紗綾

世に溢れんばかりに出まわっている処世術や俗説に、「また同じ話だ」「ぶっちゃけこれじゃな…

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世に溢れんばかりに出まわっている処世術や俗説に、「また同じ話だ」「ぶっちゃけこれじゃない」と感じている人へ。 行き止まり感を払拭できるような、そんな文章を目標に書いています。 読みやすいよう仕上げていますが、短い文章が好きな人にオススメできる長さではないです。 更新は週1回です。

記事一覧

私の死に方など忘れて生き方を覚えていて。(古代の才色兼備ヒュパティアの人生)

2009年の映画『アゴラ』(邦題『アレクサンドリア』)。 この作品を観たことがある人もない人も、同様に大切なことが学べるような、そんな文章をめざして。今回は書いてみ…

紗綾
8日前
26

持つべきものは好敵手

今回は、最強の探検家かつ収集家、アルフレッド・ウォレスについて。 以下、過去回より。 この回はダーウィンとマルクスを軸にして書いたため、構成的にどうしても、ウォ…

紗綾
12日前
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「怪物的な女連隊」と呼ばれたものについて。

女性による統治は、キリスト教会において、長い間論争の的となっていた。 議論の中心は、女性が男性を支配することが自然かどうか・女性にリーダーシップの能力があるかど…

紗綾
2週間前
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アインシュタインにも解決できなかったことを解決するのはあなたです。

戦争とは避けられないものなのか。 1932年に、20世紀最大の天才が、その世紀で最も影響力のある心理学者に手紙を書いた。 その手紙の中で、アルベルト・アインシュタイン…

紗綾
3週間前
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ゴヤ「あなたが思うより健康です」

フランシスコ・ゴヤは、18世紀後半のスペインの画家だ。彼のいくつかの作品を「美術史上最も暗い」と言う人もいる。 「黒い絵」シリーズ。1819年から1923年の間に、高齢の…

紗綾
1か月前
29

プラトン、それが弁護士という仕事なんだよ…。

『ソクラテスの死』。 死刑宣告を受け、自ら毒をあおろうとするソクラテス。彼は今まさに、死のうとしている。 毒杯を手渡す人も含め、皆悲しみに打ちひしがれている。暗…

紗綾
1か月前
29

メルエムと蟻に学べ

つい先日、研究者らから、負傷した仲間に「切断手術」をほどこすアリについての報告がなされた。 全体の構成としてだが。ナショナル・ジオグラフィックの記事では読めない…

紗綾
1か月前
29

地球の仲間と連鎖しよう(バイオ・ミミクリー)

生物模倣や生態模倣、バイオ・ミミクリーやバイオ・ミメティクス、と呼ばれるもの。 今回は、これを私らしい文章で解説していく。最後まで楽しく読んでもらえるように、工…

紗綾
1か月前
47

マヤ人からの蒼い手紙

マヤ。この地域に住んでいたさまざまな民族を総称する、現代の用語だ。彼ら彼女らは、統一感をもって自らを「マヤ」と呼称などしていなかった。 私も便宜上、マヤ文明やマ…

紗綾
2か月前
44

海賊に関するあらゆる真実

「海賊の黄金時代」(広義では1650年~1730年)。犯罪が多発していた状況に対してつけるには、少々不適切にも思える、この名前だが。 カリブ海・アメリカ東海岸・大西洋東…

紗綾
2か月前
35

脳は虹色である。ブルーでもピンクでもない。

ニューロセクシズム。 男女は、生まれつき脳の構造が違うため、行動や思考が異なる・得意不得意があるという考え方。いわゆる、「男性脳」「女性脳」というやつだ。 この…

紗綾
2か月前
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書きかえられてしまったシンデレラの本当の人生

ビビデバ Bibbidi-Bobbidi-Boo シンデレラには、350~1500の、異なるバージョンが存在する。 数に幅がありすぎるのは、把握しきれないほど多いことと、これもシンデレラ…

紗綾
2か月前
48

一緒に考えよう。脳と意識のこと。

何かが起こるのを特別に待っていると、その時間を長く感じる。 空腹時、カップラーメンの3分は3分じゃないだとか。「指折り数えて待つ」という言いまわしだとか。そんな…

紗綾
2か月前
58

私たちは草原を走り続けている。

人類誕生の地は現在エチオピアやケニアがある地域だと、長年考えられていた。これが定説となっていた。 しかし。2017年に、モロッコで、より古い現生人類の化石が発見され…

紗綾
3か月前
47

ダーウィンの苦悩とインフルエンサーの苦悩

何故ずとまよ?最後まで読めばわかる。 マルクスは、キリスト教のことを「人民のアヘン」と呼んでいた。 「宗教は悩める者のため息であり、心なき世界の心情であるととも…

紗綾
3か月前
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感情的な涙を流す生き物は人間だけ。そこに何があるのか。

神経学のブランチに、行動神経学と呼ばれるものがある。その分野には、人が泣くことを研究している人たちがいる。 1人の行動神経学の研究者が、ある日、こんな質問をされ…

