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農業について思うこと

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大学農学部卒業後、高等学校の農業教員を25年間勤め、2009年に47歳で有機野菜を生産直売する株式会社しあわせ野菜畑を起業しました。 この間、農業について学んだこと、考えたことを…
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2024年9月の記事一覧

美味しい野菜は、「旬の野菜」

野菜の旬って何だろう。 「おいしい野菜の見分け方」について聞かれることがあります。 その方法はありますが、スーパーの野菜コーナーの中で、おいしい野菜を見分けて選ぼうとするのはあまり意味がありません。なぜなら、そこに並んでいるのは同じ生産者が、同じ種、同じ土、同じ肥料で育て、同じ規格で出荷しているものだからです。ここが魚や肉と違うところで、“野菜の目利き”はあまり役には立ちません。 おいしい野菜に出会う一番簡単な方法は、旬の野菜を使うことです。 次の問題を〇か×でお答えくださ

農福連携

 当社が地元の障がい者就労支援B型事業所と連携を始めたのは2015年、もう10年が立とうとしています。 最初は除草作業の委託でしたが、夏のオクラと冬のスティックブロッコリーの収穫の一部を委託しています。これらの野菜にしたのは、収穫期間が比較的長いので作業の習得が出来やすいと考えたからです。集中力を保つのが難しいので、ひとり1時間やったら交代です。障がい者が交代で、指導員さんと一緒に毎日二人、月曜日から金曜日に来て収穫しています。 上の写真は1年目の様子です。指導員とペアにな

伝えることは学ぶこと

 今年の夏、大学生2人がインターンシップに、小学校の先生が10年研修で職場体験に来てくれました。 猛暑で汗をかきながらの研修でしたが、いつもと違う環境はいろいろなことを考えるきっかけになったようです。研修後に学校や職場に出す報告書を見せてもらうと今まで何となく考えていたことを文章にしてくれていて伝えることは自分自身の学びになるんだと気づきました。    【 インターンシップの大学生の感想より 】   いろいろ話をしていただいたなかで、就職についての話が印象に残っていま

自分の心に正直に 

 当社のスタッフは10名です。女性が多いこと、年代が若いこと、食や環境に関心が高いことが特徴です。  そんなスタッフが、お客様向けに発行しているニュースレターにコラムを順番に書いています。  先月の担当は真理さんでした。  ○    ○  ○  しあわせ野菜畑で働き始めてからちょうど1年。赤ちゃんを授かることができました。結婚して3年、子供になかなか恵まれなかったのと、子供を自分と同じアトピーや喘息にしたくないなぁとの思いから「食」と「ストレス」を見直そうと、「しあわせ野

品種の話

 大根には青首大根、白首大根、桜島大根、聖護院大根、守口大根などの種類があります。  一般的に知られているのはそこまでですが、実はその中にもたくさんの「品種」というものがあります。  例えば、今年は青首大根を育てますが、今日、品種だけでも、総太り、おしん、お春、天宝という4品種をまきました。  ニンジンは、ちはまとベターリッチの2種類です。 大根は寒さにあたった後に暖かくなると花が咲いてしまうという性質があります。これを「バーナリゼーションを引き起こす低温感応性」というので

農業ブームだったころ・・・

今週(2009年)の週刊ダイヤモンドは特大号でテーマは「農業がニッポンを救う」です。   「未開拓な農業は日本の成長の源泉である」「農業は日本に残されたフロンティアだ!」といった切り口で農業の可能性を取り上げています。 新規就農者や農業に参入した企業で働いている若者たちの笑顔があふれた本の中からは明るい未来を感じます。 興味のある方、ぜひ読んでください。   このところ、雑誌だけでなくテレビでも農業への新規参入が取り上げられるようになりました。景気が低迷する中、各地の就農説

「農ガール」「農業女子」って知ってますか?

近頃(2009年当時)、就農(農業を始めること)に関する記事を多く見るようになりました。 自然志向や環境意識の高まりや食の安全安心に関するさまざまな問題の発生の中で、ここ数年、農業が見直されて始めていたのですが、昨年の経済の悪化に伴う雇用不安の中で、新たに農業を始めることがブームのように取り上げられ始めています。 先週の日経MJ(日経流通新聞)の裏一面はこんな記事でした。 農業を始めた自分にとって、農業への新規参入ブームは追い風ではあるのですが、この記事を読みながら、危な

農業には、みんなを幸せにする力がある

 自分は47歳の時に25年間勤めた農業高校の教員をやめて農業を始めました。  専業農家の長男であった自分は、卒業したら農業をやるつもりで大学の農学部に進みました。専攻は農業経営学、卒論は「企業的農業の可能性」でした。  ところが、どう考えても農業をやって楽しい生活が送れるとは思えません。休みもお金もないような農業しかイメージできませんでした。友人たちの多くは公務員や農業や食品の関連産業に進んでいきました。  そこで、「農業高校で、生徒たちと一緒に農業の可能性を考えてみよう」と

ボツにした話 ② ③

最近、Noteに農業を始めた頃に静岡新聞の農業欄「こだま」に書いた記事を載せています。 懐かしく思う内容もありますが、悩んでいたことは10年たったのに全く変わらす、10年前の自分に励まされているような感じで読み直しています。 農業欄「こだま」は静岡県内の農業者が1年単位で交代で書きます。どんな人が読んでくれるのかなぁと楽しみと不安の中で書きましたが、改めて読み直すと今の自分を励ますために書いていたんだなぁと思ったりしています。 何を書こうかなぁと考えながら書いていたので、ボツ