったことはとっとと忘れていい」というような記載がある。本来なら著者の意図を汲んで忘れるべきなのだろうが、残念ながら私には、その言いつけを守ることが出来そうにない。
 そして本当はもう一つ、世界がひっくり返るんじゃないかというくらいの気付きを得られる箇所があったのだが、それはまた、別の記事で語ることにする。
 習慣が続かないと悩んでいる人、そして、人生がなんとなくつまらないと感じている人は、是非、この本を読んでみて欲しい。
 きっと世界が好きになる。


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