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パキスタン紀行③ 手仕事にはバナキュラーが宿る。フンザのものづくり

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フンザの家屋装飾をみる。
パキスタンはイスラム教国家だが、元々ここらは仏教の国でもあったので(ガンダーラ文化はパキスタンにある)、装飾も仏教由来のものがある。カシミール地方やチベットから来た装飾や布なども入ってきており、ここの地域は決して閉じていたのではなく、シルクロードを介して開かれていたことがわかる。

基本素材は石と木。泥の壁もある。
フンザのお城の屋根。イスラム風の幾何学文様が張り巡らされている
草木の紋様にも似たパターン。お隣のカシミール地方の草木紋様にも似てる



見事な角のアイベックスを掘った装飾も。フンザの人々はアイベックスを邪蛇を食べる聖なる動物として信仰しているそう。

山で見かけるヤギ科のアイベックス。お腹に蛇が入ったレリーフが。
イスラム紋様とはまた違う装飾だ。


フンザの古い家屋の天井。
四角が3つ重ねられている。
大きな地震が発生した際、この構造によって力を分散させるのだとか。パキスタンも地震が多い国だ(大きなプレートが衝突している土地だから)。一番奥は開く仕組みになっており、そこから採光とストーブの煙を逃すことができる。
学術的にはラテルネンデッケ(三角隅持ち送り天井)と言い、ユーラシアの西側から高句麗まで、その様式が伝わっている。また、この構造はフンザを示す文様として認知されているようで、色んな所で見かけた。

三角隅持ち送り天井。地震に強い構造。


フンザの木の器。いい感じに歪んでる。
ここらはアーモンドやポプラ、チェリー、アプリコットなどが植えられており、それらから実を採ったり建材や食器にしている。これもチベットのものに似てるかも。

フンザの木の器。木工が盛んな土地でもある。


石のポットは、アイベックスの角で石をくり抜いてつくるそうだ。
どれも山羊のミルクの匂いがする。

石のポット。やわらかい石なので角で削ることが出来る。大変な労力をかけてつくられる。


カリーマーバードから少し離れた集落のご自宅にお邪魔させていただくことに。
パンとチャイと干し杏子、そして子どもたちの踊りという嬉しいおもてなし。なんの踊りか聞くの忘れてしまったけど、とても良かった。

アプリコットのドライフルーツ、パン、チャイ。お腹に溜まる。
踊りを披露してくれた村の子どもたち。インド・アーリア系のお顔立ち。


笊作りのおじいさん。柳の木(?)の枝を採ってきて編み込んで行く。これで果物を干すのだそう。側面を起こしてつくる籠もあった。
編むっていう技術はやっぱり面白いなぁ。

木の枝を放射状に並べ、円形に編み込んでいく。
ドライフルーツをつくるための笊をつくっているところ。


フンザから少し離れたギルギットでみた陶器。この近辺で焼かれたものらしい。いい感じに力が抜けてて、欲しくなった(灰皿だけど)。

黄色の釉薬の上に、茶と緑で植物の模様を描いている。
ぼってりした、粗野でいい感じの厚み。


手仕事にはバナキュラーが宿る。それが垣間見れて嬉しかった。

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