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第8回 一本立ち

新潟に来てから、ダイナミックな風景、コロコロ変わる激しい気候、新鮮な素材、それらと共存してきた人々の技術や知恵や生き様に圧倒される毎日です。ただ、どこか雅(みやび)さ、彩り(いろどり)に飢えていた頃、みなとまち新潟古町花街の伝統文化に接する機会がありました。

新潟古町(ふるまち)は、「置屋」「料亭」「待合」からなる「三業」が現役で稼働している全国でも珍しい地で、上の写真(新潟三業協同組合)近くを通ると、優雅な三味線の音色がきこえます。

お座敷では、華やかで上品な衣装や所作、唄や三味線や舞踊、会話や気配りにプロの気合いを感じます。女性客は「あねさま」、男性客は「あにさま」と呼ばれ、緊張もすぐにほぐれていきます。

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お座敷体験が楽しかったのでランチ付きイベントにも参加しました。上の写真は「樽拳(たるけん)」というお座敷遊びの様子。「トトンがトン、おまわりさん・・・」とじゃんけんで負けた方がクルッとする遊び。芸妓さん達は踊りで鍛えたブレない体幹で”シュッ”とカッコよく回転します。お客さんは、酔いがまわりそうですね。ワークショップのアイスブレイクとか、脳トレにも活用できそうな遊びでした。

換気、感染対策バッチリの会場で、マスク姿の芸妓さんに会えるのは今だけ。関東では半人前を「半玉」一人前を「芸者」、京都では「舞妓」「芸妓(芸子)」と呼びますが、新潟では「振袖さん」「留袖さん」です。

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ここで重要になるのが「一本立ち」という日本語。

「一本立ち」は、樹木などが一本広いところに立っていること、独力でやって行くこと、ひとりだち、独立、などの意味で使われ、その言葉の由来は、江戸時代に使われていた「線香時計」とされています。

セイコーミュージアム銀座によると、線香時計は寺子屋での授業時間、芸者の仕事時間を、線香の燃える本数で管理したタイマー。線香が1本燃える時間にばらつきが少なかったことから、何本分働いたかで給与計算を行い、線香1本が燃焼する時間(約30分間)に一人座敷が務まれば「一人前」と認められ、ここから「一本立ちする」という言葉が生まれた、とあります。

新潟では、置屋に所属する芸妓さんと、養成および派遣を行う柳都振興株式会社に所属する芸妓さんがいるのですが、株式会社組織から独立して自分の置屋をもつことも「一本立ち」と言われているようです。

建築や街並みも風情があり「いちげんさん大歓迎」の新潟古町。きっとリピートしたくなりますよ。


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