ISMS規格本文/8運用について解説
はじめに
情報セキュリティ管理システム(ISMS)は、企業や組織が情報資産を保護し、リスクを管理するための重要な枠組みです。ISO27001:2022は、そのISMSの国際規格であり、情報セキュリティのベストプラクティスを提供します。このブログ記事では、ISO27001:2022の8章「運用」について詳しく解説します。運用はISMSの実践的な部分であり、具体的なセキュリティ対策を実行し、リスクを管理するためのプロセスが含まれています。
8.1 運用
運用はISMSの中核となる部分であり、計画された情報セキュリティ対策を実際に実施する段階です。運用の目的は、組織の情報資産を効果的に保護し、リスクを最小限に抑えることです。運用には以下の主要な活動が含まれます。
情報セキュリティ方針の実施:定められた情報セキュリティ方針に基づいて、具体的な対策を実施します。これにはアクセス制御、暗号化、バックアップなどが含まれます。
運用手順の確立と維持:情報セキュリティに関する運用手順を文書化し、それを定期的に見直し、更新します。手順には、システムの設定、ソフトウェアの更新、ログの管理などが含まれます。
教育と訓練:全従業員に対して情報セキュリティに関する教育と訓練を行い、セキュリティ意識を高めます。これにより、従業員がセキュリティポリシーを理解し、遵守することが期待されます。
モニタリングとレビュー:情報セキュリティ対策の効果を評価するために、継続的なモニタリングとレビューを行います。これにより、問題が発生した場合には迅速に対応できるようになります。
8.2 情報セキュリティリスクアセスメント
情報セキュリティリスクアセスメントは、組織が直面する可能性のあるリスクを特定し、そのリスクの影響と発生確率を評価するプロセスです。ISO27001:2022では、リスクアセスメントを体系的に実施することが求められています。
リスクの特定:情報資産に対する脅威や脆弱性を洗い出し、どのようなリスクが存在するかを明確にします。例えば、外部からの攻撃、内部の不正行為、自然災害などが含まれます。
リスクの評価:特定されたリスクの影響度と発生確率を評価します。影響度は、リスクが現実化した場合の組織へのダメージを測定し、発生確率はそのリスクがどれだけの頻度で発生する可能性があるかを評価します。
リスクの優先順位付け:評価結果をもとに、リスクの優先順位を決定します。これにより、最も重大なリスクに対して優先的に対策を講じることができます。例えば、機密データの漏洩リスクが高い場合、それを最優先で対策する必要があります。
リスクアセスメントの文書化:リスクアセスメントの結果を文書化し、関係者に共有します。これにより、リスク管理の透明性が確保されます。具体的には、アセスメントシートやリスクレジスターを作成し、各リスクの詳細、評価結果、対応策を記載します。
8.3 情報セキュリティリスク対応
リスクアセスメントの結果をもとに、具体的なリスク対応策を講じることが求められます。ISO27001:2022では、リスク対応を体系的に実施するためのフレームワークが提供されています。
リスクの回避:リスクを完全に回避するために、リスクの原因となる活動を中止するか、変更します。例えば、特定の業務プロセスを廃止することが考えられます。
リスクの低減:リスクの影響度や発生確率を低減するために、適切な対策を講じます。これには、技術的対策(ファイアウォールの導入、ウイルス対策ソフトの使用)、組織的対策(セキュリティポリシーの制定、従業員教育)が含まれます。例えば、機密データの暗号化や定期的なパスワード変更の実施が挙げられます。
リスクの共有:リスクを第三者と共有することで、リスクの影響を分散させます。これには、保険の加入やアウトソーシングが含まれます。例えば、データセンターの運用を専門業者に委託することで、災害リスクを低減します。
リスクの受容:リスクの影響が許容範囲内である場合、そのリスクを受け入れることも選択肢の一つです。この場合、リスク対応策を講じる必要はありませんが、リスクの監視は継続します。例えば、軽微なシステムダウンのリスクは受容することが考えられます。
リスク対応計画の策定:リスク対応策を具体的に実行するための計画を策定します。計画には、対応策の実施スケジュール、担当者、必要なリソースなどが含まれます。例えば、「機密データの暗号化プロジェクト」を立ち上げ、プロジェクトマネージャーを任命し、具体的なスケジュールを設定します。
まとめ
ISO27001:2022の8章「運用」は、情報セキュリティ管理システムの実践的な部分をカバーしています。運用の成功は、組織全体の協力と理解が必要不可欠です。情報セキュリティリスクアセスメントとリスク対応は、継続的なプロセスであり、定期的な見直しと改善が求められます。具体的な例を通じて、リスクアセスメントの文書化やリスク対応計画の策定の重要性を理解し、組織の情報セキュリティ対策を強化するための一助となれば幸いです。
以上が、ISO27001:2022の8章「運用」に関する解説でした。情報セキュリティは常に進化しており、最新の脅威に対応するために、継続的な努力が求められます。組織全体で一丸となって、情報セキュリティの強化に取り組んでいきましょう。
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