絵画に潜むミステリー
今回は、私のお気に入りの「絵画に潜むミステリー」を紹介する。
『老漁師』チョントヴァーリ・コストカ・ティヴァダル
Tivadar Csontváry Kosztka
老人。ボートに乗っていてるようだ。キレイな海。この絵の中央に両面鏡を置くと、さらに2つの、違う絵が現れるのだ。
鏡を置き右側から見ると、祈りを捧げる老人が見える。景色はいたって穏やか。
しかし、鏡の左側から見ると……悪魔が現れる。一変嵐れた海を背に、こちらを睨みつける。
この作品の画家は、菜食主義・反アルコール主義・喫煙反対だった。それが関係あるとは言わないが、なかなかストイックな面があったようだ。
『老ギタリスト』パブロ・ピカソ
Pablo Picasso
ピカソの「青の時代」に描かれた1枚。赤外線とX線の調査により、絵の中に、もう3体いることがわかった。
貧困で、キャンバスが豊富に買えなかったからというシンプルな理由から、友人が亡くなった悲しみで精神が安定せず、何度も描き直しーーという説まで。いろいろ考えられているらしいが、真相はわからない。
調べて見つかったりすると、人は、いろいろと憶測する。魅力的な画家、魅力的な作品だから。
『夜警』レンブラント・ファン・レイン
Rembrandt van Rijn
レンブラントの1642年の作品。これは、実は、日中を描いたもの。タイトルは、18世紀末に、他の人によってつけられた。作品が、汚れやニスの蓄積で、かなり暗くなっていた。夜の絵のように見えてしまったのだ。
市民の自警団の中に、“場違い” な金髪(で金色のドレス?)の少女がいる。
逆さまの白い鶏。実在を描いていたのなら、完全に奇妙なのだが。彼女はそこに本当に居たのではなく、この市民団の象徴として描かれたもの。鶏の爪は火縄銃手、死んだ鶏は倒した敵のシンボル、金色は勝利の色だったそう。
そして、この少女の後ろに、もう1人少女がいるのがわかるだろうか。顔はハッキリとしないが、青いドレスは見てとれる。ギルドの紋章が、青地に金の爪だった。金髪・青いドレス・鶏・鶏の爪に、全て意味があるのだ。納得。
この人が見つけられるだろうか。唯一、ベレー帽をかぶった人。心霊写真のような怖さがあるが、画家の自画像だといわれている。※中央の後ろにいる
「モーション残効」の解説には、ゴッホの『星降る夜』が頻繁に用いられる。回転するアニメーションを見てから、本来の絵を見ると、動いているように見えるというもの。
目の錯覚の1つだ。
ゴッホの描いた素敵な星空が動いて見えるなら、目の錯覚、大歓迎。
古い絵画の中で、多くの犬たちが、“煙を吸って” いる。
犬たちよ、一体何をしているのだ。
これらは、「聖ドミニコの犬」 として知られるモチーフである。上の絵で一緒に描かれている女性は、聖ジェーン。
彼女は、「自分の胎内に、燃える松明を口にくわえた白黒の小さな犬を宿している夢を見た」という。さらに、「その犬を産むと、犬は屋外に飛び出し、全てのものに火をつけた」と。ジェーンの息子が、世界に影響を及ぼすサインだと解釈された話。彼女の息子は、聖ドミニコになった。
なるほど。
聖ドミニコは、ドミニコ会伝道師修道会を設立した。信仰を広めるという点で、まぁ、世界に火をつけた。ドミニコ会の伝道師たちは、「ドミニケーンズ」(主の犬の意味あいで)と呼ばれることがあった。
犬と地球儀。この描かれ方が多い。犬が、松明を地球儀に押しつけている。世界を盛り上げるよ!という、アツいメッセージらしい。ブチアゲなんだ……。笑
犬たちは、煙を吸っているのではなかった。
聖母マリアが、夢の中で、聖ドミニコにロザリオを授けたとう話がある。
いた!やった見つけた!という気持ちになる。
ここまでくると、もう、いてほしい。松明犬。
絵画の楽しみ方はいろいろあって、おもしろい。