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炎の魔神みぎてくんのほん

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卓上遊技再演演義シリーズでも活躍するみぎてくん、陽気で元気、食いしん坊でドジな炎の魔神族、みぎて大魔神ことフレイムべラリオスが人間界に留学!相棒コージや講座の仲間と繰り広げるほの…
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2022年8月の記事一覧

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 6.「そうだな、度胸だけはあいつ」

6.「そうだな、度胸だけはあいつ」  コージたちが控え室に帰ると、いよいよ出番が近づいてきたとのスタッフからの連絡がすぐに入った。予想以上に会場内を泳ぎ渡るのに時間がかかったというのもあるし、それ以上にちょっと時間進行が早めになっているのである。まあこういうショーは普通は進行が遅れがちになるものなので、多少余裕を見てスケジュールを組んでいるのだろうが、遅れずに進行しているということはすごいことである。 「あと五つですね。三十分ちょっとと思ったほうがいいかな…」 「うーん、

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 5.「ダイエットは無駄にしないわよ!」②

 さて、時刻も十時を回るとさすがにコージたちも体育館へと向かうことになる。今回のモデル役はみぎてとコージとディレル、それからなんとセルティ先生が自ら出場である。実はセルティ先生はエルフ族ということで、年齢を伏せてしまえばそんじょそこらのモデルと十分張り合える立派なグラマー美人である。「仕方ないわねぇ」とか言いながら実は最初から出る気が満々だったのは誰の目にも明らかだろう。まあ女性はいつだってファッションモデルは憧れの職業なのである。逆にポリーニのほうはといえば、みぎてやコージ

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 5.「ダイエットは無駄にしないわよ!」①

5.「ダイエットは無駄にしないわよ!」  大学祭の朝は、これは毎年のようにちゃんと良く晴れた素敵な秋晴れとなった。実はこの日は気象上の特異日で、毎年晴れる確率がとても高いという、イベントには最適の日なのである。もちろんそういう情報があって、この日を大学祭の日に選んだというわけではないだろうが、いずれにせよ今日も予定通りの快晴というわけだった。  といいながらも、当然ながら参加者全員がこの雲ひとつ無い高い空のような澄み切ったいい気持ち、というわけではないのは当然である。特に大

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 4.「…トレビアンって…あれっ」②

 今回の例はあくまで一例に過ぎない話で、大学の各講座ではこういうどたばたがいたるところで起きているわけである。というか今年に限っては講座の準備騒ぎがサークルの準備よりはるかにどたばたしているのだから大変な事態である。たった八分間のショーのためにここまで騒ぐ光景は、いささかこっけいに見えてくるのだが…みんなお金が絡むとこういうものである。  さて、大学祭もいよいよ明日開幕という段階になってくると、各講座の準備だけでなく、施設のほうのセットアップも大詰めである。いつもの大学祭なら

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 4.「…トレビアンって…あれっ」①

4.「…トレビアンって…あれっ」  十一月も半ばになって、朝晩急に冷え込んでくるような季節になると、バビロン大学のポプラ並木も黄金色に色づいてくる。金色の並木道と、その下ににょきにょきといたるところに設置されている立て看板が目立つようになると、バビロン大学の大学祭「秋霊祭」の季節なのである。「秋霊祭」という名前はほかの大学の大学祭の名前と比較するとかなり変わっているのだが、魔法学部が主であるこの大学らしい名前といえないこともない。ちなみに既に百年以上の歴史がある由緒正しい大

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 3.「…あ、この表情は絶対まずいって顔…」②

「今までいろいろあたしも考えてきたけれど、みぎてくんをダイエットさせる方法は一つしかないわ」  ポリーニは自信たっぷりにコージたちにそう宣告した。「今までいろいろ」というのは確かに事実である。運動効果百倍のはずの「魔界カプサイシン入りシェイプアップトレーナー」とか、「戦隊ヒーロー御用達アクションスーツ」とか、いろいろな失敗作の目的のなかには往々にして「みぎてをやせさせる」という一項が掲げられていることが多いのである。まあ実際この魔神がデブ…魔神らしい筋肉デブであるということ

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 3.「…あ、この表情は絶対まずいって顔…」①

3.「…あ、この表情は絶対まずいって顔…」  というわけで、コージたちの困惑をよそにポリーニのとんでもない企画、「バビロン大学大学祭(秋霊祭)オープンキャンパス・ファッションショー」の開催は決まってしまったのである。といっても現実的には「ファッションショー」そのものをそのまま開催するというのは不可能である。大学の研究が全部ファッション・被服に使える関係のもののわけはないし(というか、そういう技術はほんの一部である)、基礎研究などの大事な研究だって紹介する必要がある。そう考え