紗綾
3か月前
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私の死に方など忘れて生き方を覚えていて。(古代の才色兼備ヒュパティアの人生)

2009年の映画『アゴラ』(邦題『アレクサンドリア』)。 この作品を観たことがある人もない人も、同様に大切なことが学べるような、そんな文章をめざして。今回は書いてみる。 アレクサンドリアは、カイロに次ぐエジプトの都市だ。 アレクサンドロス3世(アレクサンダー大王)が遠征行の途中、オリエントの各地に建設していたギリシア風都市の、第1号だった。 古代アレクサンドリアには、各地から、学者や作家が集結していた。あらゆる分野の書物が集められた大きな図書館もあった。地中海貿易の中

持つべきものは好敵手

今回は、最強の探検家かつ収集家、アルフレッド・ウォレスについて。 以下、過去回より。 この回はダーウィンとマルクスを軸にして書いたため、構成的にどうしても、ウォレスをこの程度しか紹介できなかったのだが。 彼の研究のみならず人生も、大変素晴らしいものだった。知らない人は、ぜひ、ウォレスのことを知ってほしい。 飽きずに読み続けられるよう、工夫して書いてみる。 ウェールズのウスクの、中流家庭に生まれた。兄弟姉妹は9人(本人含む)もいた。 家計は苦しく、ウォレスは13才で

「怪物的な女連隊」と呼ばれたものについて。

女性による統治は、キリスト教会において、長い間論争の的となっていた。 議論の中心は、女性が男性を支配することが自然かどうか・女性にリーダーシップの能力があるかどうかだった。 たとえば、16世紀のイギリスで、男性摂政から女性摂政に移行する際も。宗教の問題が複雑に絡みあった。 スコットランド生まれのプロテスタント説教者ジョン・ノックスは、彼が monstriferous empire of women と呼んだものとの戦いに、人生の大半を費やした。 monstrifero

アインシュタインにも解決できなかったことを解決するのはあなたです。

戦争とは避けられないものなのか。 1932年に、20世紀最大の天才が、その世紀で最も影響力のある心理学者に手紙を書いた。 その手紙の中で、アルベルト・アインシュタインはジークムント・フロイトに、「人類を戦争の脅威から救う方法はあるか」とたずねた。 フロイトは長く詳細な返事を書いた。その中に、現代を生きる私たちに希望を与えてくれる内容は、あったのだろうか。 その頃すでに、ユダヤ人への迫害があった。 ユダヤの血をひく両者:フロイトはイギリスへ亡命、アインシュタインはイギ

ゴヤ「あなたが思うより健康です」

フランシスコ・ゴヤは、18世紀後半のスペインの画家だ。彼のいくつかの作品を「美術史上最も暗い」と言う人もいる。 「黒い絵」シリーズ。1819年から1923年の間に、高齢のゴヤが自宅の壁に描いた。14点から成る。 自宅の壁ーー世に公開される前提で描かれたものではなかった。誰にも見られたくなかったのかもしれない。今回の文章を書くにあたり、改めて、見ちゃってごめんというような気持ちにもなった。 私には、他人とシェアしたくない自分だけの精神世界があり。いや、みんなそうだろうが。

プラトン、それが弁護士という仕事なんだよ…。

『ソクラテスの死』。 死刑宣告を受け、自ら毒をあおろうとするソクラテス。彼は今まさに、死のうとしている。 毒杯を手渡す人も含め、皆悲しみに打ちひしがれている。暗くて見えづらいかもしれないが。最後方に描かれている立ち去る人らは、ソクラテスの身内だそう。つらくて見ていられなかったのかも。 彼の妻は子どもを抱えながら泣いていた、とプラトンの『パイドン〜魂の不死について〜』に書かれている。 この植物の英語名はヘムロックで、米国の安楽死協会は「ヘムロック協会」だ。苦痛なく死にい

メルエムと蟻に学べ

つい先日、研究者らから、負傷した仲間に「切断手術」をほどこすアリについての報告がなされた。 全体の構成としてだが。ナショナル・ジオグラフィックの記事では読めない文章を書けるように、努力してみる。 野生動物が何かしらの治療行為をするのは、そこまで珍しいことではない。 たとえば。スマトラ・オランウータンは薬草を駆使する。チンパンジーにも同様の行動が見られる。傷の手当てをするアリも、今回はじめて発見されたわけではない。 だが。この度の報告にある Camponotus flo

地球の仲間と連鎖しよう(バイオ・ミミクリー)

生物模倣や生態模倣、バイオ・ミミクリーやバイオ・ミメティクス、と呼ばれるもの。 今回は、これを私らしい文章で解説していく。最後まで楽しく読んでもらえるように、工夫して書いてみる。 バイオ・ミメティクスは、単に、自然界からインスピレーションを受けた製品の開発で。バイオ・ミミクリーは、製品開発を通じて気候変動などの課題解決を目指す、より大きな概念だ。ーー的な解説も存在するのだが。 個人的にはこう思う。 新しいテクノロジーを実装するために、自然のエンジニアリング・ソリューシ

