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スペインの首都マドリードで、文字通り何もかも失った話

さて、記念すべき最初の記事に何を書こうかなと悩んだのですが、まずこれから。表題の通り、スペインで何もかも失った話をさせていただきます。なんでネガティブな話から先に書くねんと自分でも思いますが、スペインにももちろん負の部分はありますので・・。

自己紹介でも書きましたが、私はスペインが好きです。基本的にポジティブなイメージを持っていますが、唯一許せないのがスリや窃盗などの多さ。大変不名誉ながら、これ有名ですよね。特にバルセロナやマドリードなどの大都市はなかなかに治安が悪いという噂を聞いたことがある方も多いでしょう。

旅行に出かけてパスポートなんが盗まれた日にゃ、スペインなんか二度と来るか!!となることは必至。スリや盗難の多い治安の悪い国には元から行かへんで、というのも分かります。分かります・・。分かりますが!!

確かに軽犯罪は多いかもしれない。でも大丈夫、私、スペインでパスポートも財布もクレジットカードも化粧品もカメラも携帯も、何もかも一発で失ったことがありますが生きています。(大丈夫?)今回は文字通り何もかも失った時のお話をさせてください。ちょっと長くなるかも。

悲劇の場所はマドリードのバスターミナル

こんなところを歩いていたわけではない

スペイン滞在中、最大のピンチを迎えた場所はマドリードのバスターミナルでした。当時大学生で、スペインでの長期留学中だった私は同じ大学の友人に会いにマドリードを訪れていました。

マドリードにはいくつか長距離のバスターミナルがありますが、その時利用していたのは割と小ぢんまりした方の駅。巨大なバスターミナル「Estación Sur(南バスターミナル)」ではない方でした。

犯人の手口は多分・・・

こちらは鉄道アトーチャ駅。ここもヤバイらしい


その時は日本人の友人たちと一緒にいて、バスを待つ間ベンチに腰掛けていました。特に気を抜いていたわけでもなく、ある程度は警戒していたはず。今から考えれば、警戒度合いは甘々なのですが。バッグは自分の隣、友人との間に置いており、無用心なことに腕は通していませんでした。

友人5,6人と固まって座っていましたが、そんな中一人の男性が自動販売機前でなにか騒いでいます。大きな声を出して、周囲の人もそっちを見ている。少し離れた自動販売機の前から、端っこに座っていた友人に大声で話しかけています。もう一人、同時に後ろから話しかけられた友人もいました。

私達全員はもちろん、バスの待合室にいた現地の方もみんなその男性たちに気を取られていたその隙に、私の荷物はあっという間に姿を消しました。3人いたんだろうな・・まったく気が付きませんでした。
カバンがない!と思った時にはすでに犯人の姿はなく、自動販売機の男性も後ろから話しかけてきた男性も消えていました。

落ち込んでる暇はない盗難後の対応

無一文なのでコーヒーも飲めません


運の悪いことに、姿を消したバッグの中には財布、クレジットカードはもちろん、宿泊するのに必要だったためパスポートまで入っていました。

そうこうしているうちにバスは到着し、友人たちは帰って行きましたが、すべてを失った私はマドリードに残ってもろもろの手続きをしなければなりませんでした。現金もないので、心優しい友人にお金を借りてなんとか帰りの足はゲット。マドリード在住の友人が手続きに付いてきてくれました。

何よりも最初はクレカや携帯を止める

この写真に映るものはすべて失いました

まず最初にしたことは日本にいる家族に電話をかけることです。カバンの中に携帯電話(当時はスマホ登場前)が入っていたので、公衆電話から電話をかけました。スマホの普及でスペインでも公衆電話は減ってきていますが、それでもちらほら見かけます。日本と同じく、駅には必ずあり電話をかけている人も目立ちます。

こっちは緊急事態なので時差とか言ってられません。夜中にも関わらず出てくれた母親と祖母は、そりゃもう怒り狂うかと思っていましたが以外にも冷静で、粛々と手続きを済ませてくれました。後で聞いたら「いつかやられると思っていた」とのこと。母親はすごい。

これでとりあえず、追加で被害を受けることはなくなりました。ザマアミロ。この手続きを自分でやらなければいけないこともあるので、各種カスタマーセンターの電話番号をメモしておくことは重要です!