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 2.「面白いアイデアを考えたのよ」

2.「面白いアイデアを考えたのよ」  登場したときにも説明したが、ポリーニとの付き合いはみぎてで六年以上、コージにいたっては既に十数年もの付き合いになる。大きな銀縁の丸いめがねと、それから左右に編んだ三つ網、ちょっとそばかすという外見は、よくある典型的な眼鏡っ娘のアーキタイプにばっちりと当てはまる。といっても別にそれが悪いというわけではない…実際理系であるバビロン大学という場所を割り引いても外見的には悪くないほうである(すくなくともコージはそう思う)。それに彼女は責任感も強

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 1.「発明品だって最新流行のデザインを」②

 講座についたコージたちは、案の定廊下でわめいている女性二名の姿に迎えられた。ポリーニとセルティ先生である。セルティ先生というのはコージたちの所属する講座の教授…つまりコージやディレル、そしてみぎての担当教官である。理系の大学教授にはやや珍しい女性の、それも結構美女なのだが、当然ながら魔法工学部の教授なので外見にだまされるとひどい目にあう。  ポリーニのほうは、これまた毎度レギュラーなのでご存知かとおもうが、コージやディレルと同じ講座の仲間で、実はコージを中学のころから知って

炎の魔神みぎてくんキャットウォーク 1.「発明品だって最新流行のデザインを」①

1.「発明品だって最新流行のデザインを」  十月も終わりごろにもなると、バビロンの街も朝晩はすっかり冷え込んでくる。昼間こそ日差しのおかげで暖かい(というより汗ばむくらいの)陽気なのだが、夜になると空気がひんやりして肌寒いくらいである。  こういう季節になると、今までのTシャツやタンクトップ、キャミソールのような露出の多いファッションから、だんだんジャケットやコートのような重ね着主体になってくるのは当然である。街を行く人々もどんどん長袖のシャツやカーディガンのような暖かい装

炎の魔神みぎてくんハイビジョンデジタル 5.「その…映像はよかったようなんじゃが…」②

 「バビロン・スカイガーデン」というのは、この地方では最も歴史のある遊園地で、いわば遊園地の走りとも言うべきものである。最近でこそラムガの「エルマダァルランド」とかメンフォロスの「ピラミッドミュージアム」などの大型テーマパークが登場しているが、バビロン市内という立地条件と手軽さでいまだに結構人気がある。敷地のほうは残念ながら今風のテーマパークに比べるとやはりずっと狭いのだが、ちょっとノスタルジックな建物や花いっぱいの美しい庭園、それから夜のライトアップの美しさは一見の価値があ

炎の魔神みぎてくんハイビジョンデジタル 5.「その…映像はよかったようなんじゃが…」①

5.「その…映像はよかったようなんじゃが…」 「ふう、いよいよ市内ロケのスタートか…」 「俺さま、もうこの時点でぐったりきてる」  「バーチャル市内観光」の説明を済ませた時点で、もはやコージもみぎてもへとへとになっていた。興奮したポリーニの説明そのものもすごいのだが、彼女の説明がドラゴンにちゃんと伝わっているのかが微妙に怪しい。みぎてとちがってポリーニにとっては精霊語は外国語だし、首長竜かあさんのほうはどうも変な方言が入っているので、複雑な会話になると一気に混迷の度合いを

炎の魔神みぎてくんハイビジョンデジタル 4.「みぎて、突っ込むな。無駄だ…」②

 ゆっくりと波止場に上陸した恐竜(というのが正しい形容)の姿は、これはやはりコージの度肝を抜くのに十分な巨体だった。よく物語に出てくるドラゴンのように角やとげ、こうもりのような翼はないが、逆に首と尻尾はずっと長い。やはりこれは図鑑で見たことのある首長竜というやつである。そして青みがかった銀色のうろこが薄明の空の下に映えてなんとも美しい…といえないこともない。ただ、さすがに距離五m以内にこんなでっかい生き物がいるというのはちょっとどきどきものである。これがシンのおふくろさんで、

炎の魔神みぎてくんハイビジョンデジタル4.「みぎて、突っ込むな。無駄だ…」①

4.「みぎて、突っ込むな。無駄だ…」  十一月に入った最初の休日は、幸いなことにとてもよく晴れて絶好の行楽日和となった。十月の半ばまで続いた曇りがちの天気がうそのようなすばらしい秋晴れである。「天高く」とはよく言ったもので、澄み渡った空がどこまでも高く広がっている。この調子なら今日は一日ぽかぽかの陽気に包まれて、最高のバビロン観光ができそうである。  とはいえコージたちが校庭に集合した時刻はまだ明け方の三時…「澄み渡った空」というのは満天の星空のことである。さすがにこの時期