マヤ人からの蒼い手紙

マヤ。この地域に住んでいたさまざまな民族を総称する、現代の用語だ。彼ら彼女らは、統一感をもって自らを「マヤ」と呼称などしていなかった。 私も便宜上、マヤ文明やマヤ人と書く。ごめん。 考えたことがあるだろうか。日本はいつから「日本」なのか。日本という言葉は、古代中国の世界像の中で生まれた。倭国 → 日本国。本題ではないため、詳しくは、他力本願。 オルメカは、メソアメリカ文明の母体だ。 オルメカで生まれた風習などが、マヤやその他文明に伝わっていったということに、各研究者ら

海賊に関するあらゆる真実

「海賊の黄金時代」(広義では1650年~1730年)。犯罪が多発していた状況に対してつけるには、少々不適切にも思える、この名前だが。 カリブ海・アメリカ東海岸・大西洋東部・インド洋で活動した海賊のみを考えて、存在する呼び名である。たとえば、東アジアの同時期の海賊は、区別してあつかわれている。 そうすると。海賊……と呼ばれる犯罪者……の大半はイギリス人かアメリカ人(アメリカ大陸への植民者)だった、ということにもなりかねない。実際は、オランダ人やフランス人の海賊も大勢いた。逃

脳は虹色である。ブルーでもピンクでもない。

ニューロセクシズム。 男女は、生まれつき脳の構造が違うため、行動や思考が異なる・得意不得意があるという考え方。いわゆる、「男性脳」「女性脳」というやつだ。 この科学的根拠は、乏しいのである。 男女の脳の違いを示す根拠として、よくあげられるものの1つに、「左右の脳をつなぐ神経線維の束である脳梁(のうりょう)が、女性の方が男性よりも太い」というのがある。 これはどこから出てきた話なのか。 1980年代に行われた、男性9名と女性5名という極めて少ない人数を対象にした研究。

書きかえられてしまったシンデレラの本当の人生

ビビデバ Bibbidi-Bobbidi-Boo シンデレラには、350~1500の、異なるバージョンが存在する。 数に幅がありすぎるのは、把握しきれないほど多いことと、これもシンデレラの亜種か?と判断がつかないことが原因。 初代・シンデレラはギリシャ人。 本家本元の物語は、紀元前(何年かは諸説ある)のギリシャで、ストラボンによって書かれた。 ロドピスという名の少女。トラキア生まれ。奴隷として、エジプトへ連れて行かれる。鷲が彼女の金色の靴をくわえて飛び去る。ファラ

一緒に考えよう。脳と意識のこと。

何かが起こるのを特別に待っていると、その時間を長く感じる。 空腹時、カップラーメンの3分は3分じゃないだとか。「指折り数えて待つ」という言いまわしだとか。そんな感じだ。 子どもの頃、オーストラリアに住む親戚の家に、しばらく滞在していたことがある。動物が大好きな私は、何日も荷づくりを繰り返すという奇行に出た。待ちきれずにとった謎行動は、私に、出発日をよけい遠く感じさせていたに違いない。 私たちの脳は、どのようにして時間の経過を感じるのか。 時間感覚に関連する脳構造を特定

私たちは草原を走り続けている。

人類誕生の地は現在エチオピアやケニアがある地域だと、長年考えられていた。これが定説となっていた。 しかし。2017年に、モロッコで、より古い現生人類の化石が発見された。 ホモ・サピエンスの出現は、従来の想定よりも、10万年以上早かった可能性。 判明している「事実」というものは、今日までにわかっていることにすぎず、明日にはそれが大きく変わっているかもしれない。 このことに、改めて、気づかされる。 「従来の共通認識では。ホモ・サピエンスは、アフリカのどこかにあった『エデ

ダーウィンの苦悩とインフルエンサーの苦悩

何故ずとまよ?最後まで読めばわかる。 マルクスは、キリスト教のことを「人民のアヘン」と呼んでいた。 「宗教は悩める者のため息であり、心なき世界の心情であるとともに、精神なき状態の精神である。それは民衆のアヘンである」たとえば、25才の時に書いた論文内では、このように表現していた。 宗教を完全否定していたわけではないのは、感じとれる。宗教は、人々を不幸な現実社会を改革することから遠ざける。彼は、このように言いたかったようだ。 国王権力と支えあう関係になり、専制支配のもと

感情的な涙を流す生き物は人間だけ。そこに何があるのか。

神経学のブランチに、行動神経学と呼ばれるものがある。その分野には、人が泣くことを研究している人たちがいる。 1人の行動神経学の研究者が、ある日、こんな質問をされた。「先生、全く泣かない人が存在すのはどうしてですか」(質問者には全く泣かない友人が2人いるという) そんな質問をされて。研究者ははじめて気がついた。泣くという行為についてはさんざん追求してきたが、泣かないということに対してほとんど興味をもってこなかった自分に。 彼だけではない。当然といえば当然かもしれないが。人