警察署は流れ作業

次は警察署へ行って被害届を出し、盗難証明書なるものをもらいに行きます。警察が発行する盗難証明書がパスポート再発行に必要なのです。
念のため、バスターミナルのセキュリティに不審者がいたよ、カバンが盗まれたよと伝えます。もしかしたら取り押さえてるかもしれないので。

セキュリティの方は慣れっこなんでしょうね、「Lo siento(お気の毒に)」と言う言葉とちょっとだけ悲しそうな顔をしたと思ったら、最寄りの警察署はここだから行けと指示をくれました。はい、捕まえてない。

海外の警察なんてめちゃくちゃ難易度高そうに思いますが、はっきり言って流れ作業。どうしたん?と聞かれてカバン盗まれてんと答えれば、後は被害届に記入して待つだけです。被害届も英語ですし、現在は日本語の書類が用意されているなんて話もよく聞きますね。日本人の方の被害が多いんでしょうねぇ・・・。

日本大使館に日本語で電話する


マドリードはとても美しい街ですよ、ドロボウいるけど

盗難証明書をゲットしたら、次は日本大使館に電話します。スペインの日本大使館はマドリードとバルセロナの2つあるので近い方へ。私はマドリードの大使館へ電話し、必要なものを確認しました。大使館への電話は最初スペイン語で話されますが、こちらが日本人だと分かると100%日本語で対応してくれました。「大変でしたね」の言葉がめちゃ沁みます。

パスポートの再発行に必要な書類は

①再発行の申請書。大使館に置いてあります。現在はダウンロードも可能。
②紛失一般旅券等届出書。こちらも大使館、またはダウンロードでゲット。
戸籍謄本。こんなもの持ってるわけないですよね。私の場合はパスポートのコピー、または国際学生証で対応してくださいました。スペインにはまだ滞在する予定だったので、家に帰ればコピーがあります。またマドリードに来なければ・・。
④証明写真。日本のようなインスタント写真機はほとんどありませんが、大使館近くのスーパーには設置されていました!(現在もあるかは不明です、ごめんなさい)写真屋さんはたくさんあるので、パスポート用と伝えれば撮影してくれます。
⑤盗難証明書。さっき警察でもらったやつですね。
⑥盗難届。大使館所定のもの。

以上6つとなり、これをまとめて大使館に提出します。③の戸籍謄本で詰んでいるので、パスポートの再発行には再度マドリードに来なければいけなくなりました。

何をするにもパスポート、世界共通パスポート

部屋にあった日本円をちょっと両替した思い出


書類が足りないため、後日大使館へ行くことになった私は、ひとまず住んでいた近郊の街へ帰ることにしました。

後日マドリードへ再発行の手続きに行かなければいけませんが、それまでお金を下ろす手段もありません。当時持っていた口座は世界で使えたCityBankのものと、スペインの銀行BBVAのものでした。どちらもキャッシュカードの再発行にはパスポートがいるとのことで、やっぱりまずはパスポートなわけです。CityBankは当時マドリードにも支店があり、パスポートがあれば即日キャッシュカードの再発行をしてくれるとのことでした。

友人から借りたお金でマドリードに行くため、使うわけにいきません。無一文と同じですが部屋にこもっていても落ち込むだけなので、気分転換にプラプラと街を散歩。マドリードなんかに行かずにここに残っていればこんな目にあわなかったのに。

その時、街の中で偶然クラスメートに遭遇。小さい街なので遭遇自体はよくあることなのですが、この時は事情が違いました。台湾出身のその子は、バレンシアの火祭りに参加し同じくパスポートも財布も何もかも盗まれたというのです!マジか。どうなっとんねんこの国。

まったく同じ状況の仲間を手に入れた盗難被害者たちは後日一緒にマドリードに向かいました。

NHKとみかんに癒やされる日本人

必要書類を全部揃え、いざ大使館。通常即日発行はしていただけませんが、なにもかも失って生活に困窮していた私は即日対応していただけることを電話でお願いしていました。

大使館なんて普段訪れることはなかなかありませんが、中はとっても日本的な雰囲気でテレビからはNHKが流れていました。

待合室には日本人の方しかおらず、お隣で待たれていたおばさまにはみかんをいただきました。日本の方優しい。普段は見ないNHKでも日本語嬉しい。ドロボウは腹立つけれど、日本的な心遣いに少し触れられとても安心しました。

お願いしていた通りパスポートの再発行は済み、CityBankにも行きキャッシュカードも再び私のお財布の中へ。これでやっと一安心です。マドリードに怯えている私達はさっと電車に乗り込み田舎へ帰りました。

盗難被害も今となっては笑える

そして懲りずにまた行くのです


以上が私がスペインで迎えた大ピンチの一部始終です。初めから終わりまで全部自分の不注意が招いたことに違いないですし、当時はクソドロボウめと思ったりもしましたが、今となってはまぁ貴重な体験だったなと思うことができています。

その後スペインのみならずヨーロッパに出かけるという話を耳にする度に「私全部やられたことあんで。盗まれてん」とこのお話を無理やりにでも聞かせ、「気をつけなはれや」と注意喚起をして回っています。そのお陰とは思いませんが、私の周囲で私と台湾の子以外にスペインで盗難にあった!という方はいません。良かったぜ。

実はこの後私はもう一度スペインで携帯電話を盗まれるという信じられないほどおマヌケな経験をしているのですが、それはまた次。異国で貴重品を失っても、なんとかなるよというお話でした。でも、気をつけなはれや!







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