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私を構成する5つのマンガ

「バイオレンスジャック」

「永井豪の最高傑作にして最高駄作!」とは、かつてmixiのバイオレンスジャックのコミュニティにあった紹介文だが、まさにそのとおり。ラストの怒濤の展開でデビルマンが登場するシーンは、17年という長期連載マンガのラストを夢オチ化するに等しい暴挙だが、その演出含めての名作。

「バキ」

「グラップラー刃牙」でもなく「範馬刃牙」でもなく「刃牙道」でもなく「バキ道」でもなく、カタカナ表記の「バキ」。死刑囚~大擂台賽が最も作者の脂の乗っていた時期だろう。強敵との戦いを経て強くなるという王道少年マンガの展開を見せた前作とはうって変わり、マンガのセオリーを崩す展開のオンパレード。かつてギャグマンガでマンガのセオリーを崩そうとした赤塚不二夫に対し、格闘マンガというより制約の多いジャンルで同じことに挑んだ開拓者が板垣恵介だと思う。

「ジョジョの奇妙な冒険 3部」

個人的にジョジョは初期3部作で完結すべきだったと思っている。スタンドが「幽波紋」と書かれていた頃は、スタンドのデザインや能力に名作映画からの影響が伺えて作者の試行錯誤のあとが伺える。従来のパワーバトル一辺倒の展開から、スタンド同士の相性によるパワーバランスの複雑化、ゲームによる頭脳戦、後のマンガバトルに与えた影響は大きい。ちなみに、今の永井豪がなにを描いても「デビルマン」になってしまうのと同様に、今の荒木飛呂彦はなにを描いても「ジョジョ」になってしまう作家だ。

魁!!男塾

「けれんみ溢れる」とはまさに本作のためにあるような言葉。たいていのマンガ家は加齢とともに全盛期の勢いを失い、かつての自分自身の劣化コピーとなってしまうが、宮下あきら(あと、ゆでたまご)は別。80年代ジャンプ黄金期以上の勢いで(なげやりとも言う)、己の生き様を紙にぶつけている。昨日の敵は今日の友、死んだと思ったら生きていた!、などなど王道ジャンプバトル路線の礎を確立した偉大なるマンネリ展開なのに、なぜか引き込まれてしまう。あれだけ軍国主義をネタにしているのに、作品自体は終始ノンポリなのも高評価のポイント。

「キン肉マン」

キン肉マンの全盛期は80年代ではなく、間違いなく今。90年代後半~2000年代初頭にかけて、ジャンプ黄金期を支えた作品の後日譚・前日譚ラッシュ(「キン肉マンII世」「暁!!男塾」「蒼天の拳」「 エンジェルハート」「 フラッシュ奇面組」「銀牙伝説WEED」など)が続いたが、当時以上の勢いを保っているのはゆでたまごと宮下あきらの2人だけだろう。そもそも、ラストの王位争奪編で死んだ超人すべてをフェイスフラッシュで復活させるという、半ば夢オチにも近いエンディングのダイレクトな続きを描くなんて相当な覚悟がなければできない。ゆでたまごは97年開始のII世でそこそこ再評価の兆しが高まっていたが、「キン肉マン」がスゴいのはそのII世が駄作に見えてしまうほどの完成度だということ。まったく過去との整合性がとれない展開も、面白ければいいという判断で突っ切ってしまう「ゆで理論」も健在。今作ではファンの要望に応えるべく、半ばセルフパロディとして「ゆで理論」を駆使するようになっている(“読者がみな「ソープに行け」の一言を望んでいる”ことを踏まえて、絶妙のタイミングで「ソープに行け」を繰り出す北方謙三の人生相談のように)。とりあえず、みんな読んでみよう。

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